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主役はスマホ“以外”?au 2017春モデルから見えてきた、大手キャリアだからこそできる新戦略

村元正剛

2017/01/12(最終更新日:2017/01/12)


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 KDDI(au)は、1月11日に「au 発表会 2017 Spring」を開催。スマートフォン、ケータイ、モバイルWi-Fiルーターなどの新モデルと、新しい学割サービスを発表した。

スマホ“以外”が目立ったau春モデル

 今回発表された春モデルは、スマホが3機種、ケータイが1機種、モバイルWi-Fiルーター1機種、ホームルーター1機種、そして、初めて発売する「Qua station」というストレージの計7機種。

 スマホはすでに発売中である、昨年発表の秋冬モデル4機種を補強する追加ラインナップとも言えるが、それでも“スマホが少ない発表会”という印象は否めなかった。その真意は?

1TBの写真や動画を保存できる「Qua station」

 新モデルの中で、取材陣から最も注目を浴びていたのは「Qua station」(価格未定/2月下旬発売)だ。
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 1TBのデータを保存できるストレージで、要するにNAS(ネットワークHDD)だ。NASを使いこなすには、それ相応のリテラシーが求められるが、Qua stationはauのスマホ・タブレットを使っている人なら誰でも簡単に利用できることが特徴。

 スマホで撮った写真や動画は、Wi-FiまたはUSBケーブル経由でQua stationに取り込める。ケーブルで取り込む際は、同時に充電することも可能。Qua stationには、パソコンから写真や動画などを取り込むこともでき、外出先でスマホからそれらのデータにアクセスすることもできる。

 写真は、スマホの画面で見たり、SNSでシェアしたりするのに適したサイズで読み出せて、動画や音楽はストリーミングで再生できる仕組みだ。

 AndroidとiOSのどちらにも対応し、スマホで撮った写真や動画のバックアップにも使える。最近は「Googleフォト」や「iCloudフォトライブラリ」など、画像を保存できるクラウドサービスが普及しつつあるが、「大切な写真をオンラインに保存するのは不安」と考える人も少なくない。また、使い方によっては、有料のストレージ容量へのアップグレードが必要になる。

 Qua stationは4G LTEに対応しているが、Wi-Fiでも接続できるので、自宅にWi-Fi環境がある人は、追加のデータ通信量は発生しない。月額300円(税抜)の利用料がかかるが、「Qua station おトク割」により、3年間は実質無料で使える。

 本体価格は未定だが、説明員いわく「実質負担金はほぼ無料になるはず」のとこと。Qua stationは、auのスマホ・タブレットでしか利用できないので、これを便利に活用できる人にとっては、auを利用する大きな付加価値となるだろう。

経済的に使えるホームルーターも登場!

 auとしては初めて自宅用のWi-Fiルーターも発売する。ファーウェイ製の「Speed Wi-Fi HOME」(実質負担金:0円/2月下旬発売)で、受信最大440MbpsのWiMAX 2+に対応し、4G LTEにも対応。

 auショップなどで購入して持ち帰れば、自宅のコンセントに接続するだけ。工事不要で、自宅にWi-Fi環境を作れることがセールスポイントだ。
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 モバイルデータ回線を自宅用として使うと、ランニングコストがかさむように思うかもしれないが、WiMAX 2+だけを使うのなら、データ容量無制限で月額4,380円(税抜)~のプランも用意されている。引越しの際にも、工事や事務手続きが要らないことも利点だ。

 2.4G/5GHzのi同時利用に対応し、最大40台を接続可能。といっても、実際にそんなに多くの端末をつなぐ機会はないだろうが、既存のモバイルWi-Fiルーターに比べるとアンテナの性能が高いらしく、建物内の比較的広いエリアで高速で通信できることが実証済みだと言う。
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 同じくファーウェイ製で、受信最大440MbpsのWiMAX 2+に対応するモバイルWi-Fiルーター「Speed Wi-Fi NEXT」(実質負担金:0円/2月下旬発売)も発表された。

 従来品とは一線を画する縦型デザインを採用し、スマホのように片手で持ちやすことが利点。Bluetoothでのテザリングにも対応し、バッテリー消費を抑えることも可能だ。

田中社長のイチ押しはタフネスケータイ「TORQUE」

 KDDI田中孝司社長が「今回のイチ押し」とアピールしたのは、スマホではなく、このフィーチャーホン。防水・防塵、耐衝撃など、MIL(米国国防総省の調達基準)準拠の18項目の耐久試験をクリアした、京セラ製の「TORQUE」(実質負担金:約2万円(税抜)/2月下旬発売予定)だ。
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 auは、以前、カシオ製のケータイ「G’zOne」シリーズを取り扱い、多くのファンを擁していた。しかし、2010年に発売された「G’zOne TYPE-X」以降、後継機は発売されていなかった。この「TORQUE」は、頑強なガラケーを欲する人にとっては、まさに待望の1台と言えるだろう。

 スマホ版の「TORQUE」から移植された「OUTDOOR PORTAL」というアプリがプリインストールされていて、ケータイを手にできないときに便利な読み上げ機能も搭載。大音量のブザーや、効果のほどは定かではないものの、“熊鈴”を模した音を鳴らすこともできる。

 実際に触れたみたところ、社長がレコメンドするだけのことはあり、片手でスマートに操作でき、アプリの使い勝手も良好。「LINE」もプリセットされていて、ワンタッチで起動できる。タブレットとの2台持ちなど、アウトドア派は積極的に検討すべき仕上がりだ。

スマホは個性派揃いの3モデルを追加投入

 この春商戦に向けて、ラインナップに追加されるスマホは3機種。京セラ製の「rafre」(実質負担金:2万1,600円/3月上旬発売)は、“洗えるスマホ”の第2弾。
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 前モデルは泡ハンドソープで洗えることがセールスポイントだったが、新モデルは泡ボティソープでも洗えて、温水防水にも対応。つまり、バスルームでも安心して使えるようになった。

 同じく京セラ製の「miraie f(ミライエ・フォルテ)」(実質負担金:6,480円/1月下旬発売)は、小・中学生を対象とするスマホ。
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 一見、子供向けには見えないデザインだが、年齢に合わせたフィルタリングを設定でき、保護者が利用時間などを制限したりできる端末だ。別途契約が必要だが、「ココセコム」にも対応し、利用者が防犯ブザーを鳴らした場合に、セコムに通報されて、子供
の居場所に駆けつけてくれるサービスも利用できる。

 シャープ製の「AQUOS SERIE mini」(実質負担金:1万6,200円・新規/2月上旬発売)は、4.7インチのフルHDディスプレイを搭載するコンパクトモデル。
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 高性能な21メガカメラや、フラッシュも使えてマニュアル設定も可能なインカメラも搭載。シャープ独自の音声エージェント機能「エモバー」も使えるハイエンド機だ。

“スマホだけじゃない”利用価値で大手キャリアの優位性をアピール

 auが今春発売する製品の中で、幅広い層をターゲットとするのは、最後に挙げたAQUOS SERIE miniだけだ。ほかの製品は、使う人を限定する端末だったり、すでに使っているスマホをより便利に使うための周辺機器だったりする。

 従来、春商戦は、初めてスマホ・ケータイを使う人に向けた、低価格のエントリーモデルに注力する傾向があった。しかし、ここ数年、価格重視派のユーザーは格安スマホを選択する人が増え、中学・高校生に使わせるスマホとして、Y!mobileやUQモバイルの「iPhone 5s」を選択するケースも増えている。今年は、その傾向にさらに拍車がかかることも予測される。

 auは「auの学割天国」という新しい学割サービスも発表した。
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 1回5分までの国内通話料とデータ通信料が込みで月額2,980円(税抜)~という、格安スマホ並みの料金設定を実現している。

 顧客のMVNOへの流出を阻止したいことは明らか。ほぼ無料で利用できるQua stationや、学割対象者は年内は無料で利用できる「auスマートパスプレミアム」(1月20日提供開始)など、スマホをハブにして多彩なサービスを展開できるのは、KDDIが大手キャリアだからこそ実現可能なアドバンテージと言っていいだろう。
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 総務省の指導により、大手キャリアは、スマホ自体の“安売り”が難しくなりつつある。今年は、スマホ以外の利用価値を向上させることで、格安スマホに対する優位性を強調する傾向が強まるのではないかと思う。

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