携帯電話大手3社は新年度向けの学割キャンペーンを発表。昨年度のキャンペーンと比較すると、内容に変化が見受けられた。
これは、総務省から「過度なキャッシュバックに関する是正指示」などを受け、さらに、活性化するMVNO市場を無視できなくなっている影響とも考えられる。各社キャンペーンの具体的な内容を改めてチェックしたい。
新学割のポイントは18歳と25歳
まず、全体の概要を抑えておきたい。auとソフトバンクの学割キャンペーンは、18歳以下を対象とするものと、25歳以下を対象とするものの2種類を展開する。特に18歳以下を対象とするキャンペーンの恩恵を最大にするには、家族の同時加入が必要となる。
一方、NTTドコモのキャンペーンでは25歳以下を対象とする。18歳以下に限定するものは提供されていない。
各キャリアの学割キャンペーンのポイント
- 昨年のような「データ通信量プレゼント」が主流のキャンペーンではなくなった
- 「18歳以下向け」と「25歳以下向け」でキャンペーンの体裁がかなり異なる
- NTTドコモは「25歳以下向け」のみの提供。auとソフトバンクは両方を展開する
それでは、各社のキャンペーンについて時系列で見ていきたい。
なお、ソフトバンク「学割SUPER FRIDAY」、auの「auスマートパスプレミアム」、NTTドコモの「d」関連サービスに伴うポイント付与キャンペーンなど、学割に付属する特典については本記事では割愛させていただく。
年末に先手を打ったのはソフトバンク
今回の学割商戦で先手を打ったのはソフトバンクだ。2016年12月13日、6歳から25歳までを対象とする「学割モンスター」を発表。同月21日より実施した。内容は、大容量プラン「ギガモンスター(データ定額20GB、および30GB)」に加入する対象ユーザーに対し1年間、毎月の通信料金を1,000円割り引くというもの。
キャンペーン受付期間は2017年5月31日までとなっている。なお、この時点では18歳以下を対象としてキャンペーンは発表していなかった。
年明けに流れを変えたau
続いて、auが2017年1月11日に「auの学割天国」を発表した。先述の通り、学割は18歳以下を対象とする「学割天国U18」と、25歳以下を対象とする「学割天国U25」の2種類を設けた。
学割天国U25は「26歳の誕生日まで適用」に注目
「学割天国U25」については、2016年末にソフトバンクが発表した「学割モンスター」を意識したものに見える内容となっている。適用条件は「25歳以下で、新規または機種変更時にスーパーデジラ(データ定額20/30)に加入」すること。特典内容は利用料金から月額500円の割引だ。
月額の割引はソフトバンクのそれよりも少額だが、適用期間が26歳になる誕生月までとなっている。1年間限定であるソフトバンクと比べ、長期利用を誘う内容となっている。
学割天国U18は格安スマホを意識した「段階式の定額プラン」
一方、「学割天国U18」は目新しいキャンペーンとなった。内容は1回5分以内の国内通話がかけ放題となる「スーパーカケホ」と、利用したデータ通信量に応じて料金が変動する「U18データ定額20」をセットで契約できるというもの。つまり、段階式の定額プランだ。
適用条件は、「18歳以下で新規契約し、U18データ定額20に加入すること」。支払い総額(データ定額料+通話料)は3GBまでが3,980円/月、3~4GBが4,790円/月、4~5GBが5490円/月、5~20GBが6,090円/月となる。ただし、これは「auスマートバリュー」に加入を前提とした数値である点に注意したい。
また、受付期間中に家族も新規で加入することで、さらに1,000円が割り引かれる。つまり、「auスマートバリュー」に加入し、加えて「家族の新規加入」があれば支払い総額は3GBまでが2,980円/月、3~4GBが3790円/月、4~5GBが4,490円/月、5~20GBが5,090円/月となる仕組みだ。
家族向けのキャンペーンとしては「U25家族もおトク機種変更キャンペーン」も実施される。「25歳以下の人とその家族」が機種変更した場合に、対象機種の本体価格を最大1万800円割り引かれる。一部「au WALLET プリペイドカード」へのキャッシュバック (チャージ) 特典となる点には、留意しておきたい。
発表会では、同社の田中社長がこうした施策を「究極の学割」と紹介。その姿勢からも、auとしての意気込みが感じられた。
ソフトバンクが18歳以下のキャンペーンに追随
auの「学割天国U18」発表を受け、ソフトバンクが動いた。1月16日に18歳以下を対象とする「学割モンスターU18」を発表。また、年末に発表していた「学割モンスター」については、名称を「学割モンスターU25」に変更している。
「学割モンスターU18」の内容は、auのそれとほぼ同じ。「スマ放題」または「スマ放題ライト」とセットで、段階定額制のプランとして提供される。
料金はデータ利用量に応じて4段階(3GBまで、3~4GB、4~5GB、5~20GB)で変動する。また、キャンペーン期間中に「おうち割 光セット」に加入する場合は、毎月1,410円割引。キャンペーン期間中に家族が新規契約する場合は、「データ定額 20GB(U18)」の利用料金が毎月1,000円割引になる仕組みだ。家族加入と固定回線セットという条件もauに揃えてきた。
こちらの支払い総額(データ定額料+通話料)は「家族追加特典」と「おうち割 光セット」を適用した場合で、3GBまでが2,980円/月、3~4GBが3,790円/月、4~5GBが4,490円/月、5GB~20GBが4,980円/月となる。
5~20GBのプランに注目すると、auは5,090円/月~であるのに対し、ソフトバンクは4,980円/月~、とやや安く設定されているのが分かる。
キャンペーン受付期間は「学割モンスターU25」と同じく2017年5月31日までだ。
最後発のNTTドコモは25歳以下向けのキャンペーン
NTTドコモはその翌日となる1月17日、25歳以下のユーザーが対象となる「ドコモの学割」を発表し、1月20日より実施した。auやソフトバンクとは異なり、18歳以下を対象とするキャンペーン・プランは本記事執筆時点では発表されていない。
「ドコモの学割」の適用条件は、「カケホーダイ&パケあえる」の基本プランとパケットパックに新たに申込むこと。
1年間、毎月の基本使用料が1,000円割り引かれる。これに加え、毎月500円割引+ボーナスパケット1GB追加の「U25応援割」が適用され、1年目は合計1,500円/月の割引となる。なお、2年目以降はU25応援割のみが提供され500円/月が割り引かれる形となる。
また、上記の25歳以下向けの特典は「新規申し込み者」が対象となっているが、既に
「カケホーダイ&パケあえる」を利用しているユーザー向けの特典も用意されている。
この場合、「ウルトラシェアパック50/100」「ウルトラデータL/LLパック(20GB/30GB)」のパケットパックを利用することで、dポイントが1年間毎月1,000ポイント付与される。
各キャンペーンの狙いは何か?
2016年の学割はデータ通信量をプレゼントするトレンドがあったが、2017年の学割は純粋な割引としての体裁を成している。これは、大手キャリアにおける20GBプランが登場し、データ通信量をプレゼントする意義が薄れたことも影響しているのかもしれない。
そして、新たに設定された18歳という区切りは、若年層を「スマホデビューする学生」と「スマホを使いこなす若者」に細分化しているように感じる。
まず、auやソフトバンクが提供する「18歳以下」向けの割引は、学生のスマホデビューに伴う、家族単位の格安SIMプランへの流出を防止する施策と考えられる。
そもそも格安SIMでは、音声通話対応プランで3GB程度を利用する場合(約1,600円/月)に、5分制限の通話定額オプションを加えた場合(約月額800円/月)、想定される月額料金は、合計2,500円前後だ。
auやソフトバンクの学割で、家族の加入および固定回線のセット割を加えた場合、3GBまでが2,980円/月。NTTドコモも視点は違えど、「シェアパック子回線のユーザーならスマートフォンを1年間月額1,500円から利用できる」と謳う。
これは格安SIMと十分に戦える価格だ。これから子どものスマホデビューを検討する家庭に対し、「キャリアでも格安SIMとほとんど変わらない価格で利用できるぞ」というアピールを感じる。
また、段階性になっており、上限を意識しずらいプランは、次第に若年層を大容量プランに慣れさせていく役割も兼ねているのだろう。
一方、ソフトバンクやauが提供する「25歳以下」向けの割引は、スマホで動画などのコンテンツを利用しやすい、またはWi-Fi環境を持たない若年層に対し、大容量プランへの移行を促する意味があると予想できる。
NTTドコモの既存ユーザーに対するdポイント特典も同様だ。この点については、ソフトバンクやNTTドコモが1年限定でキャンペーンを適用するのに対し、長期的な適用を決断したauに思い切りの良さを感じる。
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