コンパクトなボディながら最大7人が乗車可能な室内空間を持ち、2008年の初代モデル発売以来、高い人気を維持してきたホンダ「フリード」。
2016年9月にフルモデルチェンジを行い、2代目へと進化したが、8年という長いモデルチェンジスパンからもその人気の高さが伺える。新型も発売後1カ月で販売計画台数6,000台の4倍を超える2万7,000台を受注。代替わりしても変わらぬ人気を証明している。
その現行のモデルに試乗することができたので、高い支持を集める理由を探ってみよう。
車中泊も快適にできる「フリード+」
2代目モデルには3列シートで6/7人乗りの「フリード」と、2列シートで5人乗りとすることでユーティリティスペースを拡大した「フリード+(プラス)」の2種類がラインナップされる。
パワートレインは1.5Lの直噴4気筒ガソリンエンジンにCVTの組み合わせと、1.5L4気筒エンジン+「スポーツハイブリッド i-DCD」を組み込んだ7速DCT(デュアルクラッチトランスミッション)の2種類。ハイブリッドモデルは27.2km/Lという低燃費を実現する。駆動方式はFFと4WDの2種類が選択可能だ。
今回試乗したのは「フリード+」のハイブリッドモデル。世界初の重希土類(レアアース)を全く使わないモーターを採用していることも話題となったパワーユニットを搭載している。
リアシートは大人3人が余裕を持って座れる広さがあり、ハイブリッド用のバッテリーを前席のシート下に収納したことで足元のスペースも広大。
そして、ダブルフォールダウン機構を採用したリアシートを折り畳むと、フルフラットなスペースを作り出すことが可能だ。
最近、需要が高まっている車中泊にも対応した仕様で、セミダブルサイズのマットレスを敷き詰めることができる空間を確保している。実際に車中泊も試してみたが、シートの凹凸がないため快適に寝ることができた。
前モデルの「フリードスパイク」から185mmも低床化されており、フラットなスペースの下に荷物を収納することも可能。
リアゲートの開口部は335mmも確保されているので、縦長の荷物や自転車なども余裕で積むことができる。ゴルフバッグなら縦に4つ積めるというから驚きだ。ここまで来ると、クルマというよりスペースを買うという気分になってくるほどだ。
意外なほどの走りの良さもポイント
ユーティリティスペースの広さに注目が集まりがちだが、実際にドライブしてみると意外なほどに走行性能も高い。
ハイブリッド車というとスタート時はモーターだけで走行するため静かだが、加速は穏やかというイメージがあるが、このクルマは動き出しから積極的にエンジンをかける設計。そのおかげで、アクセルを踏んだ際の加速が機敏で、街中をキビキビ走れるのが気持ちいい。
そして特筆すべきなのはボディの骨格(シャシー)が非常にしっかりしていること。ピシッと芯が通ったような剛性感があるため、コーナーリングが安定しているのはもちろん、高速道路などでの直進安定性、そしてブレーキング時の姿勢もブレることがない。
コンパクトミニバンで、ここまで剛性の高い車体は輸入車も含めてちょっと記憶にないぐらいの安定感だ。
ドライバーズシートからの視界が良いのも好印象。フロントウィンドウが広く、開放感があるだけでなく、車体の見切りが良いので狭い路地などでも運転しやすい。ハンドル位置よりもだいぶ奥に設置されたメーター類も視線の移動が少なくて済むため、視界の良さに一役買ってくれているようだ。
家族で乗ることを考えると車内は広く大人数が乗れるほうがいいが、普段の使い勝手を考慮するとあまりサイズは大きくないほうがいい。そんな良くあるニーズに「フリード」は非常によくマッチしている。
近年、特に都市部では“クルマ離れ”の進行が指摘されるが、確かに公共交通機関の充実した都内などでは、単なる移動手段と考えるとクルマは割高な存在だ。
ただ、ここまで広大なスペースが確保されていると、もはやコンパクトカーとはいえ“部屋”に近い。自宅に1部屋付け足すようなイメージで使えるのであれば、クルマも決して割高とは言えないだろう。
なにしろ、その1部屋はそのまま好きな場所に移動できるのだ。今回「フリード+」に試乗し、車中泊なども試してみて、このクルマが売れる理由はそんなところにあるのだろうと感じた。
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