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64億円の超大型契約! 楽天、FCバルセロナのスポンサーに:海外戦略の成功をバルサに託す?

西澤快

2016/12/01(最終更新日:2016/12/01)


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出典:corp.rakuten.co.jp
 2016年11月16日、世界最高峰のサッカー選手であるメッシなどが所属するスペインのプロサッカーチーム「FCバルセロナ(以下、バルセロナ)」は日本企業である楽天株式会社(以下、楽天)が次期メインスポンサーになることを発表した。

 契約金は、年間5,500万ユーロ(約64億円)。その他のスポンサー候補としてAmazon(アマゾン)や中国のアリババグループが噂されていたが、楽天がスポンサー契約を勝ち取った。

4年で2億2,000万ユーロの超大型契約

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 日本企業である楽天がスペインの世界的サッカークラブのFCバルセロナのメインスポンサーになることで合意した。そんな国内外を賑わせた契約の概要を確認してみよう。

楽天・バルセロナの契約の概要

  • 2017~18年シーズンからの4年間(1年間の延長オプション付き)
  • 契約金額は年間5,500万ユーロ(約64億円)
  • 2017〜18年シーズンから4年間に渡りメイングローバルパートナーに
  • 楽天のロゴが、ユニフォーム胸の正面に入る
 今季のユニフォームのロゴはカタール航空がメインスポンサーを務めていたため、胸には「QATAR AIRWAYS」とロゴが入っていた。

 また、カタール航空は2016年7月に2017年6月いっぱいまでメインスポンサーの契約を継続することが決まっているため、2017年の7月1日以降から4シーズンに渡り、グローバルパートナーとなる。

107年間スポンサー契約のなかったバルセロナ

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 バルセロナというサッカークラブは1899年の創設から約107年間、ユニフォームにロゴを入れない方針をとっていた。

 しかし、2006年からユニフォームにロゴが入れられた。どのような経緯と変遷があり、約107年間もの歴史が変わったのか見ていくことにする。

「社会貢献」という観点からスポンサー契約が開始

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 現在、バルセロナのスローガンは「クラブ以上の存在」である。これは、1968年1月に会長に就任したナルシス・デ・カレラスがFCバルセロナの社会的重要性を伝えた。

 そんなクラブになるための社会貢献の一歩として、2006年9月からバルセロナはユニセフとパートナーシップという形でスポンサーになったのが始まりである。この契約は、年間150万ユーロ(当時、約1億8,000万円)をバルセロナがユニセフ側に寄付するという形の支援活動である。また、寄付金は2016年から年間200万ユーロ(約2億4,000万円)に増額している。

 また、クラブの会長の選出などのクラブの運営方針は14万人を超える「ソシオ」と呼ばれる会員の投票で決められる。この方針は、創立以来現在も引き継がれている。この慣習がスポンサーの契約が行われていなかった要因でもある。

中東のオイルマネーの波がバルセロナにも

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 しかし、バルセロナは、2009〜2010年の収支が約7,710万ユーロ(当時約88億円)の赤字であり、負債は約4億3,000万ユーロ(当時約580億円)もあった。大きな要因はスター選手の人件費が巨額で、クラブの財政を圧迫していたためである。

 そんな背景もあり、カタール政府系組織「カタール財団」がスポンサー候補に上がった。2011年9月にクラブ総会が行われ、8割強が賛成という結果になり、5年間で1億7,100万ユーロ(当時約176億円)の大型契約を結んだ。

 今のバルセロナのスタイルの土台を作った名将ヨハン・クライフ氏は、商業広告がユニホームに入ることに否定的な発言をするなど、「バルセロナ史上初のスポンサー契約」は、ファンやクラブに関係してきた人々の間で物議を醸した。ユニセフとの契約は支援活動であったため、このカタール財団との契約がバルセロナ史上初の商用スポンサー契約であった。

3年目からはカタール航空

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 バルセロナの2016年までカタール財団との契約上、3年目からスポンサー名を変更することができることになっていた。そのため、2013年からは同じく国営航空会社であるカタール航空の名前を胸に刻むことを決定した。

 また、カタール航空はバルセロナのスポンサーという肩書きを大いに活用している。カタール航空の機内安全ビデオにメッシやネイマールといった主力選手が出演しているのだ。また、バルセロナのロゴが描かれた特別塗装機を作るなど、航空会社を前面に押し出したマーケティングが行なわれている。また、先述したようにカタール航空は2017年6月いっぱいまでメインスポンサーの契約を継続することが決まっている。

大型契約に隠された楽天の狙いとは

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海外での楽天ブランドの「認知」

 楽天は2010年に英語を社内公用語にすると宣言し、2012年に完全移行した。このように、楽天はグローバル志向の強い企業である。

 しかし、グローバル志向の強さとは裏腹に、2016年6月にイギリスをはじめとする欧州3カ国でインターネット通販サイトを閉鎖すると発表したばかり。日本では、モール型と呼ばれる形式をとる「楽天市場」が有名である。日本では強い楽天であるが、海外では苦戦を強いられている現状である。

 今回のバルセロナとのスポンサー契約は、すでに海外での反響も大きい。現在、クラブのFacebook、Twitter、InstagramなどのSNSのフォロワーは2億人以上で、すでに「楽天」が海外で広まりつつある。また、メッシ、ネイマールをはじめとした一流選手のブランド力は計り知れない。スポンサー契約は、グローバル志向の楽天が海外での「楽天ブランド」の知名度を上げ、事業拡大の機会を作ることが狙いだ。

バルセロナの世界的露出の高さ

 バルセロナは世界最高峰のチームであるため、クラブワールドカップやUEFAチャンピオンズリーグなどで勝ち進むことが多い。そのため、バルセロナのこなす試合数も自ずと増えてくる。また、勝ち残ると世界中が注目する試合に出る機会も増える。

 そうなると、胸にメインスポンサーとしてロゴがある企業は間接的とはいえ、黙っていても世界中のメディアに取り上げられる。世界最高峰のチームのスポンサーになるということは、多額の資金が必要になるが、同等かそれ以上のメディア露出が期待できるのだ。

過去に成功を収めた日本企業

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 横浜ゴムは、海外のサッカークラブとの契約の中で結果を出している。横浜ゴムは、2015年からイングランド・プレミアリーグの名門チェルシーFC(以下、チェルシー)とパートナー契約を結んだ。

 契約は契約金は公表されていないが5年間と大型契約を結んでいる。横浜ゴムのロゴがトップチームからユースチームまでのユニフォームに使用される契約であり、楽天とロゴの出し方は似てくるだろう。

 実際の効果は

 横浜ゴムは2006年から「GD100」という中期経営計画をスタートさせている。チェルシーと契約をした2015年はフェーズⅣに位置し、タイヤの需要が多い欧州での存在感の拡大が事業戦略として挙げられている。欧州でのさらなる存在感の拡大を図る活動の延長として、チェルシーとのパートナー契約を行った。

 実際にチェルシー効果は発揮され、2015年度第2四半期累計連結決算では、売上高、営業利益、経常利益で過去最高を記録した。要因としては欧州やロシアなどで売上高が前年同期を上回ったことがあげられる。

横浜ゴム:2015年度第2四半期累計連結決算

  • 売上高が2014年同期比4.4%増の2,963億円
  • 営業利益が2014年同期比7.3%増の253億円
  • 経常利益が2014年同期比5.9%増の239億円
  • 上記の3つはいずれも過去最高を記録


 楽天は、フランスやドイツでの市場拡大させるため投資を集中的に行うことを決めている。そんな中での、世界規模のヨーロッパのサッカークラブとのスポンサー契約である。そんな楽天の今後の成長に期待したい。

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