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ユニコーン企業は来年以降、増加する? シェアリングエコノミー事業3社の成功要因に迫る

日置泰治

2016/12/24(最終更新日:2016/12/24)


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 「ユニコーン企業」と呼ばれるのは、評価額が10億ドル(約1,100億円)を超える非上場のベンチャー企業のことを指す。

 その貴重性から伝説の生物の名を冠している訳だが、米調査会社CBインサイツによると、その数は2015年10月時点で141社に上る。現在は上場しているFacebookやTwittter、LINEなどもかつては「ユニコーン企業」であった。

 規模が小さくとも、ビジネスに革新をもたらすベンチャーは数多く存在する。しかし、評価額の大きさは市場、ひいては社会に与える大きさの表れともいえる。

 本記事では「ユニコーン企業」の中から、今後拡大が見込まれるシェアリングエコノミーに携わり、日本にも参入している3社をピックアップした。何故「ユニコーン企業」にまで上り詰めることができたのかを追っていきたい。

ウーバー・テクノロジーズ

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出典:ubereats.com
 サンフランシスコに本社を置くウーバーテクノロジーズ。配車サービス「Uber」を運営している。日本では、2014年8月にタクシーの配車サービスが東京都で本格的に開始された。

 また、今年9月には、提携したレストランなどの料理を指定場所に運ぶサービス「UberEATS」をスタート。東京都渋谷区と港区の一部が配送地域となっており、配達料は当面無料。配達員を雇う必要がなく、システムもウーバーが提供するため、デリバリー経験のない飲食店でも参入可能であることが最も大きな特徴だ。

 Uberがユニコーン企業に上り詰めた要因は、既存のタクシー業界に対する不満がある人々の心を動かしたことにある。

 タクシープールで長い列を作って待つ、タクシーに乗るたびに場所を説明しなくてはならない、運転の荒い運転手に当たる可能性、賃金が高い、支払いが面倒……など、様々な不満を的確に捉えたのがUber。Uberと類似したサービスを提供する企業もないことから、唯一無二の“ブランド”を確立したユニコーン企業なのだ。

成功する「UberEATS」と規制に足踏みする「Uber」

 自家用車による乗客の運送は法律で禁じられている日本。しかし、「UberEATS」は自転車や原付きバイクで料理を運ぶため、規制に引っかからない。

 一方、配車サービスでは、一般の運転手が客を有料で同乗させる事業は競合するタクシー業界からの反発が強い。あまり展開できていない状況だ。

 規制で思うようなビジネス展開ができないUberだが、2015年10月の安倍首相の発言によって希望が見えた。「過疎地などで観光客の交通手段として、自家用車の活用を拡大する」と発言。規制緩和の検討を指示したのだ。

 2016年5月には、京都府京丹後市で有料配車サービス「ささえ合い交通」が開始。配車サービスビジネスが進むことになるのか、今後の動向が注目されている。

Airbnb(エアビーアンドビー)

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出典:press.atairbnb.com
 サンフランシスコに本社を置くAirbnb(エアビーアンドビー)。個人の空き部屋の貸し出し、所謂「民泊」の仲介を行うサービス「Airbnb」を展開している。

 類似したサービスを提供しているカウチサーフィンは、ホスト(宿主)とサーファー(宿泊者)の間に基本的に金銭の授受が無いが、同社のサービスは宿泊料が発生するものだ。

 宿泊料が発生するものの、ゲストにとっても、ホストにとっても魅力的なのがAirbnbのサービス。ゲスト側のメリットとしては、普段泊まれないような場所にホテルよりも安価で宿泊できる。また、部屋情報もわかりやすく記載されていてサイトが使いやすいのだ。

 ホストにとっても、余分なスペース金銭的収入が得られる、旅行者と交流できる、個人認証が厳しい、金銭ストレスがないなどのメリットがある。部屋情報の掲載を無料で出来る上に、部屋の写真をプロが撮影してくれる。

 つまり、ゲストとホストがWin-Winのビジネスが、ユニコーン企業になった理由の1つだと考えられるのだ。

日本での営業は“グレーゾーン”

 日本では、2016年のAirbnbを利用した海外からの旅行者が300万人を突破。しかし、旅館業法では、「賃金をもらって人を宿泊させる営業」には許可が必要と定められている。“グレーゾーン”の事業であるのが実情だ。

 政府の国家戦略特区では、民泊を旅館業法の適用除外として「特例」で認めることになった。国家戦略特区の東京都大田区や大阪市では、民泊が進められている。また、今年10月には、Airbnb社が岩手県釜石市と観光促進に関する覚書を締結している。

 「Airbnbは地域経済にも貢献している」と主張する同社。国家戦略特区の民泊手続きが煩雑なことから、正規の民泊を提供している宿はまだまだ少ない。2020年の東京五輪では宿不足になることが見込まれている。特区内での民宿認可の簡素化、旅館業法の改正など、観光庁の課題が山積しているのが現状なのだ。

メルカリ

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出典:www.mercari.com
 東京都港区に本社を置くメルカリ。フリマアプリ「メルカリ」を運営している。フリーマーケットのような個人間の売買を仲介する同サービス。会員登録料・月会費・カード手数料が無料で、“エスクロー方式”と呼ばれるシステムにより、個人間で直接お金のやり取りが発生しない。

 日本とアメリカでサービスを展開しており、日米合計6,000万ダウンロード(内訳:日本4,000万、米国2,000万)を突破。月間の流通額は100億円超。また、「iPhone」向け無償アプリのダウンロードランキングでは、一時全米3位に入った。

 一方、SNS最大手の米Facebookは、今年10月にフリマ機能の追加を発表。提供国は米国と英国など4カ国での開始となるが、いずれは日本でもサービスの開始が予測される。メルカリにとっては、強力なライバルとなる予感がする。

メルカリの成功要因は「遊び」

 スマートフォンで簡単に自分の物を売れるメルカリ。成功した要因の1つに「遊び」というキーワードを、同社の社長 山田進太朗氏は挙げている。

 競合していたLINE MALLでは、禁止事項がいくつかあったのに対して、メルカリではユーザーに任せる割合が大きかった。「値下げ交渉」も、LINE MALLでは禁止されていたが、メルカリではユーザー同士のコミュニケーションとして捉えている。

 ユーザーが予想外のカタチでサービスを使いだして、「メルカリ」というサービスを一緒に創り出していったことに成功要因があるのだ。

シェアリングエコノミーの課題は「信頼性」

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 大量生産大量消費の時代は終わり、シェアリングエコノミーは、今後拡大が予測される。民泊や配車システムなど、社会に革新をもたらす可能性を秘めたこの業界は、「ユニコーン企業」の出現に相応しい場所なのだ。

 一方で、シェアリングエコノミーについては、解決しなければならない課題がある。

 既存業界からの反発については先述したが、最も大きな課題は「信頼性の確保」だ。総務省が行った調査によると、国内のシェアリング・エコノミー型サービスを利用したくない理由は、「事故やトラブル時の対応に不安があるから」という回答が各サービスにおいて5割~6割と、最も多い結果となった。

 シェアリング・エコノミー型サービスは黎明期のものであり、信頼性が確保されるのは時間の問題なのかもしれない。しかし、ユーザー同士を仲介する立場の企業も、他企業と同様、信頼性の確保や利便性の向上に向けた取り組みを進めていく必要があるのは間違いないだろう。


 日本では起業する人が少ないため「ユニコーン企業」も生まれにくい状況にある。しかし、シェアリングエコノミーは、「もったいない」の精神を発揮することができるという点で、恰好の市場になるかもしれない。消費者の潜在ニーズを掴むシェアリングエコノミー業界で、新たな“ユニコーン”が表れるのが楽しみだ。

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