4月に施行された総務省の「ガイドライン」によって、スマホの“実質0円販売”が禁止された。大手3キャリアはこれに従う形で、キャンペーンなどを次々と廃止。結果として、徐々に端末の価格は上がりつつある。高額なキャッシュバックが出なくなったことで、番号ポータビリティも沈静化。キャリアを変えるユーザーが減り、3社とも解約率は低下している。
一方で、ガイドラインには、いくつかの“抜け道”もあった。端末購入を伴わない形で、週末のみ大幅に割引をしたり、機種変更を考えているユーザーにクーポンを送ったりと、さまざまな形で割引は続いていた。こうした抜け穴に対しては、行政指導という形でキャリアに是正を求めていた総務省だが、来年1月にガイドラインそのものの規制も強化されることになった。
有識者会合には高市早苗総務大臣も出席
今後は有識者会合を経て、端末価格やSIMロックに関するガイドラインが改正される見込みとなる。この会合には高市早苗総務大臣も出席した。
新たなガイドラインは現在、パブリックコメントを受けつけている段階で、12月19日に締め切られる。この意見を受けた形で微修正が行われ、1月に改正ガイドラインが完成する見込みだ。では、新たなガイドラインが始まる、スマホの価格はどのよう変わるのだろう。
新ガイドラインでは、端末の割引に関する目安が設けられている。現状では、大幅な割引が問題視されているが、いくらなら“アウト”なのか、逆にいくらなら“セーフ”なのかの目安も記載されていないため、総務省とキャリアの探り合いが続いていた。
例えば、NTTドコモはiPhone SEの発表時に価格を改定しており、実質価格が0円から648円に上がった経緯がある。日本は自由価格が原則のため、総務省が具体例を明示しづらい事情はあるが、キャリアにとってはいつ行政指導が入るかが分からず、ビジネスの支障になっていた。
有識者会合での議論を経て、価格の目安は「2年前の端末の下取り価格」を参考することが明示された。iPhoneで言えば、2年前の端末はiPhone 6、6 Plusにあたる。この下取り価格は、NTTドコモだと2万2,000円。仮にiPhone 7に新ガイドラインが適用されたとすると、実質価格は2万2,000円以上にしなければならないことになる。現状でも、iPhoneの価格は徐々に上がっているが、キャリアによっては、さらなる値上げになるおそれもある。
例えば、auはiPhone 6を2万4,840円で下取りしているが、iPhone 7の実質価格は新規契約で1万800円。新ガイドラインでは、これは過剰な値引きと見なされるおそれがある。そのため、来年のiPhoneは、1万から1万5,000円程度、実質価格で値上がりする可能性も高い。ガイドラインを改正するベースになった有識者会合では、元々の端末価格に連動した差があることが望ましいとされており、安価な端末と高価な端末の価格差は広がる可能性が高い。
auでは2年前のiPhone 6を2万4,840円で下取りしている
出典:www.au.kddi.com 新ガイドラインのもう1つの狙いは、SIMロック解除の猶予期間を短縮することにある。現状では、3社とも、端末の購入から180日もしくは6カ月間、SIMロックを解除できない期間が設けられている。これは、不正転売防止策の一環。分かりやすく言えば、割賦の代金を踏み倒し、転売で利益を上げる犯罪を未然に防ぐために設けられた、キャリアにとっての猶予になる。
有識者会合では、この期間にも「長すぎる」という指摘が入り、新ガイドライン案では、割賦払いで100日程度という期間が指定されている。一括購入の場合は、支払いが確認できたあと、即時解除可能にすることも求められており、現状よりSIMロックの解除はしやすくなる。
約6カ月になっているSIMロック解除の不可期間も短縮される見込み
出典:www.nttdocomo.co.jp ガイドラインが厳格化する背景には、格安スマホと呼ばれるMVNOを振興したい総務省の思惑がある。現状では、端末価格に大きな差があり、これが格安スマホに移る妨げになっていると見ているからだ。
移行が進めば、対抗上、大手キャリアも端末価格が上がった分の利益で通信料を値下げせざるをおえなくなる。総務省の狙い通りにことが進むかは未知数だが、少なくとも、格安スマホの勢いは2017年も続きそうだ。
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