Uber が「空飛ぶタクシー」構想に向け、NASAのベテランエンジニアの引き抜きを行ったことがわかった。
空飛ぶタクシーの試みはこれまでどんな展開を見せているのか。Uber を含めた各社、また独自の都市計画を進めるドバイの取り組みを紹介。
主要各社が取り組む「空のタクシー」
2月8日、Uberが「空飛ぶタクシー」構想に向け、NASAに30年勤めあげたエンジニア、マーク・ムーア氏の引き抜きに成功したことがわかった。
Uberは2016年10月に「Uber Elevate」なる空飛ぶタクシー計画を立ち上げている。また、欧州の航空会社Airbus(エアバス)の「Project Vahana(ヴァハナ)」や、Googleの共同創業者ラリー・ペイジ氏が出資しているZee.Aero(ジーエアロ)、Kitty Hawk(キティーホーク)でも類似の事業を計画している。また、中国企業EHang(イーハン)も、空のタクシーを見据えた一人乗りドローンを発表している。
空飛ぶタクシーといっても自動車がそのまま飛ぶというよりは、ヘリコプターやドローンに近い形となる。機体はVTOL機と呼ばれる垂直離着陸機を用いる。ビルの屋上などに停留所を設け、スマートフォンと連携した配車サービスを行うという、まさに空のUberと呼べるビジョンが見据えられている。
「空飛ぶタクシー」のメリット:移動時間の短縮、渋滞緩和、無人運転
Uberの発表では、車だと2時間12分かかるサンフランシスコ・サンノゼ間の移動が、たった15分に短縮できるという。空路を利用することのメリットとしては早さ以外にも、渋滞の改善などがある。
安全面では法規制との軋轢が生じることは必至だが、「Project Vahana」の指揮を執るザック・ラヴァリング氏によると、自動運転車のような安全システムを採用することで、飛行経路に障害物が現れた場合も瞬時に対応可能だという。
また将来的には自動運転システムの採用による無人運転も考慮されている。すでに航空機への自動操縦装置の設置が多く一般化していることを考えると、このまるでSF映画のような光景だって、特別荒唐無稽な話ではない。
交通の「自動化」に積極的なドバイの試み
大胆なドバイの「空飛ぶタクシー」計画
アラブ首長国連邦を構成する首長国の一つであるドバイ。この地では、「空飛ぶタクシー」事業がいち早く実践され始めている。
機体には中国企業EHangによる機体「EHang184」(一人乗りドローン)を採用。すでにドバイ国内での飛行実験に成功しており、最大100kgまでの積載量、荷物・乗客を乗せた状態での約30分間の飛行、最高時速は160kmを誇るという。
運転は4Gネットワーク網を利用して全自動で行われるという。日本のスマートフォンなどでの4G電波利用では、通信の不調は未だある程度の頻度で起こりうる。人命を乗せて運航する以上、制御運転を司る電波の安定性は今後、最優先事項となるべきである。
とはいえ今年7月の運用を目指すというドバイは、「空飛ぶタクシー」事業に対して非常に積極性といえる。Airbusが2017年末までのプロトタイプの試験飛行実施を掲げていることから見ても、ドバイの計画はかなり大胆だ。
スマートシティを目指すドバイ
ドバイの地下鉄はドバイメトロと呼ばれる、世界最長の全自動運転システムである。また2016年11月には自動運転バスの走行テストを開始しており、2030年までにドバイの車の25パーセントを自動運転車にするという目標を掲げる。
2020年のドバイ万博に向け、初の「ハイパーループ」システム(超高速チューブ交通システム)の建設も発表されている。これはエアホッケーに似た原理でチューブ内を高速移動するもので、ドバイ・アブダビ間のおよそ124kmを12分で移動してしまうという。
無料Wi-Fiポイントの設置数や、住民へのスマートウォッチなどデジタルデバイスの普及率で高い水準を誇るドバイは、IoTベンチャーの中心地にもなっている。
ドバイが目覚ましいスピードでこうしたスマートシティ構想を実現していける背景には、発展途上国から中東経済の中心地へと一気に変貌したため、都市計画もいきなり先端のものを導入できたということがあるだろう。
空飛ぶ車というとどこか空想めいたイメージを持ってしまうが、スマートフォンやAIデバイスがあっという間に身の回りにあふれたように、数年後の「当たり前」がどうなっているかはわからない。人間の発想力はとどまることなく想像し続けるものなのかもしれない。
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