3月23日〜25日、無人航空機のみの国際展示会「Japan Drone 2017」が幕張メッセで開催された。
同展示会は日本UAS産業振興協会(JUIDA)が主催。昨年の第1回に続き、今年で2回目の開催となる。出展者数は121社・団体。海外からの出展については米国、カナダ、韓国、中国、台湾から計12社が参加した。
会場では、主要メーカーが展示ブースを構えたほか、基調講演も実施された。また、筆者は取材していないが、学生向けのドローンスクールなど、併設イベントも多数実施されていた。
ウェルカムスピーチでは、JUIDAの理事長である鈴木真二氏(東京大学大学院教授)が同展示会の意義について、「空における新たな産業革命とも言われる無人航空機システム産業の健全な発展と育成をサポートするものとして、同産業界のプレゼンスを世界にアピールし、海外との連携、技術交流携を促進する」などと語った。
また、「機体や技術を表彰する場としても機能し、ベンチャー企業にとってはビジネスチャンスの提供の場となる。加えて、イベントやセミナーを通じてドローンの安全な運用や利用等に関する共通のルール作りを促進する」との旨も述べている。
展示場の様子と傾向をレポート
展示会場の規模は幕張メッセのホール1つに収まる程度だ。展示内容については、ドローンの機体が延々と展示されているわけではない。
機体を提供する企業としては、最大手の「DJI」や、NTTドコモや日本郵政などとの協業で話題となった「エンルート」など、数社が目立っていた。
そのほかは、ドローン関連の新技術やサービス、モーターなどの部品、周辺機器などを展示しているブースが大部分を占めた。
DJIの展示例
エンルートの展示例
ホビー用途の機体もあったが、展示はわずか。ホビードローン大手のフランス企業「Parrot」は出展していなかった。また、携帯電話回線網を利用した、所謂「セルラードローン」に関する展示も見当たらない。あくまでも「現時点で実現化できる商用ドローンのソリューション」がメインだったように思う。
ドローンの商用活用は様々だ。例えば、橋梁などの裏に張り付くように飛行して、人の手では行いづらい検査を代行できる。
また、カメラやセンサーから三次元的な位置情報を取得して、建設現場全体の3Dマップを作成できる。特にDJIの最新モデルでは、樹木の影響を受けずに地表の地形をマッピングできることをウリにしていた。そして、農業で薬品散布などに活用もできる。なお、こうした用途への対応は、ドローンの機種やカスタマイズに依存すると思ってよい。
一方で「こうしたドローンを使ってみたいが、何から始めれば良いのか分からない」という需要を狙った企業も見受けられた。例えば、日立システムズでは、ドローンの手配からデータ処理までを丸々代行できるサービスを展示していた。DJIもORSOと協業し、「drone market」なるサービスを提供している。今後もこうした「ドローンによる〜」を代行する企業は増えてくるだろう。
ユニークな試みとしては、Blue Innovationらが提案する「オフィス内にドローンを飛行させてセキュリティや勤怠管理に利用する」といったサービスが目を引いた。実用性については定かではないものの、室内や地下でドローンを飛ばすという斬新さは、密かに来場者の関心を集めていたようだ。
また、ドローン操縦の練習を想定したシミュレータや、教習プログラムについても多数展示があった。オペレーターの養成スクールについても、JUIDAによる認定校が昨年の8校から64校まで増加したとのこと。これは一つのトレンドと言えるだろう。専門学校にドローンオペレーターの学科が初設置されることにも注目である。
そのほか、ドローンが飛行中にロストしないようにするための「凧糸」を取り付ける装置や、ドローンの飛行スペースを確保するためのネット、水中ドローン用のモーターなど、関連機器も幅広く展示されていた。
ドローンの飛行を管理するシステムの課題
筆者は、23日〜24日にかけて、デンバー大学のバラバニス教授、インテルコーポレーション副社長 アニール・ナンデュリ氏(上記写真)、DJI JAPAN代表取締役社長 呉韜 氏などによる基調講演を拝聴した。
そして、NASAエイムズ・リサーチセンター シニアテクノロジストのParimal Kopardekar博士は、(当日来日ができずビデオレターとなったが)ドローン管制システムについて語っており、こちらも視聴した。
彼らが語った内容は、自身の研究や自社の商品開発の歴史についてが大部分を占めた。各個の情報は膨大かつ専門的であり、本記事では紹介しきれない。
しかし、これらのスピーチを通じて、ドローン開発に共通したトレンドや課題が見えてきたので、下記に要点をまとめてお伝えしたい。
ドローン開発における課題・要点
- 自動制御にどういった判断をさせるか
- 飛行管理には環境情報の共有が重要になる
-
複数団体の機体が飛び交う場合には、共通の指標が重要
- 操縦者が扱いやすいプラットフォームが必要になる
- 大量の情報を素早く処理できるか
軍用・商用を問わず、一人のオペレーターが複数のドローンを一度に操作するニーズがある。その場合、ドローンが収集した情報は一人の人間に集中する構造になる。オペレーターはこうした大量の情報収集を処理しきれなくなるため、「どのように飛ぶか」など、一部の権限をドローンにゆだねる場面・必要性が出てくる。
しかし、車の自動運転と同様、ドローンにどういった判断をさせるか、その指標を定めるのは難しい。死傷者、機体へのダメージ、資産への影響、環境への影響を考慮しなくてはいけないからだ。
また、複数のドローンを飛行させる場合には、ドローン同士の接触事故を防ぐ必要がでてくる。有人機との衝突も同様だ。そのためには、一定の空域に入る際に「侵入権限」を付与することで、管理するアプローチなどが考えられる。
ただし、電波状況や、風速などの天候、地形などといった環境条件はその都度変化するため、絶対的な指標を作りづらい。そのため、複数のドローンを一斉飛行させる場合には、各機体が得た情報を、共有することが重要となると考えられている。例えば、1機が強風を検知したら、ほかの全ての飛行体がそれを共有できるようなシステムだ。
「共通の指標」作りも重要となる。例えば「高度」の情報を機体が収集してきた場合、それが「海抜」であったり、「地面からの高度」であるなど、バラつきが発生する。これを何かしらの形で統一していかなくては、管制システムは成立しないだろう。
オペレーター視点で見ると、扱いやすい機体とプラットフォームが必要になってくる。例えば、一度に複数の機体を動かしてパフォーマンスする、というケースでは、予め複数の機体に飛行経路をインプットする必要がある。また、ハードウェアに関しては、各機体を容易に充電したいというニーズもある。
そして、ドローンの機体に搭載するカメラなど、測量に用いるセンサーの制度が上がると、回収できる情報量も増える。
例えば、地形のマッピングでは、一度に100GB単位の情報が収集されるといった具合だ。また、精度の高いコントロールを行うには、センサーによるリアルタイムな情報収集が必要となる。特に後者については5Gのネットワークがバックボーンになる、と考えられている。
サンドボックス制度は始まるのか否か
最後に、今後注目しておきたいテーマとして、日本国内における「サンドボックス特区」制度を検討する声が上がっていることを紹介しておこう。同会期中には、同制度をテーマにした牧浦土雅氏らによる講演があった。
これは、イギリス発祥の取り組みであり、「砂場の範囲内なら自由に遊んでも良い」という感覚と同じで「特定の地域において〜することを自由化する」制度だ。もし、これが実施されることになれば、商用ドローンの実証実験はより容易に行えるようになるだろう。
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