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ユニクロ、次なるターゲットはムスリム16億人:新市場への挑戦が異文化理解へと繋がる

菊池喬之介

2017/02/16(最終更新日:2017/02/16)


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ユニクロ、次なるターゲットはムスリム16億人:新市場への挑戦が異文化理解へと繋がる 1番目の画像
出典:www.uniqlo.com
 約16億人と言われているムスリムの人口。その数は増加傾向にあり、2030年には22億人、割合にすれば世界全体の30%弱までになるという。そんなムスリムをターゲットにした市場が急速に拡大し始めている。

 ユニクロが展開しているムスリム向けラインもその一環。日本だけでなく、アメリカ、ヨーロッパ、ムスリムの多い東南アジア地域にも進出しており、売れ行きは順調だ。

 本記事では、保守的だがファッショナブルなユニクロのムスリム向けラインを紹介するとともに、この試みが持つ可能性について検討していく。

非ムスリムからの思わぬ支持が得られる?

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出典:www.uniqlo.com
 2015年から販売開始したユニクロのムスリム向けライン「HANA TAJIMA FOR UNIQLO」。デザインを担当するハナ・タジマ氏はイギリス出身の日系人でイスラム教徒だ。

 原則、肌を隠さなければいけないムスリム女性のファッションに、西欧的なファッション性を加えたバラエティ豊かな商品が揃っている。

イスラム的な女性らしさ+ファッション性

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  ユニクロが目指すのは、女性らしさを大切にしながら肌を露出しすぎず、あらゆる人に敬意を払うイスラム教の「保守的な女性像」を体現するスタイル。そのため、どの商品もゆったりしたシルエットが特徴だ。

 そのスタイルを基盤に、国際的な活躍を見せるファッションデザイナーであるハナ・タジマ氏が西欧的なファッション性を加える。伝統的な柄だけでなく、チェックやストライプなども取り入れ、カラーバリエーションも豊富。

 そういったファッション性もあってか、このスタイルを支持するムスリム以外の女性も少なくないという。売り場では、ムスリム向けのファッションだとは全面的に押し出されてなく、日本人女性の試着も多い。

 普段からエスニックなファッションを好む女性には、ムスリム向けのファッションもハマりそうだ。

 もちろん、ムスリム女性が頭髪を隠すためのスカーフ「ヒジャブ」など、伝統的な服も多く取り扱っている。本来のターゲットであるムスリムへのアプローチも抜かりない。

拡大する期待の市場なのか差別される対象なのか

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by Zanini H.
 冒頭に記述したように、ムスリムを対象とした市場は拡大しつつある。ファッションの他にも味の素や資生堂のように、食品、化粧品の分野に進出していく企業は多い。

 東京五輪はビッグチャンス?  イスラム教徒のための「ハラル」と日本の開発事情
でも紹介した。消費者からの信頼を得るために、イスラム教の教えに基づいた基準をクリアした「ハラル認証」の取得を目指す企業も増えてきた。

 このような“期待の市場”としてのイスラムがある一方、偏見の対象としてのイスラムがあるという事実も見逃してはならない。特に、ムスリム独特の服装に関しては長年にわたって議論が続いている。

フランスでムスリム女性用の水着「ブルキニ」が禁止に

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出典: Amazon.co.jp

 昨年、フランスの一部自治体がムスリム女性用の水着「ブルキニ」着用禁止の措置をとったことが物議を醸した。フランスでは、以前からムスリムの服装に関する取り締まりは厳しい。

 1980年代から始まった、いわゆる「スカーフ論争」はまだ終わりを迎えていない。スカーフとは上で紹介した「ヒジャブ」などのことを指しており、フランス政府はその着用を認めていないのである。

 というのも、フランスの基本理念は「ライシテ(政教分離)」であり、宗教的シンボルを公共の場で着用することを認めていない。ヒジャブもその対象の範囲というわけだ。

 他にも女性蔑視やテロの危険性といった視点からの議論があるのだが、双方の意見、認識が食い違っているのが現状だ。詳しくはムスリム女性の「ブルキニ禁止」は反イスラムの表れ?  “自由の国”フランスが抱える矛盾で解説しているので参照してほしい。

経済、文化面で関係が深まることで解決の道へ

 このようなムスリムに対する政治的な事情や西欧的価値観を基準にした抑圧は少なくない。アパレルブランド「アバクロンビー&フィッチ」がヒジャブの着用を理由に採用を拒否した例があるなど、差別とも捉えられる例は民間にも多い。

 そんな中、ムスリム向けのファッション商品を売り出すというのは、いろいろな面で期待できることがある。一つはあまり手をつけられていないムスリム向けのファッションという市場で勝負できるということ。

 そして、もう一つはムスリムのファッションを非ムスリムに認知、浸透させることだ。イスラム教に関係のない人がファッションとしてヒジャブなどを取り入れたらどうなるだろう。

 禁止する側は今までの論理が使えなくなる。ムスリムが被るヒジャブは禁止で、非ムスリムが被るヒジャブは許可されているというあからさまな差別はさすがに不可能だろう。

 文化が浸透すれば、それはもう異文化ではなく、日常的に触れている自らの文化になっていく。そうすれば、禁止の対象からは自然と外れるはずだ。


 ユニクロがムスリム女性向けの商品に取り組んでいることは、新市場への挑戦のほか、文化の浸透という視点で見てみても面白いかもしれない。ユニクロの他にも、ドルチェ&ガッバーナなどもムスリム向けの商品を販売しており、今後拡大していきそうだ。

 もちろん、メーカーは第一にムスリムというターゲットを狙っているが、付随する思わぬ効果が出てくればと期待したい。

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