2017年2月3日、西野亮廣氏は2作目の絵本『Zip&Candy〜ロボットたちのクリスマス〜』を自身のLINE BLOG(以下、ブログ)上に無料公開した。
先日、最新作『えんとつ町のプペル』を無料公開したことで、議論が巻き起こったのは記憶に新しい。
本記事では、今回の『Zip&Candy〜ロボットたちのクリスマス〜』無料公開の概要と議論を呼んだ『えんとつ町のプペル』無料公開の経緯を振り返ってみようと思う。
今回の無料公開はJASRACの著作権問題から発展
2017年2月2日、日本音楽著作権協会(以下、JASRAC)は指導者・生徒関わらず、音楽教室での演奏に関して、著作権料を徴収する方針を示した。
これに対し、ヤマハ音楽振興会や河合楽器製作所などは「音楽教育を守る会」を発足させ、対立する姿勢を示している。
一連の流れを受け、西野氏は自身のTwitterで以下のようなツイートをし、2月5日にはJASRACの動きについてブログ上で反応している。
ありがとうJASRAC! : キングコング 西野 公式ブログ
拝啓、JASRAC殿。 寒の入りとなり、冷気がひとしお厳しくなってきましたが、いかがお過ごしでしょうか?この度は、ヤマハや河合楽器製作所などが手がける音楽教室での演奏について著作権料を徴収する方針を固めていただき、誠にありがとうございます。今回、貴殿が固めら
全ページを無料公開
出典:www.gentosha.co.jp 西野氏はJASRACの著作権料徴収に逆行するかのごとく、自身の絵本『Zip&Candy〜ロボットたちのクリスマス〜』をブログ上で無料公開した。
今回の『Zip&Candy〜ロボットたちのクリスマス〜』で、西野氏のネット上での絵本の無料公開は2作目となる。
『Zip&Candy〜ロボットたちのクリスマス〜』の内容は、新型ロボットと性能的に記憶に限界のある旧型ロボットの恋愛物語で、感動の物語となっている。
【無料公開】『Zip&Candy ~ロボットたちのクリスマス~』 : キングコング 西野 公式ブログ
『ジップ&キャンディ ~ロボットたちのクリスマス~』絵と文 にしのあきひろ 土星の裏がわに、人とロボットがいっしょに暮らす星があります。これは、その星のクリスマスに起きた奇跡の物語。最新型ロボットの《ジップ》はご自慢の翼を広げ、今日も街の空をビュンビュン飛
きっかけは「小学生の一言」
出典: Amazon.co.jp 今回、2作目の絵本の無料公開に至ったが、初の無料公開作品『えんとつ町のプペル』はどのような流れで無料公開になったのか。西野氏のブログでの発言と共に振り返ってみよう。
『えんとつ町のプペル』が無料になったのは2017年1月19日である。その日のブログで西野氏は「お金の奴隷解放宣言。」というタイトルで絵本の無料公開についての経緯を綴っている。
ブログの中で西野氏は、きっかけとなった小学生の一言を紹介している。また、お金と絵本についての持論を述べるとともに、絵本の無料公開に対する背景を綴っている。
「立ち読み」をWEB上で
きっかけは前述の通りだが、無料公開の意図は何なのか?
大きな意図の一つは、『えんとつ町のプペル』を無料公開した日のブログのタイトルのように「お金の奴隷解放宣言」である。この意図はブログ全体で細かく表現されているため、ぜひブログを読んでいただきたい。
他にも意図はあり、西野氏は『えんとつ町のプペル』無料公開の三日後のブログで綴っている。西野氏は「本屋での立ち読みをWEB上で行う」ことも意図であったことを明かし、その上でお金を出して買いたいという人に買ってもらうという方針をとった。
お金の奴隷解放宣言。 : キングコング 西野 公式ブログ
毎度お騒がせしております。キングコング西野です。ご存知の方もいらっしゃるかとは思いますが、僕は芸人活動の傍ら、絵本作家としても活動しておりまして、3ヶ月前に発表した『えんとつ町のプペル』という作品が23万部突破というマグレ当たり。本当に皆様のおかげです。いつ
また、西野氏は子どもを持つファンの意見を参考に、絵本業界に対する持論も述べており、そこにも絵本の無料公開の意図が現れている。
Amazon、楽天ブックスの書籍ランキングで1位獲得
出典:sezonartgallery.com 『えんとつ町のプペル』の無料公開を行った翌日には、Amazon、楽天ブックスの書籍ランキングで1位を獲得した。その後も、重版が決定し、売り上げは25万部を突破している。
2017年2月5日現在もAmazon絵本ランキングでは1位をキープしている。結果的に、西野氏が行った無料公開は「WEB上での立ち読み」として活用され、販売促進につながっている。
ここからは筆者の持論であるが、西野氏の絵本の無料公開については賛成である。
西野氏はブログで「クリエイターには最初の段階で給料を支払い、本が売れた分は臨時ボーナスとしてお金を支払っている」とお金の流れについての説明をした。
世間の人々に「お金の話」をする芸能人は少ない。西野氏が行った「無料公開」はきれいごとだけで収められない物事である。あえてきれいごとにするためにお金の話をしている西野氏のビジネスとお金の関係への「筋」が見える。
また、TwitterやLINEなど無料のコンテンツがあふれている中で、世界的に「情報の無料化」が進むだろうと西野氏は考えている。
最新作『えんとつ町のプペル』を無料公開するにあたって、西野氏は無料のものと有料のものに線を引いた。具体的に言うと「無料のデータとしての絵本」と「有料の物質としての絵本」を区別したということである。
無料のデータとしての絵本を無料公開した分、絵本の立ち読みができるようになり、信頼したものを買えるようになった。さらに、有料の物質としての絵本の価値が上がったという相乗効果もある。
西野氏は情報が無料化されいくであろう将来の流れを読んで、先立って「データとしての絵本」を無料公開した。未来を見据え、時代の流れに負けないシステムを作ろうとしている。未来を見据える力は凄まじいものがあり、先駆的な取り組みをするスピードは「ビジネスマン」として2歩も3歩も素早い。
賛否両論の多かった、西野氏の絵本の無料公開。西野氏は今後も自信の作品の無料公開を進めていくらしく、オンライン上で全作品が無料で読める図書館を作ろうと計画している。
筆者は西野氏のしがらみをなくした動きとずば抜けた行動力、「未来」についての価値観に惹かれ、西野氏の独演会などイベントに顔を出している。ファンとして好感を持っているとはいえ、実際に西野氏の革新的な動きは多くの実業家も一目置き、注目するほどのものである。
西野氏はビジネスマン、芸人、絵本作家など様々な顔を持っている。すべての活動が注目され、『Discovery Japan 2月号』では空海に次ぎ、Discovery Japan史上2人目の人物特集が組まれた。今後も芸人、ビジネスマン、絵本作家など西野氏の多面的かつ革新的な動きに目が離せない。
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