LINEはメッセンジャー・通話アプリ以外にも、さまざまなサービスを手がけている。その中の1つが、同社のニュース事業で展開される「LINEアカウントメディア プラットフォーム」だ。
提供開始から1年が経った2016年12月5日、同事業の現状と今後の展開、さらには同社が運営する「NAVERまとめ」についての発表会が開催された。
「NAVERまとめ」のチェック体制を強化
今回の発表会で図らずも大きなトピックとなったのが、LINEが運営するキュレーションプラットフォーム「NAVERまとめ」の運営方針の変更についてだ。
DeNAが運営するキュレーションプラットフォーム「DeNA Palette」の各メディア記事公開停止を発端に、「キュレーションメディア」そのものに対する批判が集まる現状を受け、新たな対応策を発表した。
キュレーションの定義とは?
「NAVERまとめ」は、同社が運営していたウェブ検索エンジン「NAVER」におけるキュレーションプラットフォームとして、2009年にサービスが開始された。NAVER自体は業績が振るわなかったため、2013年11月に日本からは撤退したが、NAVERまとめは継続されている。
同サービスは個人が自由にテーマを決め、インターネット上の情報をつなぎ合わせて1つのページに掲載した「まとめ」を作成できる。まとめたユーザーはPV数に応じて報酬を受け取る仕組みだ。現状での月間PVは約26億1,000万、月間UU(ユニークユーザー)は約7,000万に達する日本最大のキュレーションサービスとなっている。
同社の上級執行役員メディア担当の島村武志氏は「NAVERまとめはあくまでもプラットフォームであり、メディアではない」とし、「いろんな価値観を表明してもらうためのオープンに開かれた場」であると話した。
また、同氏はインターネットの役割として、コンテンツを作成する側と、それらを流通させる側があるとし、キュレーションは「流通させる側」にあたるものだと說明。
他社のキュレーションメディアについては、「見ていて疑問に感じることがあったが、キュレーションにもいろいろな解釈がある」と答えた。
権利侵害を監視だけでは判断できない現状
NAVERまとめがオープンに開かれた場であることを受け、同社では常時監視体制を構築し、法規制やガイドラインに沿った対応を徹底してきた。また、権利許諾済みの写真などのコンテンツをユーザーに提供したうえで、緊急性や権利侵害の蓋然性が高い場合には、通常7日間かかる検証期間を短くするために手続きを簡略化してきたという。
実際、運営側のチェックで非表示になっているまとめは多数あり、公開されているものよりも非表示になっているまとめの数の方が多いようだ。同じ行動を何度も繰り返すユーザーはIDをを利用停止するなどの対応も取っている。
NAVERまとめのチャレンジングな新体制
NAVERまとめがこれだけチェック体制を強化しているとはいえ、引用されるコンテンツの身元がわからないことや、1次提供者の権利保護や還元に関する課題はまだまだ多い。また、この問題はインターネット業界全体の課題だと同社は捉えている。これらの解決策として、今回2つの案を発表した。
まとめ作成者にオーサーランクを適用
これまでは誰でもまとめを作成でき、どの投稿者のまとめも平等に並んでいた。今後はまとめ作成者にランクを付け、ランクに応じた上位表示や、ページビューに応じた報酬をより高いレートにするなどのインセンティブを設定する。
具体的なランク付けの方法案として、LINE IDでの認証や、作成者の経歴や背景、経験などを審査・承認を検討している。
1次情報発信者にインセンティブを還元
現在はまとめの作成者のみが報酬を得られるシステムになっているが、今後はまとめられた1次情報発信者にも還元することを検討している。
具体案としては、サイトやURL単位で1次情報発信者のオーサー登録を広く受け付け、コンテンツがまとめ内で紹介された場合、貢献の指標に応じてインセンティブを還元する。また、使用の可否や利用範囲も1次情報発信者が設定できるようにするという。
これらの取り組みは、すべて2017年中の運用開始を目指す。島村氏は「1次権利の保護やインセンティブ問題は長らく議論してきたこと。ものすごく難しいことなのは確かだが、もっとネットが信頼されるものになるためにチャレンジしたいと思っている」と話した。
後編に続く
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう