2016年も、残すところあとわずか。ドックイヤー以上の速さと言われることもあるモバイル業界には、今年もさまざまなニュースがあった。
ここでは、筆者が2016年の10大ニュースをピックアップ。まとめて見ることで、業界全体が向かう方向性も分かるはずだ。
【NO.1】大容量プランが3キャリアから登場し、データ通信の単価は大幅ダウン
iPhone 7、7 Plusの登場に合わせ、ソフトバンクが20GB、30GBのデータプラン「ギガモンスター」を発表。au、ドコモもこれに追随し、3キャリアとも大容量プランを扱うことになった。
20GBは、各社の5GBプランから1,000円高いだけで、事実上、データ通信の単価は大きく下落した。一方で、トータルの料金は1,000円上がることになり、キャリアにとってはARPU(1ユーザーからの平均利用額)が上がるメリットがある。
【NO.2】実質0円禁止でスマホの価格がアップ、販売にも急ブレーキが
総務省が4月に施行したガイドラインによって、スマホの「実質0円」販売が禁止された。最低価格を巡る綱引きが続いていたが、iPhone発売前後に配布したクーポンなどまで問題視され、大手キャリア3社はそれぞれ行政指導を受けている。
11月にはガイドラインの改定案が発表。2年前に発売された同等機種の下取り価格に実質価格の下限を合わせるなど、従来以上に厳しい方針が示された。これによって、スマホの販売にもブレーキがかかり、大手キャリアの端末販売台数は軒並み減少した。
総務省の方針で、実質0円が禁止に。ガイドラインが改正され、来年はさらに値上がりする可能性も出てきた。【NO.3】iPhone 7、7 PlusがまさかのFeliCa対応、Suicaも提供
デザインこそマイナーチェンジにとどまったiPhone 7、7 Plusだが、日本市場ではFeliCaへの対応という大きな変化があった。iD、QUICPayだけでなく、Suicaも利用でき、それらをApple PayとしてWalletアプリに格納できる。
おサイフケータイが伸び悩みを見せる中、モバイル端末での非接触決済を広げる起爆剤になると注目を集めた。一方で、開始当初はSuicaがサーバーダウンを起こすなどのトラブルも。利用できる電子マネーの種類が少なく、楽天Edyやnanaco、WAONが使えないなど、今後の課題も残る。
iPhone 7、7 Plusが初めてFeliCaに対応。Suicaも利用可能に。【NO.4】脱・格安スマホ、SIMフリースマホでハイエンド化が進む
MVNOのユーザー層が拡大するにつれ、合わせて利用するSIMフリースマホに対するニーズが多様化した。
その結果、ファーウェイやASUS、FREETEL、モトローラなど、SIMフリースマホを取り扱うメーカーが、相次いでハイエンドモデルを発売。単に販売を始めただけでなく、ヒットに結びついている商品も登場した。
例えば、ファーウェイの「P9」はデュアルカメラが受け、SIMフリースマホの販売ランキングでは上位に顔を出すように。
【NO.5】MVNOでセットプランが増加、ユーザー層も広がる
ソフトバンクのサブブランドであるワイモバイルが急成長している。これに対抗する形で、大手MVNO各社は、回線と端末をセットにしたプランを続々と投入した。
KDDI傘下のUQ mobileは、「ぴったりプラン」を導入。端末にも「マンスリー割」をつけ、ユーザーがMVNOに移りやすい環境を整えている。楽天モバイルも、「コミコミプラン」を導入した。同様に、FREETELも「スマートコミコミ」を発表。大手キャリアに近い形でスマホを買うスタイルが、MVNOでも一般化しつつある。
端末と通信料を一体にしたプランが、続々と導入された。写真はFREETELの「スマートコミコミ」。【NO.6】LINEがまさかのMVNO参入、LINE MOBILEが始動
国内メッセンジャーアプリ最大手のLINEが、LINE MOBILEとしてMVNO事業に参入した。売りとなるのは、「LINEフリー」「コミュニケーションフリー」。海外では「ゼロレーティング」などと呼ばれ、特定のアプリの通信がデータ使用量にカウントされない仕組みのことを指す。
LINEフリーはLINEの通信が、コミュニケーションフリーはLINE、Twitter、Facebook、Instagramが対象となる。現状はまだネット販売のみだが、販路を広げる計画も。楽天モバイルなど、ブランド力の高いMVNOが伸びているだけに、注目の1社と言える。
LINEがMVNOに参入。LINE MOBILEとして、サービスを開始した。【NO.7】Googleがオリジナルスマホ「Pixel」を発売、AI色を打ち出す
これまでNexusシリーズを手がけてきたGoogleが、その取り組みを一歩進め、オリジナルスマホの「Pixel」を米国などで発売した。製造はHTCが担当するが、デザインや設計などはGoogleが行う。
特徴は、Googleのサービスと密接に連動していること。「Googleアシスタント」を搭載し、自然に話しかけるだけでユーザーの言葉を解析し、最適な結果を返してくれる。言葉を端末が理解できるのは、人工知能(AI)を介しているため。Googleの注力分野を、モノとして表したのがPixelと言えるだろう。日本上陸も、待ち遠しい。
【NO.8】日本通信がMVNO事業をU-NEXTと共同運営に、MVNOの明暗
“格安スマホブーム”を受け、拡大を続けるMVNOだが、優勝劣敗も進んでいる。大手MVNOが大幅に契約者数を増やす一方、参入した会社の数は500を超えており、レッドオーシャン化が進んでいる。
老舗MVNOの日本通信も、個人向けのMVNOからMVNOを支援するMVNEに業態をシフトしていた。そんな中、同社は、MVNO事業をU-NEXTに譲渡すると発表。最終的には、日本通信とU-NEXTの共同運営という形で決着したが、今後、個人向け事業をたたむMVNOが増えてきても不思議ではなさそうだ。
MVNE事業に集中していく方針を示した日本通信。【NO.9】ドコモとIIJが加入者管理機能の開放に合意、MVNOの多様化が進む?
NTTドコモと個人向けMVNO最大手のIIJが、「HSS/HLR」と呼ばれる加入者管理機能の開放に合意した。加入者管理機能とは、ユーザーがどの交換機と通信しているのかをまとめるデータベースのこと。
これをMVNO側のIIJが持てるようになるというのが、NTTドコモとの合意の中身だ。加入者情報を持つことで、MVNOは独自のSIMカードを発行できる。複数社の回線を束ねて提供したり、ソフトウェアで書き換え可能なSIMカードを発行したりと、MVNOビジネスの幅が広がる可能性がある。IIJは、2018年度中に法人向けのサービスを開始する予定だ。
【NO.10】日本、グローバルともにファーウェイが躍進、世界第3位につける
グローバルで見ると、スマホのシェア1位はサムスン電子、2位はアップルで、ここ数年動いていないが、3位は“団子レース”状態だった。ここから頭1つ抜けたのが、中国メーカーのファーウェイ。
2015年にはシェア3位につけ、2016年も徐々にその存在感を上げている。同社はまずアップルを抜くことを宣言しており、実際にシェアの差も縮まっている。
米調査会社Gartnerによると、2016年第3四半期はアップルが11.5%とシェアを落としながら2位を守ったのに対し、ファーウェイは1%シェアを上げた8.7%と、追い上げをかけている。製品力も向上しており、日本でもBCNの調査でシェア4位に浮上。2017年は、さらなる躍進を遂げる可能性もありそうだ。
急成長するファーウェイ。写真は12月に日本で発売された「Mate 9」。 U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう