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なぜ人は差別するのか。心理学の視点から差別の仕組みを解明

日置泰治

2018/09/02(最終更新日:2018/09/02)


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なぜ人は差別するのか。心理学の視点から差別の仕組みを解明 1番目の画像
 2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏がアメリカの大統領に就任する。同氏は選挙中女性蔑視発言や人種差別的な発言を繰り返した。しかし、世論調査や各メディアの予想を覆し、クリントン候補に競り勝ったのである。

 全員とまではいわないが、人は誰しも差別的な思想を胸に秘めているものではないだろうか。しかし、その差別意識を大衆に向けて発したトランプ氏が大統領に当選したのは非常に興味深い。そこで今回は、差別にはどのような種類があるのか、また、なぜ人は差別するのかを、心理学の視点から考察していきたい。

差別の種類

 差別の種類、内容は多岐に渡るが、代表的なものを以下に3つ紹介する。

レイシズム(Racism)

 レイシズムは人種差別のことである。人種差別撤廃条約によれば、人種差別とは「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身に基づくあらゆる区別、排除、制限又は優先であって、政治的、経済的、社会的、文化的その他のあらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するもの」と定義されている。

 ナチスのユダヤ人迫害や、南アフリカ共和国におけるアパルトヘイトが代表的な人種差別として知られており、現在はヨーロッパやアメリカで移民に対する差別が問題となっている。また、日本でも在日韓国・朝鮮人に対するヘイトスピーチが物議を醸した。

セクシズム(Sexism)

 セクシズムとは性差別のことであり、性的マイノリティに対する差別も含む概念である。例えば、女性は近代以前、ほとんどの国、地域において参政権が認められておらず、現在でも国によっては女性の教育を受ける権利や参政権は著しく制限されている。

 日本は女性の社会進出が遅れているといわれており、社会的な性差(ジェンダー)やアファーマティブアクション(積極的格差是正措置)に関する議論の活発化が求められる。

エイジズム(Ageism)

 エイジズム(高齢者差別)とは、高齢であることを理由に様々なステレオタイプと結びつけられ、それにより引き起こされる高齢者への偏見や差別のことを指す。知識が豊富である、親切であるといった肯定的な偏見もあるが、一般的には、病気がち、孤独といった否定的なステレオタイプと結び付けられることが多い。

 刑務所が老人ホーム化しているといわれるほど少子高齢化が進む日本においては、特に対策が必要な分野である。

差別の要因

 「差別はよくない」ということは、恐らく誰もが共通認識として持っているはずである。それにも関わらず、なぜ人は差別してしまうのだろうか。ここでは差別の要因となる人間の特質を2つ挙げる。

スケープゴート理論

 スケープゴートは生贄、あるいは身代わりといった意味をもつ。以下に大阪大学の釘原直樹氏の論文を引用する。

スケープゴーティングとは、何らかのネガティブな事象が生起、あるいは生起が予見されている際に、事態発生や拡大・悪化に関する因果関係・責任主体が不明確な段階で、原因や責任をある対象に帰属したり、その対象を非難することが、一定の集合的広がりをもって行われることである。また因果関係の枠外にある対象に対する責任帰属や非難、そしてそのような認知や行為が共有化されていくプロセスもスケープゴーティングに含める。このスケープゴーティングにおいて、対象となるものをスケープゴートと呼ぶ。

出典:スケープゴーティング現象の定義とメカニズム - Osaka University
 強い集団や他者に抑圧されるなどして不満・不快感が溜まると、スケープゴートにできる弱者に対する差別が生まれるのである。

内集団バイアス

 青山学院大学の横田晋大氏(引用論文執筆当時は北海道大学)、北海道大学の結城雅樹氏共著の論文によれば、内集団バイアスとは、自分の所属する内集団に好意的な態度や行動をとる一方で,自分が所属しない外集団には非好意的な態度や行動をとる傾向のことである。

 内集団の価値を外集団より高くすることにより、自分自身の価値を高め、自尊心を満たすことを試みていると考えられる。

 内集団バイアスは、例えば集団間で競争意識を生み出すというメリットもあるが、行き過ぎると、他者を差別し、攻撃することにもつながりかねない。

差別を解消するためには

 差別が生まれる原因として、弱者を犠牲にすることで不満を解消しようとすること、外集団を貶めることで自身の価値を上げようとすることを紹介した。では、差別を解消するためには何が必要なのだろうか。

 大切なことは、恐らく、個人単位で人をみることだと思われる。国籍、性別、年齢などはアイデンティティを構成する一部に過ぎない。どのような集団に所属しているかもまた然りである。

 また、自身の立場を省みるという点においても、集団に囚われ過ぎないことが大切だと思われる。例えば、オリンピックで日本人が金メダルを取れば、私達は誇らしい気持ちになるかもしれない。しかし、その功績は選手達のものであり、私達自身は偉くもなんともないのだ。


 自尊心を維持、あるいは高めるために他者や外集団を差別するのは人の性なのかもしれない。しかし、それが如何に虚しい行為であるかは少し考えれば分かるはずである。彼の大国は果たしてどのような道を進むのだろうか。


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