講談社、手塚プロダクション、NTTドコモ、富士ソフト、VAIOは2月22日、共同で発表会を開催。
鉄腕アトムをモデルにしたコミュニケーション・ロボット「ATOM」を発表し、全70号のパートワーク「コミュニケーション・ロボット 週間 鉄腕アトムを作ろう!」の付録として販売することを明かした。
鉄腕アトムを実際に組み立てる
言わずと知れたロボットキャラクター「鉄腕アトム」が誕生したのは1951年のこと。翌52年からは講談社グループの光文社で当時発行していたコミック誌「少年」に連載が始まった。1963年には、モノクロ作品としてアニメ化し、日本初の国産ロボットアニメとなった。
そして2017年、鉄腕アトムを目指す「ATOMプロジェクト」が講談社を中心に始動。同プロジェクト第一弾として、そして手塚治虫生誕90周年企画、および講談社創業110周年記念企画として、同パートワークは発表された。
創刊は4月4日より。また、最終70号は2018年9月11日に発売される予定だ。組み立てはドライバー1本で行え、身長約44cm、重量約1400gの鉄腕アトム「ATOM」が完成する。
価格は創刊号が830円(税別)以下、通常号が1843円、高価格号が2,306~9,250円。70号までを揃えると、合計18万4,474円となる。なお、「講談社ONLINE STORE」で先行予約受付中だ。
設計開発は富士ソフトが中心
会場には、各社の代表が登壇した。写真は向かって右からVAIO代表取締役 大田義実、手塚プロダクション取締役 手塚眞、講談社代表取締役社長 野間省伸、NTTドコモ代表取締役社長 吉澤和弘、富士ソフト代表取締役執行役員 坂下智保が並ぶ(敬称略)。
講談社は出版コンテンツの作成、全体の企画、プロデュース、販売を担当。ATOMの会話の元となるシナリオモデルの作成も担う。
ATOM本体のロボティクスや、OS、AI、アプリケーションなどの設計開発は、富士ソフトが担当。同社はコミュニケーション・ロボット「PALRO(パルロ)」の開発で培った技術やノウハウが用いられている。サポートサイト「ATOMガーデン」のシステム構築も同社が行った。
ATOMの心臓部ともいえるメインボードや、頭部に搭載されるヘッドボードは、VAIOが製造・実装を担当する。組み立てが苦手な消費者に向けた「ATOM組み立て代行サービス(21万2,900円)」も同社が安曇野工場で行う(第1期の先行予約は2月22日~7月11日17時まで実施され、1,000体限定となる)。
PC事業だけでなく、ロボット組み立て事業が第二の柱であるとする、新生VAIOらしい関わり方となった。
NTTドコモは、ATOMに対し「自然対話プラットフォーム」を提供する。これは同社が提供している「しゃべってコンシェル」の基盤技術やノウハウを生かしたサービス。
曖昧な表現が含まれる話し言葉を認識した際に、目的や意図を解釈し、シナリオに沿った言葉や情報を返す仕組みとなる。なお、ATOMはWi-Fiを介して同プラットフォームに接続する。
ATOMはどんなことができるのか?
ATOMの機能は「コミュニケーション」に重きを置いている。胸部に搭載されたディスプレイに動画や静止画を写しながら、体操をしたり、絵本の読み聞かせをしたりすることは可能だ。年齢を当てる機能や、オリジナルラップを披露するシーンもあった。
基本的なコミュニケーション機能において注目したいのは、富士ソフトの「フロントエンド AI」の働きである。これにより、人物を認識するだけでなく、口元が動いている場合にはマイクの感度をあげようとする。相手が笑っていると笑おうとする、など「会話力」に重きを置く。また、ATOM本体がわからない言葉は、テキスト化されたのちクラウドへ移行され、自然対話プラットフォームで対応することになる。
こうした一連の流れは、付き合うほどに変化する。同発表会ではこれを「成長する会話力」として紹介していた。
コミュニケーションに重きを置く理由
講談社のプロジェクトリーダー、奈々原敦子さんはコミュニケーションにこだわる理由についてこう述べた。
「いまどうゆうロボットが求められているのかをマーケット調査いたしました。この表は25~65歳までの男女1200人にインターネット調査をしたものです。
現代における様々な年代の人に家庭用ロボットに求めるものを聴いた結果、80%と圧倒的に指示されたのは「会話が楽しめてコミュニケーションできる機能」、2位は「話し掛けたことを少しずつ憶え、成長する機能」、3位は「可愛らしいしぐさで癒してくれる機能」)、4位は「顔認識」、5位は「二足歩行」と続きます。
このように、いつも家にいるロボットに人々が求めるのは、例えばアマゾン・エコーに代表されるような徹底した利便性を追求したものとは真逆の、まさに友達や家族に求める「会話」や「癒し」という側目が存在するのです。それが私たちがアトムという素晴らしいロボットキャラクターを実現しようと考えた原点です」
ATOMは残念ながら、空を飛んだり、10万馬力を発揮することはない。
しかし、「手塚治虫が描いた鉄腕アトム」の本質的な部分を実現したいという想いは開発陣に共通しているようだ。
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