ジェネリック医薬品とは、先発医薬品/新薬の後発医薬品として開発された薬のこと。戦前から開発されてきたものであるが、ここ10年で一気に広まったものだ。
医薬品は大きく分けて「一般用薬品(OTC)/医師の処方箋なしで薬局等で購入することができるもの」と「医療用医薬品/病院やクリニックで医師から処方されるもの」の二つに分けることができる。
医療用医薬品は新薬とジェネリック医薬品に分けることができ、新薬の特許満了後に開発されるジェネリック医薬品は「後発医薬品」とも呼ばれている。
新薬の半額程度で済むジェネリック医薬品はその安さから安全性を疑問視されがちだが、ジェネリック医薬品の成分は新薬と同一のものであり、厳しい品質管理の下におかれているのだ。
今回は、ジェネリック医薬品と新薬の開発法・利点欠点について紹介する。
ジェネリック医薬品とは
ジェネリック医薬品は、欧米で医薬品が一般名で処方されることから「一般的な」という意味で「ジェネリック・ドラッグ」と呼ばれており、日本でもそう呼ばれるようになった。
ジェネリック医薬品の歴史は古く、戦後まもなくから研究が進められていた。しかし、新薬の特許満了後に開発されるこの薬は多くの企業が似たような薬を出すという視点から「ゾロ品」と軽視され、カプセルの中から不純物が出てきた・飲んだ薬が排泄された等の噂が流された。これにより人々の間には新薬への安心感が強まり、後発であるジェネリックは浸透しないままに現代まで時は進んだのだ。
ジェネリック医薬品の開発方法
後発医薬品であるジェネリック医薬品は、一から研究を進める手順では薬を生み出さない。新薬というゴールに向かい研究を進めていくのだ。各企業ごとに様々な方法で研究が進められるのだが、ジェネリック医薬品大手企業の沢井製薬のサイトによると、人体への影響等を考慮しあらかじめ三つのことが定められていることが分かる。
ジェネリック医薬品と新薬の3ポイント
- 有効成分の種類・量
- 用法・容量
- 効能・効果
つまり、ジェネリック医薬品は新薬と同じ成分でつくられており、変更可能な部分は形状・色・味・添加物と非常に範囲が狭い。定められていることがあるので、新薬の研究が13過程なのに対しジェネリック医薬品は8過程で済むのだ。
ジェネリック医薬品の利点と欠点
先に述べたようにジェネリック医薬品は効率的な研究で生み出され、これにより様々なコストが抑えられている。ジェネリック医薬品が新薬に比べ半額程度の値段で提供されるのはこれが理由だ。また、後発ということで薬に付加価値をつけることもできる。大きく飲みにくい錠剤を小さくしたり、コーティングをして苦みを抑える等の工夫をすることができるのだ。
しかし、この点に不安を感じる人も多い。ジェネリック医薬品は新薬の物質特許満了後に生み出されているが、製薬特許は満了していないために形状や添加物を同じにすることはできない。変更可能な範囲は非常に狭いと先述したが変更すべき点でもあるのだ。
形状や添加物が変わると体内での吸収速度が変わる。これによる効果が出にくい事態や薬の効きすぎによる副作用を懸念しているのだが、日本ジェネリック医薬品学会のサイトを見るとその懸念に対する答えが書いてあった。
ジェネリック医薬品の有効成分について。
薬剤の形態について。
新薬も添加物や形状の変更は行われていることについて。
このように、ジェネリック医薬品の精査は国際的なルールに沿って行われているが、知名度の低さから不信感をぬぐうことができない人が多いと考えられる。
このような不安と先進国の中でもジェネリック医薬品の普及率が低いことを受け、国は医療関係者に対し理解を求め普及を急いではいるが、なかなか理解を得ることができないままでいる。研究や事例からみても薬の安全性は確かであるのだが、新薬という圧倒的な先発医薬品の前では使用を控えられてしまうのが日本においての現状だろう。
新薬・先発医薬品
新薬・先発医薬品とは、最初に開発・承認・発売された従来にはない薬効成分を持つ医薬品である。
日本の新薬の世界的な評価としては遅い・高い・質が悪いの三拍子が揃っていたが、医療技術が世界で最も進んでいる国の一つと言われるようになった今ではそのイメージは払拭されつつあり、次の課題としてはスピードとコストがあげられる。
一方で質への過度な執着や効率化の偏り、独自に開発していくがゆえの国際的な遅れが問題となった。
日本は国内で新薬を開発することができる恵まれた環境にあるが、治験がガラパゴス化すると以下のような問題が出てくると北里大学東病院治験管理センター長兼臨床試験事業本部長の熊谷雄治氏は述べている。
治験のガラパゴス化による問題点
- 患者・医師に新薬が浸透することの遅れ
- 国際開発能力・国際競争力の低下
- 臨床研究の遅れ
- リスクを低開発国に負わせる南北摩擦
- アジアの人における不適正使用量の蔓延
先進国19カ国を対象とした英国の研究チームの調べでは日本は19カ国中2位という誇れる実績を残してはいるが、他の国の医学を常に学ぶことが求められているのだ。
新薬の利点と欠点
新薬の利点は、まず世の中に恩恵をもたらしたという点があげられる。特許が切れると同じ効能のジェネリック医薬品が生まれるが、それまでは唯一の存在だ。
しかし、新薬を生み出すのには基礎研究2~3年、非臨床試験3~5年、臨床試験/治験3~7年、承認申請と審査1~2年と9~17年の月日を必要とし費用は500億円と言われている。
そこまでのコストをかけても開発成功率は約1/3と言われ、ほとんどの候補物質は途中の段階で断念されている。その為、新薬を開発することができるのは一部の大手製薬会社であり、中小の製薬会社は特許満了後のジェネリック医薬品開発をしているのが現状だ。
新薬の開発は厳重な注意をはらいすべきであるが、コストに対しリスクが大きすぎる。また、昔と比較すると開発に関係する時間は長期化の傾向があり、効率化と時間の短縮が求められている。
ジェネリック医薬品の利益
日本におけるジェネリック医薬品の普及率について、興味深いものがあった。
上記からはジェネリック医薬品を普及させることに対する国の強い姿勢が見受けられる。これにより2014年度(2014年4~2015年3月)のジェネリック医薬品普及率は52%と増えてきてはいるが、世界標準で見るとどうなのだろうか。
出典:www.jga.gr.jp 上の図を見るに先進国における日本の普及率は残念ながら低いと言えるが、2011年に比べては高い水準となっている。では、国の政策が功を奏し需要が拡大したと思われるジェネリック企業の利益はどうか。
ジェネリック企業は新薬企業とは違い、断念するかもしれない研究に大きな投資をするというリスクが少ない。ゆえに安定的な利益を生んではいるが、原価の上昇が問題となっていると沢井製薬株式会社社長の沢井光郎氏は言う。
新薬を開発する企業は成功した場合の利益が大きいので原価の上昇にも耐えられるが、後発であるジェネリック企業は打撃を受けるのだ。しかし、医療費が高騰する日本においてジェネリックの需要は大きく、生産が追いついていない状態でもある。
2014年4月に薬価制度が改訂され薬価が下がったこともジェネリック企業の経営に響いている。これから需要拡大が見込まれるにも関わらず、原価の上昇や薬価制度の改訂により製造コストの低い海外での生産が避けられないなかでの、日本のジェネリック医薬品産業の空洞化も懸念されている。
ジェネリック医薬品は新薬と同等の質と効能を期待できる科学進歩の産物と言える。新薬の開発が可能な資産がある企業には研究と開発を任せ、特許満了後にはジェネリック企業が量産していく未来が求められているのではないだろうか。
新薬に頼り後発であるジェネリックを疑問視するかたちも、日本の医療のガラパゴス化の一つなのかもしれない。
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