刑事ドラマでよく出てくる台詞「キャリア」「ノンキャリア」。イメージはつくが、具体的に何だと聞かれて説明することは難しいのではないだろうか。
今回は、意外と知らない警察組織について探っていこう。
組織の頭:幹部候補“キャリア組”
警察の仕事は大きく分けてふたつに分けることができる。キャリアとノンキャリアだ。彼らの間にどのような差があるかというと、まず、採用される前に受ける試験が違う。
キャリア組と呼ばれる警察官は国家公務員試験の総合職試験を受けている。1種と呼ばれる総合職試験は警察官を目指している人だけではなく各省庁への入庁を希望する人もおり、合格率は5~6%。司法試験・公認会計士試験と並び日本最大試験と呼ばれているのだ。
合格者は東京大学や京都大学をはじめとする国公立最難関大学出身者が多い。21歳から受けられる試験ではあるが、大学修了者の合格率は10%・大学院修了者の合格率は40%なので高い教養が求められる。
国家公務員試験に合格した彼らは警察大学校へ入学し、幹部となるための訓練を6ヶ月受ける。
警察の幹部はキャリア組から選ばれるという古い習わしの他、全国の警察本部や警察署で管理職や警察庁で務める以外にも外務省などの他の省へと移動を命じられる場合もある。キャリア組である警察官は現場で仕事をするというよりは全体の指揮をとることが求められるようだ。
組織の原動力:現場のスペシャリスト“ノンキャリア組”
ノンキャリア組と呼ばれる人たちはどのような試験を受けるかというと、彼らは各都道府県の警察官採用試験を受ける。国家公務員試験1種ではないのだ。
警察官採用試験に合格した人は警察学校に入学し、現場のスペシャリストとなる術を6カ月学ぶ。キャリア組とノンキャリア組では受ける試験・合格後に学ぶ学校が違うということだ。
では、ノンキャリアにメリットがないのかといえばそうではない。キャリアとノンキャリアでは求められる仕事が違うのだ。
現場で働くノンキャリアに対しキャリアはデスクワークが多い。組織のトップは書類仕事が多いというが、警察も例に漏れない。鑑識官や白バイ隊員もノンキャリア組に分類されるので、子供の憧れを受けている警察官は正確にいうと「ノンキャリア組」の仕事というわけだ。
よりよい社会をつくるために現場で自ら動くのがノンキャリア組、組織全体を動かすのがキャリア組ということだろうか。
裏の警察:公安と監察
警察内部は細かく組織化されており、各部署により請け負う仕事が違う。中でも特徴的な仕事をする部署として「公安部」と「監察課」がある。
トリプルフェイス:公安
刑事警察・交通警察に並ぶ警備警察の俗称が公安だ。ハム・チヨダ・ゼロという隠語で呼ばれることもある警備課公安部の仕事は「警備」である。国家に対する反社会的活動の取り締まりをはじめとし、テロが起きたときには真っ先に動く警察とされている。
また、似た名前の公安委員会は警備課公安部とは仕事が違い、公安委員会は警察の民主的管理と政治的中立を目的に警察を管理する機関とされ都道府県に設置されている。
破壊活動防止法や団体規制法に基付き脅威に関する情報を集める公安調査庁という別の組織も存在し、一言に公安といってもどの公安か考える必要があるのだ。
公安というとスパイのイメージがあるかもしれないが、正確には「スパイ活動を取り締まる」部門である。
「公安」の名前がつく機関
- 警視庁警備課公安部
- 公安調査庁
- 公安委員会
警察の番人:監察官
警察の監察官の仕事は警察内部の不祥事を暴くことだ。強い権力を持つ公務の内部を観察することを目的につくられた。警察以外にも防衛省をはじめとして権力を持つ機関に配属されており、内部の清浄化に努めている。汚職を暴くことが仕事の監察官は警察の嫌われ者といわれることが多いが、組織を腐敗させないためには必要不可欠な部門だ。
警察の監察官は結果を公安委員会に報告することが義務付けられており、公安委員会は市民を代表して不正がないか確認をする。
トップである主席監察官はキャリア組から選ばれる。警視庁都道府県警察本部の警務部監察官室につくには警視以上の階級が求められ、公安警察の出身者が多いらしい。
このように、警察は内部で細かく部署を分け仕事を分担することにより互いの均衡を保っている。互いに目を光らせる様子からは立法・行政・司法の三権分立を感じるだろう。
キャリアとノンキャリアの違いは試験と学校から違う。警察になったあとの仕事が違うので、求められるものが違うからだ。
紹介することのできなかった仕事や部署はまだまだ沢山あるので、この様子からも日本社会の内部・外国との関わりを保つ難しさが伝わるだろう。今回の記事が、刑事ドラマやニュースを見て理解する材料となれば嬉しい。
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