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テロ対策を推進するロンドンでテロ事件:国会議事堂前の襲撃で3人死亡、約40人負傷

菊池喬之介

2017/03/23(最終更新日:2017/03/23)


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テロ対策を推進するロンドンでテロ事件:国会議事堂前の襲撃で3人死亡、約40人負傷 1番目の画像
by Hernan Piñera
 ロンドンでも、恐れていたことが起こってしまった。

 奇しくも昨年のブリュッセルでのテロと同じ日付、現地時間の3月22日、午後2時40分(日本時間同11時40分)、日本でいう国会議事堂に当たるウェストミンスター近くが襲撃された。

 犯人はウェストミンスター橋を自動車で暴走。歩道に乗り上げ、次々と歩行者を無差別にはね飛ばした。

 その後、自動車は観光名所として知られる「ビッグベン」のすぐ近く、講義堂の柵にぶつかり停止。犯人は自動車から降り、ウェストミンスターを襲撃、そこで止めに入った警官を刺殺した。

 別の警官が追いかけ、犯人は射殺されたが、一連の流れで3人が死亡、約40人が負傷の惨事となった。

犯人はアジア系:昨年のISISのテロと酷似

 現地メディアによれば、現場の犯人は単独犯でアジア系の40代と報じられている。

 被害者は、現地の警察官から中国やフランスからの観光客まで。国の要所、観光地で起きた大規模テロとなった。

 現地警察はテロ事件として捜査を開始。3月23日時点では、実行犯の身元、犯行動機はわかっていない。だが、テロ対策部門幹部が6箇所で家宅捜索を行い、7人を逮捕したことを発表。事件との関連性は未だ不明だ。

 テロ組織からの犯行声明も出されていないが、自動車を使ったテロはISISの常套手段。2014年には「シリアとイラクでの戦いに参加できないなら、欧米で車を使って民間人を襲え」と支持者に呼びかけていた。

 昨年のドイツのベルリン、フランスのニースでのテロと酷似していることもあり、ISIS系の犯行ではないかと疑われている。

各国の首脳も反応

 テロ事件を受け、イギリスのメイ首相はトランプ米大統領との電話会談でテロ対策の連携を確認。「私たちはテロに屈せず、結束して前進しよう」と国民に呼びかけた。

 国民が被害にあったフランスのオランド大統領も「フランスはイギリスの人たちとともにあり、全面的に支援をする。われわれはこうした攻撃に対応するため、あらゆる備えをしなければならない」と地元メディアに語った。

 国内では安倍首相が記者団に「テロは断固として許すことができない。この困難な時を迎えているイギリスのメイ首相、そしてイギリス国民と日本はともにある。日本はメイ首相を強く支持し、イギリス、そして国際社会と連携してテロと戦っていく」とテロに屈しない旨を述べた。

テロ対策を進めていたロンドンに衝撃走る

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by Hernan Piñera
 イギリスといえば昨年の国民投票でブレグジット(イギリスのEU脱退)が決まり、今後正式に離脱が決まる。ブレグジットに至った要因として移民への不満やテロへの不安があっただけに、矛盾したタイミングでの事件となった。

2005年のロンドン同時爆破事件以来の大規模テロ

 フランスやドイツ、ベルギーと大規模テロが頻発していた中、イギリスではしばらく大規模な事件は起こっていなかった。今回のテロは、2005年のロンドン同時爆破事件以来だと言われている。

 同時爆破事件では、4人の実行犯を含む56人が死亡。この事件を受けて、イギリスのテロへの警戒度は高まった。

 実際、イギリスはここ4年間で13ものテロを未然に防いできた。そんな中、今回のテロが起きてしまったのである。

前回の悲劇との共通点

 今回のテロは2005年のテロとは犯行手段は異なるが、犯人が同じタイプである可能性が高い。本国で不満を持ちながら育った“ホームグロウンテロリスト”だ。

 ヨーロッパでいうと、西アジア、北アフリカからの移民2世がこれに当たる。生まれも育ちもヨーロッパだが、アイデンティティが異なり、社会的に不遇な環境に置かれた人々がホームグロウンテロリストになりやすいと言われている。

 このタイプの犯人は、外部から侵入するわけではないので、事前に防ぐことが難しい。社会で過ごしている上での不満が少なからず犯行動機に含まれていることが多いことも、予防を難しくする要因だ。

昨年の“ローンウルフ”によるテロと酷似

 それでいて、前述したベルリン、ニースの事件と酷似している。これらの事件は“ローンウルフ”が犯人である新しいタイプであるテロだ。

 ローンウルフとはその名の通り、一匹狼、すなわち単独で犯行を行うてオリストのこと。近年でいうローンウルフが犯人のテロは、自動車だけを使って多くの人を殺害するものが多い。

 このタイプのテロは、運転することができる人ならば誰でも犯行を行うことができる。

 ホームグロウンテロリストとローンウルフ。近年の新しいテロは、いつ起きるのか予測するのが非常に難しい。今回のテロも同様のケースであった可能性が高い。


 12年ぶりのイギリスでの大規模テロ。今回の事件を受けて、ブレグジットを目前に迫ったイギリスはテロ対策のあり方をさらに厳しいものにするだろう。

 だが、移民、ポピュリズムの台頭といった問題を抱えるヨーロッパは、否が応でもテロと隣り合わせである時代の真っ只中にある。

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