人工知能(AI)が発展していく中で、人間の生命や存在意義を見直す倫理的問題が出てきた。人間の生すらも人間が作った機械や技術で操作できる時代になりつつあり、それによって恩恵を受ける一方、危険な側面を生み出す可能性も示唆されている。
例えば、人間社会とAIを描く『サロゲート』のような映画も出てきている。今回は、観客の意志によって人物の人生を編集できるという概念をエンターテインメント演出の方法に取り入れた『Late Shift(レイトシフト)』に迫る。
ストーリーの結末は観客次第!『Late Shift』
出典:lateshift-movie.com 2017年3月に英国でリリースが予定されている「Late Shift」。観客はスマートフォンで映画と連動するアプリを開き、主人公の行動を選択肢の中から決めていく。
選択の操作は観客の持つアプリから
出典:lateshift-movie.com ストーリーの筋書きを決める選択肢の重要度は様々である。選択によって映画の長さも2〜4時間の幅で代わり、それ以上になることもあるそうだ。選択肢はストーリーが進むとその都度、端末のアプリに表示されタップして選択できるようになっている。
この映画の醍醐味は、なんといっても自分たちにしか生まれない冒険が選択を通して経験できるという点だ。観客によって物語の行方が左右されるので、地域や国によっても様々な結末を迎えることだろう。
観客参加型!新しいエンターテインメントの在り方
ライブや演劇といったエンターテインメントで観客が演出の一役を担っている作品は多々ある。しかし、観客が舞台上の作品自体を創作していくこの映画のような形は新しい。
観客参加型の元祖は『ロッキー・ホラー・ショー』?
アメリカで始まったミッドナイト・シアターでこの作品の新しい楽しみ方が生まれた。それは観客が映画の登場人物のコスプレをして、映画の登場人物と一緒に踊り騒いで盛り上がるというものだ。観客自身が映画のストーリーを体験しながら鑑賞する最初の形となった。
「こうだったらいいのに!」観客の意見を取り入れる映画
『Late Shift』は、観客参加型の中でも作品のストーリー自体を観客に委ねている。観客が面白いと感じる方向へと連れて行ってくれるので、観客の望む意見を存分に活かした作品といえよう。
また、観客が選択するたびに主人公の心情が揺さぶられるので観客が映画の中の主人公に入り込みやすく、まるで自分の鏡のように主人公が動いてくれている感覚は臨場感を生む。
日常では経験できないことをも選択によっては出来てしまう。例えば、拳銃を向けた男をどのように対処すればいいかといった選択肢である。とてもスリルがあって、ゲーム感覚で楽しむことが出来る。
まるで現実!2度同じストーリーを観せない冒険映画
出典:lateshift-movie.com 映画館に行って、同じ作品を複数回観ることはあまり多くないだろう。『Late Shift』は何回みても結末が変わるので同じ映画でも毎回違う体験をすることができる。逆に取れば、同じ物語を観る可能性は低いのでその時・その場所でしか観ることができない唯一の体験が得られる。
今回は、世界初インタラクティブなシネマ『Late Shift』を取り上げた。近年、観客は受け身ではなく能動的に作品に参加し、観客が作品の登場人物を体験するという点に主眼が置かれた映画が増えている。
この映画は主人公の人生をボタン1つで変えられる世界が経験できる先駆けの作品となるかもしれない。是非、この新しい感覚を持ち合わせた『Late Shift』を体験してほしい。
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