1月に契約者数50万を突破し、格安スマホのシェア4位に上りつめたキャリアがある。それが、ケイ・オプティコムの運営するmineoだ。1月からはテレビCMの放映も開始。
2月からは東京・渋谷に独自のショップをオープンするなど、その勢いを加速させている。同社は関西電力グループで、関西での知名度は高いものの、全国区では知る人ぞ知る存在だ。そのmineoが、なぜここまで急速にシェアを伸ばせたのか。その戦略を紐解いていきたい。
今年1月で契約者数は50万を突破
MVNOとしては後発だったmineoが、まず取ったのは、他社との差別化戦略だ。ほとんどのMVNOがNTTドコモからネットワークを借りる中、mineoはあえてauのMVNOとしてサービスをスタートさせている。
その後、2015年にはNTTドコモからもネットワークを借り、どちらかをユーザーが自由に選べる環境を作った。同時に、無料キャンペーンを展開。これに、コアなユーザーが飛びついた格好だ。
また、一部の例外をのぞき、MVNOがネットワークを借りている会社の端末は、SIMロックがかかっていても、そのMVNOで利用することができる。
簡単に言えば、NTTドコモの端末はNTTドコモのMVNOで、auの端末はauのMVNOでも動作するということだ。VoLTE対応時にこの仕様は変わってしまったが、当時はmineoのSIMカードで、au端末をそのまま利用できた。結果として、auのユーザーは端末を変えずに、料金を下げることが可能になる。NTTドコモのユーザー以外にも、この選択肢を提供できた点も大きかった。
NTTドコモとau、両方のネットワークを借りている。発売する端末、両対応のものが多い。 コアなユーザーに支えられるmineoは、その取り組みを一歩進め、“ファン”を育成する方向に舵を切った。2015年には、ファンとmineoが交流するサイトの「マイネ王」をオープン。ここでは、ユーザーとの対話を積極的に行うだけでなく、新機能や機能改善の提案なども受けつけている。
その一部は、すでにmineoのサービスに反映されており、単なる集客だけでなく、ユーザー満足度を上げることにも貢献している。余ったデータ容量を貯めておき、ユーザー全員で分け合える「フリータンク」など、コミュニティを盛り上げる仕組みも積極的に導入した。
マイネ王を通じて、コミュニティを活性化させている。 オンラインでコアなファンを集い、それを事業に生かす戦略は、海外でも一般的だ。MVNOではイギリスのgiffgaff(ギフガフ)が、端末メーカーでは中国のXiaomi(小米)が、こうしたコミュニティ運営を行い、急成長した。
ケイ・オプティコムは、こうした方法を日本流にアレンジした。マイネ王は、ユーザーの参加率が非常に高く、アクティブユーザーは全加入者の10%に上るという。つまり、5万人程度が積極的に活用しているということだ。
一方で、コアなままで終わってしまうと、ユーザーの数も限られてくる。100万契約を目指すにあたっては、より幅広い層へのアプローチが必要になってくるはずだ。
冒頭で挙げたテレビCMや独自ショップの展開を行うのは、そのため。スマホも安心感を重視して品揃えし、訪問サポートなど、初心者向けのサービスも開始する。
訪問サポートなど、初心者向けサービスも拡充。 ただし、ユーザー層が広がると、その分コミュニティの“濃さ”は薄れてくる。実際、上記のフリータンクは、利用するユーザーが伸びすぎた結果、データ残量が枯渇しつつある。
これは、コアなユーザー同士が助け合う「持ちつ持たれつの精神」が、徐々に通じなくなってきた証拠だろう。契約者を増やしながら、コミュニティの濃度をどう保つのかが、mineoにとって腕の見せどころと言えそうだ。
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