ソフトバンクグループは、第3四半期の決算を発表した。
国内外ともに業績は好調で、第一四半期からの売上高は6兆5,815億円、営業利益は9,497億円と減収増益。売上高の微減は、米キャリアのSprintによるもので、為替の影響が響いたというが、業績は好調だ。
好調な業績を強調する、ソフトバンクグループの孫正義社長
国内通信事業のソフトバンクだけに絞ってみると、売上高8,461億400万円、営業利益1,855億551億と、2015年度と比べ、増収増益を果たしている。
ソフトバンクグループの代表取締役社長兼CEOの孫正義氏は、「ソフトバンクは何度もつぶれる、ソフトバンクの通信は危機的だと言われてきたが、順調にキャッシュフローが稼げるところまできた」と胸を張る。
一方で、各種指標を見ると、モバイルの分野に、陰りの兆候も見え始めている。孫氏は「回線数も伸びている」と強調していたが、実際には第3四半期で、スマホやタブレットなどの主要回線のユーザー数は7万の純減を記録。サブブランドのワイモバイルが好調な一方で、メインブランドのソフトバンクは、ユーザーの獲得に苦戦している様子がうかがえる。
昨年よりも総回線数は伸びているが、四半期ベースでは純減となった。 MVNOを含めるとNTTドコモが大幅な純増、auが横ばいになっていることを考えると、流出傾向が続いていると言えるだろう。
固定回線の「SoftBank光」が伸びているため国内通信部門の収益は、トータルで見ると上がっているが、モバイルに関しては決して順風満帆ではない。
「SoftBank光」が国内通信の収益を補っている構図だ。 その結果として、1ユーザーあたりからの平均収入である「ARPU」も、四半期ごとに、徐々に低下しているのが現状だ。2016年度第3四半期のARPUは4,530円。前年同期のARPUが4,720円で、比較すると190円と大きく落ち込んでいることが分かる。ソフトバンクのARPUは、ソフトバンクとワイモバイルを合算しているため、これはワイモバイルの比率が増えたことを意味する。
足元では、対MVNOとの競争環境も変わりつつある。MVNOの老舗である日本通信は、3月22日からソフトバンクのネットワークを借りたサービスを開始する。
日本通信は約1年前からソフトバンクと交渉を進めていたが、利用できる端末をめぐる協議が物別れに終わり、総務省に仲裁を申し立てていた。日本通信の主張は、ソフトバンクのSIMロックがかかった過去の端末を、MVNOのSIMカードでも使えるようにすること。狙いは、ユーザー数の多いiPhone 6、6 Plus以前のiPhoneにある。
ソフトバンクのネットワークを借りたサービスを開始する日本通信。 日本通信の試算では、ソフトバンクのMVNOの潜在ユーザーは427万にのぼるといい、初年度で、このうちの約1/4である100万ユーザーの獲得を目指す。
日本通信は営業力の弱さを補完するため、昨年からMVNOを支援するMVNEに特化する方針を打ち出しており、U-NEXTなどの広い販路を持つMVNOが、SIMカードを販売する予定だ。実際に潜在市場がここまで大きいかは未知数だが、ターゲットがiPhoneを使うソフトバンクユーザーということもあり、ソフトバンクはワイモバイルを強化するなど、対応を迫られそうだ。
ソフトバンク系MVNOの潜在市場を、427万と見積もっている。 ただし、ワイモバイルのユーザー数が増えると、先に挙げたように、ソフトバンクのARPUが低下することにつながる。ソフトバンクの収益にとって、ワイモバイルは諸刃の剣でもあるとういわけだ。
また、NTTドコモからネットワークを借りるMVNOが伸びる一方で、auもUQコミュニケーションズやジュピターテレコムなど、傘下の企業を使ってサブブランドを強化している。2月1日にはBIGLOBEの買収も完了しており、ソフトバンクにとっては、これらの企業もライバルになる。国内通信事業の増収増益は果たせたが、今後、競争環境は、より一層厳しくなりそうだ。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう