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【書き起こし】Dropboxの創設者ドリュー・ヒューストンが語る起業家へのアドバイス

森澤

2017/03/16(最終更新日:2017/03/16)


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 ドリュー・ヒューストン氏はDropboxを創業した起業家である。彼がDropboxを創業した時、彼はfacebookの創設者マーク・ザッカ―バーグ同様、大学生であった。そんな彼はYコンビネータにシード投資を受けて、見事に成功したのだ。

 Yコンビネータとは、1年に2度スタートアップ企業へ大規模に投資する企業である。これから書き起こしを行うインタビューは、そのYコンビネータによるものである。彼は、若き起業家として何を伝えるのだろうか。

1年後、2年後、5年後、今日を振り返る時、一体何を学んでいれば良かったと思うか

Dropboxの発端(要約)

 彼がDropboxの着想を得たのは、USBメモリを何回も忘れることに対して不満を抱いていたことからだ。彼と彼の共同創業者の最初の会社はAccoladeといい、Yコンビネータに面接段階にも行けず、投資を断られたのだ。彼はDropboxのアイデアをYコンビネータに単独で申し込み、現最高技術者で共同創業者でもあるアラシュ・フェルドーシ氏と会った。

 驚くべきことに、フェルドーシ氏は彼と知り合ってから2、3時間しか経っていないのに、共同創業者になったという。そもそも、彼が単身創設者として申し込みをした時、Yコンビネータに「発想は面白いが、共同創業者が必要だ」と言われた。そして、その手続きに与えられた時間はたったの3週間だった。

 彼は旧友カイル・ボッグド(クルーズオートメーションのCEO)に良い人がいないか尋ねたところ、フェルドーシ氏を紹介された。そして、数時間話した次の日、ヒューストン氏は学校を辞めたのである。

 最初は、Yコンビネータに認められるために、彼らは3分ほどのデモビデオを作った。彼はハッカーニュース(Yコンビネータのユーザー投稿型ニュースサイト)を見る人は、Dropboxを気に入ると思っていた。反響は予想通りで、Dropboxの投稿は2日間、ハッカーニュースのトップだった。

否定的な意見

——あなたの最も凄い点は他の人がどう指図しようとも、自分を突き通したことです。あなたは、人の否定的な意見にどう向き合いましたか。

ヒューストン:第一に、そのようなことはいつでも起きるということを認識することだ。僕らは会社を創設したその日、その前、今日まででもそのようなことを経験しているよ。一歩下がって見ると、Appleのような会社は、ビジネス史上ナンバーワンの収入や利益を持っているが、人々は「もうこの会社は終わりだ」と言っていることがわかる。だから、それは人間の性で、そのようなことは起きると認めなければならない。

難しいと思う点は、タフな精神でそのようなことに耳を貸さないのと同時に、繊細な精神も必要だということだ。君の顧客やチームが満足していないのであれば、それに反応しなければならない。だから、それは対処しなければならない、奇妙な強弱関係なんだ。でも最初は、「そういうことはいつでも起きる」という視点を持つことだと思う。

——顧客とチームの問題にすぐ反応するか、通常運転でいくかを選択しなければいけない時、貴方はどう決断をしますか?
 
ヒューストン:資金集めの視点で説明するよ。ハッカーニュースの人々に加えて、多くは否定的なコメントだったけど、肯定的なコメントも多かったんだ。僕らは、多くの投資家が、「Googleもこれをやる」だったり、「オンラインストレージはこの時代の決まり文句だ」などといった、否定的なコメントを得た。

率直に、僕もそうだと思った。「Googleは多分これを実現するし、構造上の有利点は僕らにない。僕らはどうお金を得られるかユーザーもいないし確信できない」って感じだった。これらは全部本当のことだが、そこに因果関係はないということに気付かなければならないんだ。

他人がそうしていて、それが自分にとって良いと思わない方法だからと言って、それが本質的に悪いアイデアだとは限らない。僕だったら投資家にこう聞く。「確かにこのようなものは50個くらいあります。だけどその中の1つでも使いますか?」と。彼らは「いいえ」と言う。僕は「それは興味深い」と言う。

ヒューストン氏が直面した問題

——その市場で想定した競争のレベルが、当初一番の問題でしたか?

ヒューストン:僕らの会社は先ず他よりも下だったから、競争は僕にとってあまり大きな問題ではなかったんだ。僕は顧客ターゲットをただ一人、つまり僕に絞っていた。そして、僕にとっての勝利は僕がUSBメモリを2度と運ばなくていいことだ。それが出発点だったんだ。

——そのアイデアを着想した日から、USBメモリを運ばなくて良くなるまで、どのくらいかかりましたか?

ヒューストン:恐らく6週間から8週間の間だったと思う。開始当初はそういう大きな進歩を何日かで出来たけど、セキュリティ面を向上させた上で、世の中の人々が安全に使えるようにするのには長い時間が掛かった。

——最初に立ち向かった一番大きな問題は何でした? また、過去を振り返って何度かDropboxが終わりそうだと思ったことは?

ヒューストン:最初の問題は、その発展に追いつくことだった。試作品を作り、それは上手くいく。動画を作り、DiggやReddit(どちらもソーシャルニュースサイト)に投稿して、それもまた大成功だったんだ。そして、製品を作ったのだから、会社が必要。

そういう踏み車に乗っているから、毎日、昨日していた全てのことを同じくらい良くするか、それ以上にすると、新たに処理することが出てくる。だから、これは「製品を作らねばならないから、エンジニアが必要だ。エンジニアを雇うのにはお金が必要だ。それには、資金調達しなきゃ。次に、弁護士や会計士がいなきゃ」みたいなことなんだ。

このような輪が段々大きくなっていくんだ。それを配分と指示によって対処する。人を雇っても、新たな問題が浮き出てくる。それは、自分が全く知らないことを、人を雇ってさせる、ということだ。思いがけずに、みんなが違う方向に行っていたりもする。

だから、それを対処することが、一番難しいことだった。何かが壊れる割合は、僕らが何かを直せるより早かったんだ。それに慣れるのは、特に学校で良い成績を取るのが当たり前な人にとって、大変なことだよ。ベン・ホロウィッツ氏(実業家)もそういうことを言っていた。「会社経営の平均点は100点中22点だ」と。A(高得点)を獲得するのに慣れていたら、それは謙虚な点数だよ。

2つのことを同時に考えなければならない。一方では、完璧を目指し、状況を可能な限り良くして、問題が生じた時、動じないことだ。しかし、もう一方で、物事を認識しなければならない。どんなに良くできていても、完璧であることはないんだ。

そして、更に難しいことに、CEOの仕事は6か月毎、1年毎、数年毎に変るんだ。誰もそのことは教えてくれない。事実、最初の段階で自分を高めてくれたことは、次の段階に行く妨げになったりする。例えば、僕は初期バージョンのDropboxの大半を自分で作ったのだけど、やらなきゃいけなきゃいけないことが多すぎて、出来なくなった。

——今のバージョンのDropboxにあなたがプログラムした要素は入っていますか?

ヒューストン:うん。分析してくれたはずなんだけど、まだあるはずだ。大半の核となる製品の動作とプロトコルは結構安定している。素晴らしいことだよ。

起業家へのアドバイス

——何か他に言えるアドバイスや、次世代のDropboxを開発しようとしている起業家に、どう上手くエンジニアから一流企業の経営者に移るか教えれることはありますか?

ヒューストン:まず、知っておいてほしいのは、誰も生まれつきCEOであったわけではないということ。それは学ぶんだ。難しいことは、自分の盲点がわからないということなんだよ。僕の場合だと、プログラミングをして育ったから、如何にコードを機能させるかわかっていた。僕らはハッカーニュースの人々を楽しませれることを知っていたんだ。

僕らは初期のユーザーを満足させられることを知っていた。しかし、会社で売り上げを作ろうとするなら、ただ良い製品を作るよりも話のスケールははるかに大きい。どのような市場に行くか、ビジネスモデル、競争、戦略を素早く、賢明な判断出来るようでなければいけないんだ。どうチームを作り、どうチームを機能させるか。そういう経験がない時、それはとても大変なことなんだよ。

——あなたは如何にして、そういうことを学びましたか?

ヒューストン:まず必要なのは、健康的なパラノイアのようなものなんだ。僕が自分に聞く中で、過去も今も恐らく一番良い質問は、「1年後、2年後、5年後、今日を振り返る時、一体何を学んでいれば、やっておけば良かったと思うか」だ。それは、自分が計画的にどう自分を鍛えればいいか、何を知るべきかに熱心になることなんだよ。

——このようなことは自分で知りましたか? それとも、自分が何をすればいいのか、1年後に何をすれば良かったと思うか人に聞いて知りましたか?

ヒューストン:多くのことからそれを学んだよ。本を読むことは、恐らく一番貴重なことだった。

——何か人に勧める本はありますか?

ヒューストン:うん。経営に関する一番好きな本は、アンディー・グローヴ氏による『人を育て、成果を最大にするマネジメント(High Output Management)』だ。これは、どう組織を調整するかの聖典のようなものだよ。僕には、多くのオススメの本がある。

ピーター・ドラッガー氏による『経営者の条件(Effective Executive)』も凄く良い。でも、基本的に僕らが話していることは多くのことで良い判断をするということだ。それは、どれくらい早く知識を得られるのかということだ。

最後のオススメ本は、チャーリー・マンガ―氏による『Poor Charlie's Almanack』になる。これは多分、僕が読んだ中で一番ためになったものだ。この本は、世界の難解なことを分析するのに特化したメンタルモデルを、どう築くかが書いてある。

読むことは1つだが、自分より一歩、二歩、五歩先にいる友人を持って、その間の違いを見ることも大事だ。セコイア・キャピタル(ベンチャーキャピタル)でコーヒーミィーティングを設定したことがあるよ。僕らが持った最初のベンチャー投資家は、他の起業家たちと出会う手助けを本当にしてくれた。

オフィスから走り出て、スターバックスまで駆けて、席に座り、起業家に質問を立て続けにしたのを覚えているよ。僕は、「どう時間を過ごしていますか? あなたにとって大切なものとはなんでしょうか?」と聞いた。

そして、相手は「うーん。会社として大きな使命を僕らが持っているというのは、とても大切だと思うよ」と言ったんだ。「あと、僕らが素晴らしい価値観と文化を持つというのも大切だ」

そこから、どのバグを改善していなかったか思い出し始めて、気が逸れたんだ。「あのコードをコミットする前にあれを終わらしたっけ?」ってなった。それで僕は、「この人は何を話しているんだ。この話の何が僕らの顧客やコードを解決するのに関係があるんだ」と思った。

しかし、同じことを何回か聞くと、「ここで混乱しているのは僕だけだ」と気づく。そして気づくんだ――特にエンジニア出身の人は、規則正しく、分離しているコードのシステムやアルゴリズムの設計から、人々のシステムの設計に移るんだ。それは、文化や価値観を含んで、その他の多くのことを機能させるのはプログラミングすることなんだよ。

——どのような起業家でも、そのようなことを聞くと困惑すると思います。起業家たちが、そのことを前もって習得する方法を見出しましたか?

ヒューストン:自分の腕を磨くための様々な引き出しが本当に必要だと思う。読書はその1つ。師を持つことや他のステージにいる人のアドバイスを受け取るのも1つの方法だ。僕は、ビジネスの歴史やその美点を学ぶのが好きなんだ。Googleやfacebookがどう設立したか学ぶのは1つだけど、消費財メーカー会社の在り方を理解することからも多くのことを学べるんだ。他にもSwiffer(クイックルワイパー)をどう思いつかれたかだったりね。

——私自身もテクノロジー業界以外のビジネスから一番学ぶことがありました。そしてそのようなことはいくら得ても十分ではないです。

ヒューストン:ビジネスの範囲も超えたいね。だから、どうフィル・ジャクソン氏(NBA監督)がシカゴ・ブルズ、ロサンゼルス・レイカーズ、ニューヨーク・ニックスなどのチームにどう文化を形成したのか。どう政府が大きな問題を解決するのか、だったりね。

さらに、投資者と取締役に頼ることも出来る。例えば、コンドリーザ・ライス氏(米政治家)は僕らの取締役員の1人だ。彼女は、国務長官として、85,000の組織体である国務省を管理した経験から、多様な環境を多く見てきた。また、スタンフォードの学務担当副総長で、これは20,000人の組織体だ。

ブログを読んだりするよりも、多様な情報から導き出した方がこれらの教訓をより吸収させてくれる。

——もし今日新たな会社を始めるとしたら、一番大きな成功のチャンスはどこにあると思いますか?

ヒューストン:AIやマシンラーニング、マシンインテリジェンスは、特に俯瞰した時に革新的になると思う。僕は、ロボット工学や機械と一緒になった時、興味深い良い影響にしろ、悪い影響にしろ、僕らの生活に新たな役割を担うと思うんだ。僕はそんなに、ロボットが人を殺したり、世界を支配することを気にしていないけど、そのことは後で話そう。(笑)

——良いことも悪いことも起こりうりますよね。

ヒューストン:でも、とても面白い時代だと思うよ。現在、人々は何よりも先ずDropboxのことを話す。ファイルを同期することから、チームと共有するまでだ。僕らは、このプロジェクトを始めた時、「僕らの目標は、人々がUSBメモリを二度と運ばないようにすることだ。もしクラウド上に保存できれば、生活は遥かに豊かになるはずだ」って感じだったから、これは小さな発展だよ。そのような問題の殆どは解決したからね。

——任務完了ですね。

ヒューストン:うん。任務達成だ。でも、その道のりで僕らの一番満足している顧客たちは、ストレージを買っているというよりは、共有のために購入しているという更に大きな問題に気が付いたよ。彼らは、チームが同じものを共有するためにDropboxを使っていたんだ。それは変化を意味していた。

僕らはある種、このオリジナル製品に恵まれていて、呪われているんだ。なぜなら、僕らは最初、「Dropboxってなんだ?」や「なんのためにあるんだ?」という質問に苦労した。答えを考えたとき、「コンピューターはなんのためにあるんだ?ファイルはなんのためにあるんだ?」と一緒だからね。

だから、僕らは結局様々な用途をサポートしたんだ。でも、それと同時に人々の生活におけるファイルの役割が変わるということは、当初からとても明確だった。最初は、Dropboxにテキストファイルやmp3を入れていたが、iTunesやEvernote、Spotify、Netflixの世界では、ファイルは存在しない。

技術の進歩は早いから、変っていくものと一緒に常に進化しなければならない。

——これは意識的にもたらした戦略的変化ですか?

ヒューストン:拡大の後に収縮があったね。僕らはファイルの役割が変わることを知っていたんだ。ファイルはなくなることはないけど、変化しそうだった。そして、僕らは「僕らは、人々の生活のどの部分を占めるんだ?」と考えたんだ。いくつか使用用途があったんだ。

1つ目はプライベートフォトシェアリング。2つ目はチームでのファイルの共有。そして僕らは、「それは違う製品になってしまうから、フォトシェアリング用に別のものを開発しよう。ファイルの共有については、より多くのことをしよう」

これが僕らが買収を考えた時だった。僕らはMailbox(Gmailに特化したメールアプリ)を買収し、我々の写真管理アプリであるCarouselを開発し始めたんだ。そして2014年に、そういうことをするのはやめた。

——どうやめる決断をしたのですか?

ヒューストン:難しい決断だったよ。机上では最高の戦略に見えることがあると思うんだ。自分の市場全体を考えた時に、可能な限り多くの物事を保持すべきだよ。僕らの多くのユーザーたちは写真共有に大満足で、我々はそこで更に良い仕事ができた。

しかし、それと同時に写真と共有を見た時、それらは全く別物の製品だし、全く別の理想的なビジネスモデルだし、全く別の競争だったりと、殆ど全てが違ったんだ。そして、僕らはこれらの2つの全く違う世界を跨っていたことに気づいたんだ。

「僕らは多くのことをやっているが、本当の意味で機能はしておらず、顧客は動揺し始めている」という感覚があったんだろうね。そして、僕はアンドリュー・グローブ氏による『インテル戦略転換(Only the Paranoid Survive) 』という、Intelがずっとマイクロ処理装置会社ではなかったことを説明する本を再読したんだ。

実際、彼らは記憶装置会社として始まって、日本の会社に潰されていたんだ。その本では、彼は記憶装置会社から、マイクロ処理装置会社への転換について書かれていた。それを読むにつれて、腹がかき回されたような感覚だったよ。

というのも、僕は「なんてことだ。彼が書いた戦略変更というのは、僕らが今まさにいる状況ではないのか」ってなったから。その本の中に、「CEOは沢山の選択肢を持ちたがる」という部分がある。この変更期間の渦中にいる時にするべきことは、「バスケットに全ての卵を入れて、そのバスケットを監視しろ」マーク・トウェインによる言葉だ。

——それは本当のことですね。

ヒューストン:僕は翌週に出社して、「もうCarouselはやらない。もうMailboxはやらない」と言ったんだ。

——反対意見はありましたか? それともチームは直ぐ後ろについてくれましたか?

ヒューストン:両方あったかな。会社が大きくなると、殆どの人が知っていて、ある物事が思い通りに行ってないのは隠せないんだ。このような感じで、ある人々とって、これは安心で、「率直に言って、なんでこんなに時間が掛かったんだ? 明白だったじゃないか」って感じだったんだ。

MailboxやCarouselに取り組んでいた人にとって、これはとてもつまらないことだったし、僕にとっても残念なことだった。これらの2つの製品を僕は本当に好きだったのに。とても恥ずかしいことだった。このような大きな変化をもたらすと、注目が大きくなり、自分がする行動1つ1つが大きな意味を持つことになる。だから、報道機関は僕のことを攻撃した。

再び、僕がそのことを受け入れて気持ちを整理したとしても、チームにとってそれは辛いことだった。皆、焦点を合わせるという考え方は好きだけど、焦点を合わせるということの本当の意味は、自分が愛するものを撃ち落として、自分ができると確信していることを却下することなんだ。

それがその周期的な性質なんだよね。拡大することもあれば、収縮することもある。

——拡大と言えば、私はあなたがしたことの凄さに関心したことを覚えています。1年という期間で、Dropboxは建てられたばかりで、大勢の人々に使われていました。どう時間を効率的に使いましたか? また、7人のユーザーから700万人に増えた時、どのよううな日々を過ごしていましたか?

ヒューストン:これは「7人のユーザーから……」に対する答えなんだけど、その時僕らのチームは50人以下だった。僕らについての勘違い、もしくは明確に理解されていないことの1つは、なぜ僕らには暫く競争相手がいなかったかというと、Dropboxは簡単に見えて、実は本当に難しいんだ。そのことは知っていたんだ。だって、もしそのようなものが存在していたら、僕はそれを使ってたし、ここにはいなかったろう。

でも、これは技術的に本当に難しかったんだ。とは言っても、恐らく合理的に機能するであろうものを作った競争相手は沢山いたが、流通が上手くいかなかったのと、宣伝が上手く行かなかった。

僕は、2007年にfacebookやゲームのプラットフォームが軌道に乗り始めて、これらの会社は0から100まで駆け上がった。駆け上がりの速度記録が常に更新されていたんだ。

これらの多くは口コミによって成されていたんだ。デイブ・マクルーアは『Startup Metrics for Pirates: AARRR.』という偉大なフレームマークを持っていたのだけど、これについては多くを言わないよ。基本的に、これは「獲得(Acquisition)、活性化(Activation)、収益(Revenue)、継続(Retention)、紹介(Referral)」だ。これが、僕らの経営方法だ。

ユーザーが入って来て、「大変だ、サインアップした数少ない人の5人中4人がDropboxにファイルを入れてない。一体なにが起きているんだ?」となった。僕らは実際に、クレイグズリストの人々を連れてきて、製品をインストールしているのを見た。そして、僕らは別室にいるチーム全員にリアルタイムでビデオを見せた。僕らはその人とプロジェクトマネージャーを一部屋に、残りのチームメンバーを別室に。

僕らは、「座って下さい。これがDropboxです。これからファイルをシェアしてください」と言った。5人中0人がこれに失敗した。おしい人もいなかった。

全ての顧客の使用例に注目を置くのは1つだが、流布機関にある全ての過程を可能な限り調整するのはもう1つだ。例えば、紹介制度を作ることなんだよ。この紹介制度というのは、2つの側面の動機があるんだ。つまり、僕が君にDropboxを紹介したら、僕らはどちらもより多くの容量を得ることが出来る。

暫くの間、これが30%のサインアップを占めていた。本質的に流布性のある、ファイルの共有は、20%だ。このような紹介制度はこれ以前は良く理解されていなかったが、これは90年代後半――いや、00年代前半だったかな――に見たPayPalとかから想起した。

というのも、PayPalには紹介ボーナスがあったんだ。DiggやRedditのビデオは『ゲリラ・マーケティング』という本からアイディアを頂いた。これは、お金が無い時、どうやってマーケティングをし、ユーザーを得ることが出来るかについての本。だから、これらのことの多くは2007、2008年に下準備を終え、多くの点と点は、僕がここ何年の内読んだ本によって繋げられた。

——50人以下だと、会社のマネージングと会社について考えるために余り時間をかけないと予想します。

ヒューストン:20人くらいしかいない時、直感で経営することが出来る。その理由として、皆が1つの部屋に入ることが出来て、他の人が何をしているか把握し合っているからだ。でも、30、40、50人への変わり目は、とても難しい。

——最後の質問です。いつ株式公開会社になるかは聞きませんが、民間市場に留まるか、公開市場にするかの決定方法はなんでしょうか?

ヒューストン:特別なことは何もないよ。それは主に金銭上の理由での決断だ。資本が必要かどうかだけだよ。雇用者と投資者には流動資産の換金が必要なわけで、ブランド化や顧客獲得費用があるのには他にも利点がある。この5年か10年に起きたのは、民間市場はこれらの多くの問題への解決策を見つけたことだ。

公開市場にすることは、全ての問題を解決する。とはいっても、経営上、数々の理由で難しい。1つは、コンプライアンスや規定による間接費だ。まだ他にも良き規律の要素があるが、多額の間接費だ。株式市場は躁鬱の傾向にあるから、彼らは会社に必要以上に熱狂的なんだ。これは士気に大きな影響を及ぼす。現代では、殆どの技術企業は公開市場で、僕らはその道を計画しているよ。

——お時間ありがとうございました。

ヒューストン:呼んでくれてありがとう。

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