ブラジル1部リーグのサッカーチーム・シャペコエンセのメンバーらが搭乗した飛行機、ラミア航空2933便が2016年11月28日、コロンビアのメデジン近郊で墜落する航空事故が起きた。
監督を務めていたカイオ・ジュニオール氏を始め、Jリーグでプレーした経験を持つ選手が多く搭乗したこともあり、日本国内のサッカーファンからも多くの悲しみの声が上がっている。最も安全な乗り物と言われる飛行機の墜落は、何故起こったのだろうか?
ブラジルサッカーチームを乗せた飛行機が墜落:死者は71人
墜落した旅客機は、ボリビアを離陸してコロンビアのメデジンへ向かっていたとみられていて、コロンビアのメデジン近郊にあたるアンティオキア県の東部に墜落。
当初は、この事故により75人が死亡したと地元警察や報道機関により伝えられたが、のちに搭乗者名簿のうち4人が実際には搭乗していなかったことが判明し、死者71人・生存者6人に修正された。
シャペコエンセがコパ・スダメリカーナと呼ばれる南米サッカーのクラブトーナメントの決勝1stレグへ向かうためチャーターした便だったこともあり、世界中のサッカーファンに大きな衝撃を与えた事件となった(決勝戦が延期となり、シャペコエンセの優勝が決定)。
事故原因は“ずさんな飛行計画”?
ラミア航空のライセンスは既に停止しており、事故原因については現在調査が進められている状況だ。ブラックボックスの解析も完了していないものの、墜落の直接的な原因が航空機の燃料不足であることが判明しており、チャーター機の安全性に問題があったのではないかという報道がされている。
飛行時間の計画が短すぎる、といった問題点も指摘されており飛行計画が法律に違反していたことが事実であれば、危険な飛行で多くの命が失われた「人災」ということになり、サッカー界に限らず、世界全体でチャーター機の見直しが行われることは間違いない。
日本サッカー界からも多くの悲しみの声が
搭乗者にJリーグでのプレー経験があった選手がいたことや、コパ・スダメリカーナの優勝チームは日本で開催されるスルガ銀行杯に参加する予定だったこともあり、Jリーグのクラブからも哀悼のコメントが寄せられている。
また、元日本代表で川崎フロンターレに所属する大久保嘉人選手が公式ブログで発表した「未だに信じられません。一緒に闘った仲間がチャーター機墜落事故の犠牲になるなんて本当に残念で悲しいです」というコメントを始め、 ともにプレーした日本人選手からも多くの悲しみの声が寄せられている。
過去の飛行機事故と、日本の航空会社の対策
日本航空123便墜落事故
航空事故というと、日航機墜落を思い浮かべる人は非常に多いだろう。乗員乗客524名のうち死亡者数は520名、生存者は4名という、日本史上に残る航空事故である。
死者数は日本国内で発生した航空機事故では最多であり、墜落事故および単独機の航空事故でも世界最多。日本の航空会社の安全基準が大幅に強化されるきっかけとなった事故であり、この事故日本国内で飛行機墜落事故は起きていない。
ジャーマンウイングス9525便墜落事故
2015年3月24日にバルセロナからドイツのデュッセルドルフに向けて飛行していたドイツの格安航空会社、ジャーマンウイングスの定期便がフランス南東部のアルプ=ド=オート=プロヴァンス県に墜落した航空事故は近年でも代表的な航空事故の例だろう。
この事故を受けて、欧米の航空会社はコックピットの人員管理を全面的に見直すなど、近年の航空会社の安全面が大幅に改善される一因となった事故だと言えるだろう。
テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故
テネリフェ空港ジャンボ機衝突事故は、1977年3月27日、スペイン領カナリア諸島のテネリフェ島にあるテネリフェ空港の滑走路上で2機のボーイング747型機同士が衝突し、乗客乗員のうち合わせて583人が死亡した事故の通称である。死者数の多さなどから「テネリフェの悲劇」とも呼ばれている。
生存者は乗客54人と乗員7人と非常に少なく、死者数においては史上最悪の航空事故。ここまで死者数が出てしまった原因の一つとして、燃料が大量に残っていたことが挙げられており、この事故から、「墜落時には燃料を捨てる」という対策がとられるようになった。
ミュンヘンの悲劇
サッカー選手が搭乗していた航空事故は初めてではない。1958年2月6日、西ドイツ・ミュンヘンの空港で英プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドのチャーター機が離陸に失敗した、ミュンヘンの悲劇もサッカー史に残る悲劇として数えられる。
この事故によりマンチェスター・ユナイテッドは主力選手8名、クラブ関係者3名を失い、常勝チームであったマンチェスター・ユナイテッドは長きに渡りリーグ優勝から遠ざかることとなった。
飛行機墜落の確率はtoto BIG当選より低い0.0009%
米国の国家安全運輸委員会(NTSB)の調査によると、飛行機に乗った時に墜落する確率は0.0009%、全世界の航空会社総合の平均値米国国内の航空会社のみを考えた場合、確率は0.000032%となっている。
日本国内の航空会社の確率は分からないが、1985年以降に航空事故は一件も発生していないため、米国とそう変わることはないだろう。
toto BIGの当選確率は0.000048%と言われているため、安全性に定評がある航空会社で航空事故が発生する確率は宝くじに当選すると同等かそれ以下の確率だと言えるだろう。
日本の航空会社の対策は?
出典:www.ana.co.jp ここまでの低確率である航空事故。とは言え、やはり不安は残るものだ。世界でもトップクラスの安全性と言われる日本の航空会社の対策はどう行われているのだろうか?
国際民間航空機関(ICAO)では、世界的にみて民間航空分野における死亡事故発生率は、下げ止まり傾向にあるものの、今後航空機の発着回数の増加に伴い、航空事故等の発生件数は増加すると推計している。
これを踏まえICAOは、締約国が「SSP」と呼ばれる国際安全標準を導入。国土交通省航空局は、平成25年10月に「航空安全プログラム」を策定。国内航空会社は、これを遵守する形となる。
機体整備を公開:ANA
国内航空会社大手ANAは、国内外の計43の空港や事業所で、1,976人もの社員が参加する安全キャラバンを実施。
航空機のモックアップを使用した「緊急脱出研修」や、2013年に開始したANAグループ安全教育センターで事故や不安全事象の歴史を学ぶ「ANA’s Day」など、グループ全社員の受講に向けて注力をしている。
また、機体整備の見学も予約制で行っており、安全文化の形成に向けて様々な取り組みが行われていると言えるだろう。
非常に痛ましい事故となってしまった、コロンビアでのチャーター機墜落事故。一刻も早い原因の究明と、より一層の安全対策がなされることによって、二度とこのような事故が起きないことを願いたい。
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