ここ数年で、禁煙の流れが着々と進んでいる。2016年時点で国内の喫煙者の割合は19.3%。男性の喫煙率も29.7%と、初めて3割を下回った。
さらに、2020年の東京オリンピックに向けて、政府は受動禁煙対策を推し進めている。歓迎する声が多い一方、愛煙家からは「どこでタバコを吸えばいいものか」と悲鳴が聞こえる。
フィリップモリスが紙巻タバコから完全撤退を示唆
by premii 反タバコの流れの中、タバコメーカーも方針を世論に寄せてきている。世界最大のタバコメーカー、フィリップモリスは、将来的に紙巻きタバコの販売から撤退することを視野に入れていることを発表。
フィリップモリスは世界でも有数のタバコブランド、同時に世界で最も有名な消費財ブランドである「マールボロ」を製造している。他にも、「ラーク」や「パーラメント」など日本で馴染み深い銘柄を多く販売。
完全禁煙の風潮に加え「iQOS」の成功が後押し
出典: Amazon.co.jp 年間8,700億本超ものタバコを販売しているフィリップモリス。しかも同社はタバコ以外の産業をほとんど手がけていない。それなのに「タバコ販売をやめる」可能性を考えることができるのは、「iQOS(アイコス)」の成功であることに間違いない。
iQOSはニコチンを摂取できる電子タバコという、今までになかったスタイルの電子タバコ。昨年3月に発売して以来、販売台数は100万台を超え未だに品薄状態だ。
iQOSの成功を受けてフィリップモリスCEOのポール・ライリー氏は「新型タバコ、加熱式タバコのパイオニアとして、更なる進化を遂げてゆく」と発言。
供給台数増加、新フレーバー追加と、フィリップモリスはiQOSにさらに力を入れていくようだ。
JTも電子タバコを開発:紙巻きタバコは縮小か
出典: Amazon.co.jp iQOSの登場によって、電子タバコブームが起こりつつある。日本唯一のタバコメーカーでありJTも動き出しているのだ。
昨年3月に福岡で先行販売されていた電子タバコ「プルームテック」の東京での解禁が、今年6月に決まった。こちらも、先行販売の時点で評判は上々、こちらも品薄状態が続く。
大手タバコメーカーが続々と参戦する電子タバコ市場での熾烈な争いは、さらに加速。そんなブームによって、愛煙家の「紙巻きタバコがなくなるのではないか」という懸念は膨らんでいく一方だ。
フィリップモリスに加え、JTも紙巻きタバコを縮小する動きを見せている。というのも、JTはタバコ以外にも飲料事業、加工食品などでもかなりの売上があるからだ。
だんだんと紙巻きタバコからフェードアウトしていくという未来予想図は、十二分にあり得る話だろう。
混迷の受動喫煙対策も国際的に見れば電子タバコはアウト? セーフ?
そもそも、紙巻きタバコ販売の縮小や電子タバコの台頭の最大の要因は、政府が推し進める受動喫煙対策だ。2020年までに一部の例外を除いた、飲食店を含む公共の場での完全記念を義務付ける。
この政策に対して、飲食業界は猛反対。8,400億円の経済的打撃があるという報道も見られる。
一方で、禁煙にすることでファミリー層が増えるなど肯定的な意見を唱える人々も多く、意見は真っ二つだ。
そんな中、電子タバコを手がけるきタバコメーカーにとって重要なのは、電子タバコも規制対象になるかという点だ。対象から外されれば、電子タバコブームはさらなる盛り上がりを見せるはず。
だが、厚生労働省は「受動喫煙の害がある以上、電子タバコも規制の対象になり得る」と発表。まだ決定段階ではないが、日本での電子タバコ事情は不透明であるのが現状だ。
一方、海外では電子タバコを規制対象外とする判断も珍しくない。アメリカでは、「電子タバコを公共の場で吸っても問題にしない」と見解を発表した州がいくつかある。
現在、iQOSに関していえば、売上のほとんどが日本となっている。だが、もしも海外で電子タバコ人気に火がつけば、公共の場でもタバコを吸ってもいいという事例が増えるかもしれない。
フィリップモリスの発表は、全国の愛煙家を驚かしたことであろう。ついに日本は、吸える場所だけではなく、吸うものさえなくなってしまうのか。
受動喫煙対策に加え、タバコメーカーの方針変更。今後、喫煙事情がさらに厳しくなることは間違いない。
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