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1948年施行の旅館業法は前から厄介者だった? 注目すべきインバウンドビジネス「農泊」

藤田裕太郎

2017/02/10(最終更新日:2017/02/10)


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 東京五輪に向け民泊ビジネスが話題となって久しい。旅館業法などの規制がネックとなっている民泊だが、今後は“農泊”が訪日外国人増加の上でキーワードとなるかもしれない。

地方に外国人を:農漁村や文化財を活用

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by T-Hino
 2月2日に明らかとなった、政府の観光立国推進計画の改定素案。2017~2020年を対象期間とした、東京オリンピックを見据えての計画の一つだ。地域や伝統を軸に訪日外国人増加を見込んだ本案のポイントを以下にまとめる。

改定素案のポイント

  • 農村や漁村での体験型宿泊ビジネスを全国500カ所で展開
  • 古民家や古い町並みも生かした取り組み
  • 文化財を活用した観光拠点を200カ所設ける
  • 国立公園に外国人を1,000万人集客
  • 東北地方の外国人宿泊者数を年間150万人へ
  • 地域文化・食文化の発信
 こうした方針は2016年夏に発表された農林水産省の「明日の日本を支える観光ビジョン」の一部をベースにしている。この中では「滞在型農山漁村の確立」が掲げられ、訪日外国人向けの農漁村宿泊というビジョンが既に固りつつある。

 2016年の方針では、2020年までに農漁村での宿泊を全国50地域で創出するとしたが、今回の改定素案では500カ所での展開とより具体化。地方への外国人招致という大枠をより具体的な形で継承している。今後、農泊が盛り上がりを見せていく契機として期待できる。

農漁村宿泊からずれ始めた“民泊ビジネス”の軌道

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by TANAKA Juuyoh (田中十洋)
 『田舎に泊まろう!』というTV番組を覚えているだろうか。芸能人が田舎の民家を突然訪問し宿泊交渉するバラエティ番組だ。その道中や家々で、様々な波乱や感動が起こったり(起こらなかったり)する様は痛快であった。

 民泊とは本来「民家に宿泊すること」を指す。かつては民泊といえば『田舎に泊まろう!』的な、地方での暮らしや自然に触れる宿泊をイメージした人が多かったはずだ。

 実際、2000年代半ばでは、農家民宿(農業漁業を体験できるというコンセプトの民宿)が規制緩和の後押しを受けて多数開業。農村漁村の暮らしそのものを、民家に泊まって体感してもらう、という意味での民泊(農家民泊)が注目されていた。

民泊のイメージを崩したAirbnb

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出典:blog.airbnb.com
 しかし、インターネットを活用したCtoCサービスの台頭し始めてから、民泊のイメージはずれ始める。

 東京オリンピック開催に伴う宿不足の問題で、Airbnbのような民泊仲介サービスが多大な注目を集めた。こうした背景から、民泊という言葉には「都心部での観光客向けの住居の貸し借り」というイメージが定着していった。

訪日外国人の「農漁村民泊」が地域創生の鍵となるか

 一方で、一大ブームを巻き起こしたドラマ『あまちゃん』に代表されるような地方の魅力再考熱の高まりや、漫画やアニメなどの舞台となった場所を訪れるいわゆる「聖地巡礼」の文化が台頭するなど、地方への視線が集まっているという状況も多分に見られる。

 宿の問題などを抱える都心部から少しでも地方に分散して観光客を呼び込むという意味でも、民泊ビジネスのブームに乗じる形で改めて農泊がキーワード化したと考えられる。

農泊の歴史は1990年代から:安心院型グリーンツーリズム

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by BONGURI
 日本では90年代から「グリーン・ツーリズム」という言葉が地域施策の一環として取り入れられ始めた。ヨーロッパでのルーラル・ツーリズムのように、余暇を農漁村で楽しむ文化を日本にも適用しようとした動きである。

 グリーン・ツーリズムを適用しようという動きの中で規制緩和が進み、農家民泊は盛り上がりを見せた。しかし、農家民泊は旅館業法への抵触を避ける必要があった。ホテルや旅館といった宿泊施設との差別化が実際的な問題となったのだ。

旅館業法に抵触しない安心院型グリーンツーリズム

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出典:www.ajimu-gt.jp
 その対策も含めた農村民泊の全国的なモデルになったのが、大分県宇佐市安心院(あじむ)町。旅行業界では「安心院方式」と呼ばれている。

 この方式の特徴は、官民共同の事業推進体制などいくつかあるが、最も具体的なものの一つが「会員制農泊」の形式を確立したことである。

 この方式を確立するにあたって、旅館業法など各種規制の厳しい審査基準を回避する狙いがあった。

 不特定多数を対象とせず、特定の会員を泊め「謝礼」や「文化体験料」を貰うという形で旅館施設との明確な差別化を図ったのだ(並行して規制緩和も大分県に要請。2002年に全国初のグリーン・ツーリズムに特化した規制緩和がなされた)。

 また今回の改定素案に掲げられた古民家などの利用という点では、白川郷での体験型宿泊プランは面白い実践例と言える。季節に合わせて山菜摘みや稲刈りを体験、合掌造りの宿に宿泊することができる。


 今回農泊について過去の試みも参照しながら紹介した。民泊サービス同様に、規制との衝突があったものの、安心院町の成功例もあり全国的に実践する土壌は整ってきている。

 外国人観光客に向けた地方農漁村や古い町並みの魅力発信方法もまた一考の余地があるだろう。オリンピックに合わせ、農泊がインバウンド需要を取り込む有効策となるか今後注目である。

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