欧米を中心に広がりつつある「シェアリングエコノミー」という言葉を知っているだろうか? スマホやPCを使って遊休資産の貸し出しを仲介するサービスのことで、最近よく耳にするであろう「Airbnb」や「Uber」などがそれに当たる。
近年、中央官庁でも政策への検討会議が開かれるなど注目を集めているこの取り組みのなかでも、話題のサービスを紹介しよう。
広がるシェアリングエコノミー市場
「シェアリングエコノミー」は、シリコンバレーを起点に世界規模で成長している市場だ。PcWによると、2013年には約150億ドルだった市場規模が、2025年には約3,350億ドル規模に成長すると見られている(参照:総務省 平成27年版 情報通信白書)。
日本においても、住宅や物件をシェアする「ホームシェア」や、自家用車を使った相乗り「ライドシェア」の市場だけで、経済効果は10兆円を超えると予想されている。
「Airbnb」はシェアリングエコノミーの代表的存在
2008年8月にサンフランシスコに本社を置くAirbnb社が開始した「Airbnb」は、シェアリングエコノミーの存在を世に広めた最初のサービスだ。
保有する住宅や物件を宿泊施設として登録し、貸し出しできるプラットフォームを提供するウェブサービスで、191カ国以上、34,000以上の都市で100以上の宿が登録されている。
とはいえ、見ず知らずの人の家に泊まるのに抵抗がある人もいるだろう。ホストの信頼性を高めるために、過去の利用者によるレビュー評価制度や、写真入りの身分証明書などで本人確認を行ったり、FacebookなどSNSの認証情報を利用するシステムを導入したりしている。
Airbnbは地域経済にも貢献
「Airbnbは地域経済にも貢献している」というのが同社の主張だ。同社の研究によると、ホテルのないところに物件があり、一般の旅行者が訪れない地域企業などにお金が落ちる効果が創出されているという。
実際、サンフランシスコでは年間約56億円、シドニーでは年間約214億円の地域経済効果が見込まれている。
日本においても、2016年のAirbnbを利用した海外からの旅行者が300万人を突破。政府は2017年の通常国会に、全国で民泊を認める新法案を提出する方針で、マンションでの民泊も可能となる見込みだ。
個性的な“日本版Airbnb”も続々登場
日本でサービスを提供している宿泊マッチングに関するサイトは、Airbnbだけではない。みんなのマーケット社が提供する「Roomstay(ルームステイ)」は、2012年に開始したサービスだ。
部屋だけでなく、家、キャンピングカー、ボートの登録にも対応。SNS認証、クレジットカード決済システムを導入し、安全性に訴求している。
とまれる社の「とまりーな」は、2014年に開始した民泊サービスだ。ユーザーが自分の好みに合う日本全国の農家民宿などを、インターネットを通じて予約、宿泊できるのが特徴。農場体験や漁業体験など、体験を軸として宿泊先を探せる。
宿泊以外のスペースを貸し出すサービスも登場
宿泊だけでなく、イベントスペースとして場所を貸し出すサービスも増えている。球場やお寺などの変わり種からオフィスの会議室まで、さまざまな空きスペースを1時間単位で貸し借りできる「スペースマーケット」は、2014年4月にサービスを開始。2016年には民泊を含めた宿泊事業も開始している。宿泊スペースを登録する際に旅館業の許可が必要となるので、旅館業の許可が不要なAirbnbとは特色が異なる。
現在のスペース数は8,500カ所で毎月順調に増加しているという。ユーザー数は対前年比で300%増加の3万人。これまでの成約件数は非公開だが、現在7割弱がパーティでの会場探しに使われているという。それも首都圏で、15人未満の比較的小さな規模のものが中心となっている。
同社は2016年8月、オプトベンチャーズ、リクルートストラテジックパートナーズ、みずほキャピタル、SBIインベストメント、オリックスを引受先とした約4億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。また、同年11月にはネスレ日本とコラボしったパーティープランを提供するなど、法人ユーザーのイベント開催を支援する「法人コンシェル」の提供も開始している。
タクシーや車もシェアするのが当たり前に
海外でAirbnbに並ぶ、主要なシェアリングエコノミーといえば「Uber」が挙げられる。Uberは、スマートフォンやGPSなどを活用し、タクシーを探している利用者とドライバーをマッチングさせることが可能だ。
海外ではハイヤーだけでなく個人のドライバーとも連携
Uberは、サンプランシスコのウーバー・テクノロジーズ社が運営する自動車配車ウェブサービスだ。一般的なタクシーの配車だけでなく、一般人が自分の空き時間と自家用車を使って他人を運ぶ仕組みを構築しているため、既存のタクシー業界からの反発も根強い。
現在、世界537都市での利用が可能で、日本では2013年11月から台数限定でのトライアルサービスを開始。日本においては国土交通省から、自家用車による運送サービスは白タク行為に当たるとして指導が入り、諸外国とは異なる形でサービスが提供されている。
Uberのサービスとは異なるものの、2016年5月に開始した京都府京丹後市丹後町での公共交通空白地有償輸送「ささえ合い交通」では、Uberのマッチングシステムが採用されている。これは、公共交通機関では住民が十分な輸送手段を確保できない場合、NPOなどが会員に対して実費の範囲内での有償輸送サービスを提供できる制度だ。
Uberの配車マッチングシステムは45言語に対応しているため、海外からの観光客向けの移動手段としても効果的。京丹後市は、Uber採用による地域経済や国際交流の活発化にも期待しているようだ。
空いている月極や個人の駐車場をシェアする「akippa」
「akippa(あきっぱ)」は、契約の埋まっていない月極駐車場や使っていない自宅の駐車スペースを持っている人と、一時的に駐車場を利用したい人とを仲介するサービス。akippa社が2014年4月からサービスを提供している。
駐車場の貸し借りは1日単位で行っている。料金は駐車スペースの貸主が自由に設定できるが、おおむね周囲のコインパーキングの7割程度の金額に設定されており、1日あたり500円から1,000円程度。
現在は東京都と大阪府を中心に駐車場を47,000台分確保しており、2016年末までに10万台以上確保することを目標としている。2014年2~8月期と2014年9月~2015年3月期の登録ユーザー数を比較すると約11倍に伸びていることからも、大都市圏での駐車場不足の解消を手助けするサービスとなりそうだ。
車を複数人でシェアする動きも活発化
カーシェアは2002年にオリックスカーシェアが参入したのを契機に、日本で10年以上の歴史がある。交通エコロジー・モビリティ財団の調査では、2016年3月時点におけるカーシェアリングの会員数は約85万人で、前年同月比24%増(参照:わが国のカーシェアリング車両台数と会員数の推移)。その過半超のシェアを押さえるのがパーク24が運営する「タイムズカープラス」だ。
時間貸し駐車場「タイムズ24」を展開してきた同社は、全国で1万5,000カ所以上の駐車場を持ち、この約半分に当たる7,500カ所をカーシェアの拠点としている(2016年1月時点)。スマホやパソコンから車を予約し、近くの駐車場で車がすぐに借りられるのがカーシェアのメリットだ。ガソリン代や保険料が不要なこと、15分単位で使えることなども、カーシェアが大都市圏で自家用車を持たない消費者の人気を集める理由だといえる。
ファッション分野でのシェア文化も拡大中
ファッション分野におけるシェアリングエコノミーも広まりを見せている。以前は結婚式などイベントでの利用を狙うサービスが主流だったが、現在は日常的にいろんなブランドの服や小物を使いたいユーザーに向け、毎月定額で無期限にレンタルするサービスが多い。
女性向けだけでなく男性向けも増えている
「air Closet(エアークローゼット)」は、スタイリストが選んだ服をレンタルできる女性向けのサービス。1回に届くのは計5万円相当のスカートやブラウスなど、3アイテムで、月に何度も交換できる月額9,800円からのコースが人気だ。2015年2月にサービスを開始し、現在は会員数が9万人を超える。
また、同様の男性版サービスとして、キーザンキーザンが2016年4月に開始した「leap(リープ)」などがある。同サービスは、会員登録するとスタイリストが選んだ洋服が送られてくる。中身はジーンズやカーディガンなど上下2組で6万円弱相当。返却期限はなく、好きなタイミングで返却すると、次の洋服が送られてくるシステムだ。プレミアムプランなら月額1万2,700円で、月に何度でも洋服を交換できる。気に入った服があれば、定価より約3~4割安く買い取れるのも魅力だ。
シェアリングエコノミーは、時間やコストの無駄を嫌う現代人にとって、大きな味方になるだろう。また、そこから生まれる新たな体験にコストを割いているといっても過言ではない。まずは気になったサービスを利用してみてはどうだろうか。
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