2016年4月、九州を襲った熊本地震。熊本地震では多くの住宅が全壊判定を受け、東日本大震災に次ぐ、2番目に多い保険金2,724億円が支払われた。
東日本大震災後、2014年7月に値上げをした地震保険。実は、地震保険が2017年1月から再び値上がりすることが決定している。値上げまで1カ月を切った「地震保険」について、今改めて考えてみたい。
知っているようで知らない「地震保険」
災害保険や地震保険……言葉はよく耳にするが、保険の概要を理解していない人は少なくないはず。まずは地震保険が、どんな保険なのかについて見ていきたい。
財務省が定めている地震保険の概要は以下の通りだ。
地震保険の概要
- 地震・噴火、またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没、流失による損害を補償する地震災害専用の保険
- 火災保険では、地震を原因とする火災による損害、延焼・拡大した損害は補償されない
- 地震保険は、火災保険に付帯する方式での契約になる
地震保険は、政府と損害保険会社が共同で運営している。そのため、保険料はどこの保険会社でも同じ額になっている。しかし、どの損害保険会社の保険に加入したとしても、地震保険に加入できるわけではないので注意してほしい。
地震保険は火災保険の「オプション」という立ち位置
以上、地震保険は火災保険で補いきれない地震による損害を補償する保険ということだ。火災保険のオプションという位置づけだが、実際に災害に見舞われた被災地では、地震保険への加入・未加入で震災後の生活が大きく異なりそうだ。
保険金の支払額が決まる基準
地震保険では、保険の対象となっている建物や家財が受けたダメージの大きさによって保険金が支払われる。
ダメージ区分は、「全損」「半損」「一部損」の3区分。それぞれの区分の基準と支払額について見てみよう。
住宅損壊レベルの基準とそれぞれの保険金額
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【全損:契約金額の100%】
①主要構造部(土台、柱、壁、屋根など)の損害額が、時価の50%以上の損害
②消失、流失した部分の床面積が、延床面積の70%以上の損害 -
【半損:契約金額の50%】
①主要構造部の損害額が、時価の20%以上50%未満の損害
②消失、流失した部分の床面積が、延床面積の20%以上70%未満の損害 -
【一部損:契約金額の5%】
①主要構造部の損害額が時価の3%以上20%未満の損害
②建物が床上浸水、地盤面より45㎝を超える浸水を受けたとき
上記の他にも、自動車や1つ30万円を超える貴金属、宝石、美術品を除く家財が損害を受けた際にも、保険が適用される。
損害額が家財の時価80%以上は全損、30%以上80%未満は半損、10%以上30%未満は一部損となる。
保険料を値上げする地域と値下げする地域の違い
地震保険の保険料は家の構造、都道府県によって金額が異なる。改定前は岩手県、山形県、福島県などの6,500円が最低額。東京都、静岡県、愛知県などの20,200円が最高額となっている。
都道府県によって金額が異なる理由は、「被害予測のシミュレーション」で危険度を計算したものを基準にしているからだ。
被害予測のシミュレーションの結果が変化すれば、保険料も変動することになる。今回の保険料の値上げは、東海、東南海、首都圏直下などの巨大地震のリスクをより問題視した結果、決定したことなのだ。
10%以上保険料が上がった地域と、逆に保険料が下がった地域を見てみたい。
保険料が上がった都道府県
- 【10%以上増】宮城/福島/茨城/埼玉/千葉/東京/神奈川/山梨/静岡/徳島/香川/高知/大分/宮崎/沖縄
- 【10%以下の増】岩手/秋田/山形/栃木/群馬/富山/石川/福井/長野/滋賀/鳥取/島根/岡山/広島/山口/愛媛/福岡/佐賀/長崎/熊本/鹿児島
保険料が下がった都道府県
- 北海道/青森/新潟/岐阜/愛知/三重/京都/大阪/兵庫/奈良/和歌山
保険料が大幅に上がった地域は、36都県。値下がりしたのは11道府県だ。10%以上の値上がりをした地域は、いずれも南海トラフや首都直下型地震での被害が予想される地域ばかり。
値下がりした地域も、地震の脅威がなくなったわけではない。和歌山県は南海トラフ地震の被害想定で、約8万人が死亡する恐れがあるとされている。引き続き、注意が必要なのだ。
今回の保険料の値上げは、2017年から2021年の間に段階的に行われる保険料の値上げの第一歩に過ぎない。全国平均では約19%引き上げる予定だが、埼玉、茨城、高知、徳島は50%の値上げが予定されている。
変更内容は保険料だけではない
また、保険料だけでなく、地震保険の内容も変更される。先ほど説明した住宅損壊のレベル分けも細かくなる。2017年1月からは、「半壊」の損害レベルを2つに細分化し、全部で4区分となるのだ。昨今の大きな震災を受けての変更であることがうかがえる。
新しい住宅損壊レベルの区分
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【大半損:契約金額の60%】
主要構造部の損害額が時価の40~50%未満の損害 -
【小半損:契約金額の30%】
主要構造部の損害額が時価の20~40%未満の損害
首都直下型地震、南海トラフ地震…起こり得る大地震への対策
地震保険の概要と、年始からスタートする地震保険の値上げについて触れてきたが、地震保険に入るべき人とは、どんな人のことを指すのだろうか。
まずは、一戸建てのマイホームを購入し、住宅ローンの返済がまだ残っている人だ。震災によって家が壊れた場合、ローンの返済をしながら新しい住居の家賃を払うという二重苦が待ち受けているのだ。地震保険に入っていたほうが良い。
上記のことは、分譲マンションの人にもいえる。ローンを完済している人と貯蓄が十分な人であれば、大地震が起きても再び住む場所を見つけることが可能かもしれない。家に住めない状態が長く続くことを避けるためにも、金銭的に余裕がない分譲マンション購入者も加入した方が良いだろう。
上記のいずれにも該当しない人も、他人事だと思わないでほしい。賃貸住まいの人も、家財の全てを失うとなるとそれなりの負担がかかる。保険料を支払う余裕があって、1つ30万円を超える贅沢品などではない大切な家財がある人は加入することを検討してみてほしい。
以上、地震保険について紹介した。2016年のうちに5年契約をしておけば、1割安になるといわれる地震保険。今回の値上げも、首都圏や東海地方の震災リスクが見直された結果のことだ。
現在、5年に1度くらいのペースで日本列島を襲う大地震。年が変わる前に自分のライフプランを見直し、地震保険の必要性を考えてみてほしい。
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