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信用情報は共有する時代へ:ビットコイン始め仮想通貨の中核技術「ブロックチェーン」の応用

Tessei Kameyama

2016/12/14(最終更新日:2016/12/14)


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by btckeychain
 ビットコインを始めとする仮想通貨を支える中核技術が「ブロックチェーン」だ。フィンテックの発展・活用が叫ばれる今、ブロックチェーンも金融業界を変える技術の一つとして注目を集めている。

 そんなブロックチェーンを他の産業でも活用しようという動きが強まっている。国産のブロックチェーンシステムである「mijin」は金融に限らない、汎用的な分散型データベースとして用いられるように開発されている。

 仮想通貨の技術を金融以外に使うことに疑問を覚えるかもしれない。確かに、仮想通貨のイメージが先行するあまり、非金融への応用はやや出遅れているといわざるを得ない。

 だが考えてみてほしい。通貨の価値は信用によって支えられていることを。そしてブロックチェーンは信用を管理するための革新的な技術なのだ。

ブロックチェーンの仕組み:何が革新的なのか?

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 ブロックチェーンは情報技術における最先端の分野であり、世界各国の研究機関がその可能性について研究を進めている。

 そのため、ブロックチェーン自体をとてつもなく複雑な技術だと考えてしまうかもしれない。だが、要点を紐解いていけばそう身構えるような技術でないこともわかるはずだ。キーワードは「連続性」「ハッシュ化」、そして「分散」だ。

連続して記録することで正当性を保証

 ブロックチェーンを構成するのは「ブロック」と「ノード」だ。一つ一つの取引情報をブロックとしてまとめ、そのブロック同士が取引の時系列でつながることでどのように取引が行われたかを記録している。一連の取引情報はブロックチェーンの利用者各々に同一のノードとして記録される。このようにして、中央管理者を置かずに情報の記録を行っている。

 ここで重要なのは、各取引が連続して記録される点だ。連続して記録されているため、一部分を改ざんしても前後の取引から容易に異常が検知できる。しかもこれらの記録は全てのブロックチェーンの利用者が共有している。これにより、ブロックチェーンの利用者は過去の取引を参照することができ、自身の取引の正当性や、改ざんされた取引の異常性を主張することができるのだ。

連続データをハッシュ化して改ざんを阻止

 連続性によってデータが守られていることはわかった。だが、なぜ連続して記録することで改ざんを防げるのだろうか? それは各ブロックのデータ構造に秘密がある。

 実は、ブロックが保持しているデータは取引情報だけではない。前のブロックのデータのハッシュ値を含んでいるのだ。ハッシュ値とはあるデータに一定の計算を行って求められる固定長の値のこと。

 ハッシュ値には規則性が無く、ハッシュ値から元のデータを推測することは極めて困難である。また、元のデータをほんのわずかに変えただけでもハッシュ値は大きく変化する。この性質が改ざん防止に利用されている。

 あるブロックを改ざんすると、当然ブロックのハッシュ値も変化する。よってそのブロックに連なるブロックも改ざんしなければ不正が明らかになってしまう。つまり、一つのブロックを改ざんするために、それに連なる大量のブロックも改ざんしなければならないのだ。そのためには現実的でない規模の計算能力が必要になるため、事実上改ざんが不可能となっている。

分散して記録することで管理者不要のセキュリティを実現

 ハッシュ値を利用したセキュリティが堅牢であることはわかった。しかし、新たなデータを追加する際に偽のデータを入れられたらどうなるだろうか? また、データの管理者が不正をしたら、それを検知できるのだろうか?

 このような問題に対し、ブロックチェーンではノードを分散して記録することで対処している。ノードに新たなブロックが追加される場合、即座に追加されるのではなく、一定以上の長さになってから正式に追加される。ここで複数のブロックが同時に追加された場合は最長となったブロックが正式に追加される。

 ここで分散型であることが活きてくる。つまり、改ざんされたブロックを最長にするには他の利用者全てを上回る計算能力が必要になるのだ。改ざん者の計算能力が半数未満の場合、他の利用者が記録する正当なブロックの方が速く伸びるため、不正なブロックを記録することはできない。単独で過半数もの計算能力を確保し、不正で利益を得ることは現実的でないため、結果としてデータは守られている。

 また、ノードごとに記録されたデータに差異があった場合、多数決的に正しいデータが決定される。つまり、データを改ざんするには自分以外のノードの過半数を改ざんしなければならない。これも現実的でないため、データの安全性は保障されている。

ブロックチェーンの応用事例

 集団の合意によってデータの正当性を確保するのがブロックチェーンだ。この性質によりビットコインが実現したわけだが、技術自体は仮想通貨に依存するものではないことに気付いただろうか。実際に仮想通貨とは無縁の分野でもブロックチェーンは利用され初めているのだ。

権利の正当性を保証

 セキュリティが堅牢でデータが共有されるというブロックチェーンの性質を活かし、所有権などをブロックチェーンで管理する試みがある。「Skuchain」はそんな取り組みの一つだ。
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出典:www.skuchain.com
 従来紙媒体で行われてきた取引の契約は仲介業者や法律関係の処理のため大変時間のかかるものだった。これをブロックチェーンを用いた取引システムを提供することで、商取引にかかるコストを削減しようとしている。

 製品の引き渡しや代金の支払いに係る権利関係の処理が簡潔に行われるようになるのだ。取引の正当性はシステムを利用する全ての業者が保証することになる。
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出典:www.skuchain.com

IoTへの活用

 IoTで利用する通信システムにブロックチェーンを利用する動きが強まっている。あらゆるモノがインターネットと接続されているとなると、従来の集中型の管理システムではデータの相互利用やコスト、セキュリティの面においても問題が多く発生する。これを解決するためにブロックチェーンを利用しよう、ということだ。

 IBMが発表した「Device democracy」の中でもIoTにおけるブロックチェーン技術の重要性について触れられている。IoT活用の潮流が止まらない以上、ブロックチェーンが活用される場面は増え続けるだろう。

ブロックチェーン普及への課題

 ここまで多くのメリットがブロックチェーンにはあることがわかった。にも関わらずブロックチェーン活用はあまり進んでいないのが現状だ。ブロックチェーンが抱える問題点とはどのようなものだろうか?

仕組み上取引完了に時間がかかる

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by Gabriele Diwald
 ブロックチェーンでは新たな取引をブロックに追加したとしても即座に承認されるわけではない。ブロックを作るだけでもある程度の計算を必要とし、ブロックが作られたとしてもセキュリティ上一定以上の長さにならない限りは取引が確定しない。つまり、リアルタイムでの取引が求められる場面ではうまく活用できないのだ。

取引量に制限がある

 新たなブロックを追加するのに時間がかかることで生まれるデメリットがもう一つある。それは時間当たりに取引可能な量が設定されていることだ。例えばビットコインでは一秒あたりに7回程度しか取引を処理できなかった。

 これはブロックサイズ問題と呼ばれるものに起因しており、安易な調整ではネットワークの負荷が高まってしまうため改善策が議論されていた。

 現在はブロックサイズを引き上げて取引上限を緩和したそうだが、取引が活発化すれば再び同様の問題に直面してしまう。そして取引量に限りがあることは大規模でリアルタイムな商取引を行う際には致命的になってしまう。


 即応性が求められる場面ではまだまだブロックチェーンの活用は厳しいものがある。だが、産業のソフトウェア化やIoTの流行によりブロックチェーンが活躍する基盤は確実に固まってきている。オンラインでのあらゆる取引がブロックチェーンを利用する日も遠くないかもしれない。

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