「月末金曜は、少し早めに仕事を終えて、ちょっと豊かな週末を楽しみませんか?」
月末金曜は午後3時に退社する「プレミアムフライデー」が2月24日にスタートする。政府が掲げる「働き方革命」の一環として進められている官民一体となったプロジェクト。同時に増えた余暇を消費に喚起する思惑もある。
実施目前になり、早めの出社を促す企業や当日に向けて様々なイベントを企画する企業も続々と出てきている。その一方でその効果に懐疑的な声も少なくない。
週末、3時に退社できることは私たちにどんな恩恵を与えてくれるのだろうか。そもそも本当に休みを増やすことは可能なのだろうか。
「月末の金曜日を豊か・幸せに過ごす」がコンセプト
「ちょっと豊かな週末を楽しみませんか?」がうたい文句のプレミアムフライデー。増えた休みで買い物なり、小旅行なりに繰り出すことができる。
公式ホームページでは、他にも昼からたっぷり遊園地などで遊ぶ「アフター3エンタメ」や家族全員で料理をゆっくり作る「午後パー」などを提唱している。
その目的は早く退社できることによる消費喚起と労働環境の是正。そのために政府は企業に積極的に導入するよう声をかけているが、実際のところ提唱する側と実施する側だと温度差があるのが現状だ。
イベント企画の企業は多くても休日実施する企業は少なめ
ある程度の盛り上がりを見せているプレミアムフライデーだが、現実には実施する企業は多いとは言えない数になっている。
公式ホームページにはプレミアムフライデーに賛同した企業の一覧が載ってあるのだが、そのほとんどが飲食や旅行代店、アパレル関係の企業。すなわち、プレミアムフライデーに乗じたイベントを行おうという企業ばかりなのだ。
もちろん、こういった取り組みも重要ではあるが、実際に導入した企業が少なければイベントの効果も望めない。
DeNAトラベルの調査では、導入済みの企業は0.8%、導入予定が1.4%、検討中が3.3%、導入予定ではないが55.5%、わからないが39.5%とごく少数の企業が実施するに過ぎない。
実施する企業の声は
実際に行う大和ハウス工業は全国の従業員に早めの退社を呼びかけている。
同社はうまくいけば来月以降の継続も視野に入れている。
プレミアムフライデーの活用方法も様々で、情報堂デザインの調査では旅行(31.5%)や買い物(7.4%)などを予定している人がいる一方、休日でゆったりと過ごす人も30.3%と多くなっている。
一方でプレミアムフライデーに向けたイベントは活発だ。ホテルニューオータニ幕張では「バブル以来の“花金”復活!」と触れ込みをし、早い時間から利用するとお得なプランを提案している。
大手航空会社のANAでは、2月24日出発限定の便の利用に限り、「プレミアムフライデークーポン」を設定するなど、顧客を取り込むイベントを企画している。
プレミアムフライデー浸透の鍵は「AI」と「パリピ」に
このように盛り上がりを見せる一方で、懐疑的な姿勢をとる企業も多いプレミアムフライデー。休みを増やすことで業務が滞ってしまうことや、そもそもプレミアムフライデーが消費の刺激につながるのかさえ疑問符をつけている企業もある。
本項ではプレミアムフライデーが企業や消費者に浸透するために必要な要素を分析していきたい。
「AI」の働き改革に期待
プレミアムフライデーを浸透させる、つまり中小企業も含めて多くの企業が導入するには、仕事効率を落とさない企業の工夫が必要だ。
先日の筆者が執筆した記事では、週休3日を実現させるためのヤフーの構想を紹介した。
休みを増やしながら効率を上げるには、重要でない作業を削減することが効果的。そのためには、インターネットが業務に密接に関わるようになった現在、必要となったメールの確認などの細かな単純作業を削減することが必須。
こうした単純作業は一つのことに集中することを妨げてしまう。そこで、期待されているのがAIだ。単純作業をAIに任せて、人は重要な作業に没頭することができる。そして作業効率が向上し、休みを設ける余裕が出てくるという寸法だ。
だが、全ての業種に応用できないという問題点もある。AIを取り入れるという工夫はIT企業などには取り入れやすいが、AIが果たせそうな役割が少ない業種ではなかなか難しい。
それでも、こういった工夫だけでなく、企業が能動的に工夫することは日本の労働環境を改善するために重要だ。政府が奨励しているから無理やり休みを増やすのではなく、プレミアムフライデーをきっかけに効率的な仕事のための環境づくりを見直すことが根本的な解決になるはずだ。
プレミアムフライデーを「パリピ」の力でブームに
by kemeko1971 プレミアムフライデー浸透のもう一つの鍵は、かつての「花金」のようなブーム化である。たとえ3時に退社しても家でくつろいでしまっては消費喚起にはつながらず、本末転倒だ。
また、日本では夜まで仕事をしてそのあと飲みに行くという文化が根付いていることもあり、金曜日のあり方を変えるブームが必要である。そのブームの火付け役として注目したいのは「パリピ」だ。
パリピとはParty Peopleの略で2015年の「ギャル流行語大賞」で1位になるほど流行した言葉。年齢層は大学生から20代半ば。なぜパリピに注目すべきかというと、彼らがハロウィンや映画「君の名は。」などの社会現象をを起こした当人であるからだ。
若者のトレンドリーダーであるパリピがの間で火がつき、それをSNSなどで拡散する。そうすると大手メディアにも取り上げられ、高い年齢層の人も関心を持ち出す。最終的には社会的な商品やサービスになるというケースが非常に多い。
パリピが流行を作り出し、その流行を企業が市場化するという流れは、イベントをブーム化させるには効果的だ。プレミアムフライデーでもパリピのような若年層をターゲットにしたPRをすると、面白い影響が期待できるかもしれない。
まだまだ見通しが明るいとは言えないプレミアムフライデーだが、働き方の是正や消費の刺激に大きな潜在能力を持っている。プレミアムフライデーの効果を最大に発揮するには、形式的に休みを取り入れたのみに終わらぬような取り組みが求められている。
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