NTTドコモ、東京無線などが、タクシーの需要をリアルタイムで予測する、それを効率的な運行の役立てる「AIタクシー」の実証実験を行っている。
2月17日には、報道向けに実験の中間報告が行われ、AIタクシーの試乗体験も実施された。
ビッグデータをいかして、乗車需要をリアルタイム予測
AIタクシーとは、人工知能を利用するタクシーのことで、リアルタイムの移動需要を予測する技術が要となっている。実証実験は、NTTドコモ、東京無線、富士通、富士通テンの4社共同で行われている。
リアルタイム移動需要予測には、NTTドコモの携帯電話ネットワークの仕組みを利用して作成される人口統計と、東京無線のタクシー運行データ、さらに気象データ、施設データなどを組み合わせたデータが利用されている。
交通ビッグデータを分析・利活用するサービスプラットフォームとして、富士通の「SPATIOWL」というソリューションを採用。富士通テンは、約60年にも渡り、タクシーの配車システムを手がけており、今回の実験では、リアルタイム移動需要予測に基づくニーズの先読みと迎車時間の短縮化に取り組んでいる。
タクシー向けリアルタイム移動需要予測技術の概要。富士通のMobilityサービスプラットフォーム「SPATIOWL」の概要。富士通テンのタクシー配車システムの概要。 実証実験は2016年6月から2017年3月までの予定で、東京23区および武蔵野市、三鷹市のエリアで行っている。
予測モデル学習の対象とした車両は4,425台。実際の需要予測を確認できるタブレットで搭載した車両は12台で、2016年12月から実際に客を乗せるフィールド実験を行っている。
フィールド実験で使われているタブレット。 リアルタイム移動需要予測は、対象エリアを500mメッシュで分割し、各メッシュでの現在から30分後までの乗車台数を10分毎に予測する仕組みだ。
タクシーの乗務員にとっては、乗車ニーズがある場所を素早く探すことができ、利用者にとっては、タクシーの待ち時間が短くなることが期待できる。また、乗客を探すために空車で運行する時間や距離を減少でき、長期的な成果として、渋滞の緩和やCO2の削減なども期待できるという。
12月のフィールド実験では、実証実験に参加した乗務員26人の売上の平均が、東京無線全体の平均を49%も上回るという結果が出たことが報告された。
乗務員からは「自身の経験・知識を補完できた」「経験の少ない場所でお客様を乗せらせた」といった効果報告があり、タクシー事業者として「経験が浅い乗務員の教育ツールとして有効」という認識も持てたようだ。
12月はタクシーの需要が高まる時期だが、11月と比べた売上額の伸び率が実証参加者は顕著に高かったという。試乗体験して、予測情報の正確さを実感
AIタクシーには、カーナビの横にLTE対応のタブレット端末が設置されている。タブレット画面に表示される現在地の地図には、タクシー需要予測が色分けで表示される。
乗りたい客がいると想定される場所には、円形の印も着く。都内の新宿・渋谷界隈という限られた範囲での乗車だったが、ディスプレイに表示される情報が、かなり精度の高いものであることは実感できた。
実際にAI対応タブレットを搭載したタクシーに試乗。乗車ニーズが予測される場所には、赤い点線の円が表示。 試乗体験した際の乗務員は、まだ経験年数が浅いとのことだが、「あまり走ったことがない場所でもお客様をお乗せできた」「お客様を見つけにくい深夜の時間帯でも、お客様がいる場所がわかった」と話していた。
経験の長い乗務員は、“勘”ともいえる経験値により、客がいそうな場所がわかるそうだが、特別なイベントが行われる日や、天候、電車の遅延などの諸条件によって、その“勘”がはずれることもあるという。
NTTドコモの人口統計データにより、人の動きをより細かく予測することができ、都内だけでなく、全国に応用できる可能性があるという。
IoT技術はさまざまな分野での導入が期待されているが、交通分野でのニーズが非常に高い。 AIタクシーは、実験に参加している東京無線だけでなく、将来的には多くのタクシー事業者で導入され、タクシー全体の利便性を向上させる狙いがある。ここ数年、スマホアプリによる配車サービスが広がったり、東京のタクシーは初乗り料金が410円に値下げされるなど、需要促進のための施策が進められている。
AIタクシーは、ビッグデータやクラウド、そして、昨今の重要なキーワードとなりつつある「IoT(物のインターネット)」を統合的に生かすサービスと言っていいだろう。近い将来、我々は、その仕組みを知らずとも、「最近、タクシーが見つけやすくなったね」と感じるようになっているかもしれない。
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