「新しい技術を得るために大事なことは、手を動かすこと」そう語ったのは、PSソリューションズ株式会社のマイクロサービス開発部・大隅正志氏だ。
去年公開された「Slackbot」を皮切りに、Facebook、LINE、Skypeなど、チャットサービスを扱う主要企業が次々とBotの開発環境を公開した。この「Botブーム」を受け、大隅氏率いるプロジェクトメンバーはBot開発に着手し、「会議室予約Bot」をはじめとする100個のBotプログラムを作成した。
キャッチアップした技術やノウハウをサービスという形に落とし込むそのスピード感は、PSソリューションズ、ひいてはソフトバンクグループに浸透する企業の強みだ。
新しい技術を得るためにとにかく手を動かす
さまざまなサービスを提供しているPSソリューションズが「Bot」の開発に着手したのは業界全体の時流を見極めてのことだ。
「さまざまな企業がBotのプラットフォームを公開したことで、開発会社がそこに参画していくという動きが目立ってきたんです。そういった流れを受け、我々もBotやサーバレスアーキテクチャの仕組みやノウハウを知ろう、と思ったのがBot開発のきっかけになりました。ノウハウを得るためには数をこなす必要があると感じていたため、キリのよい100個を目標に設定しました」(大隅氏)
「実際の開発では、ベトナムの開発ベンダーに委託することでコストを削減し、大量生産を行いました。アーキテクチャの検証をするために行った開発のため、わからなくてもいいからとりあえず作ってしまおう!とチャレンジする感覚でした。これはソフトバンググループ孫代表の『失敗を恐れずに、様々な手段を次々に試していれば、必ずどこかで当たる』という言葉が、今回開発を行ったプロジェクトメンバーだけでなくPSソリューションズ全体に浸透しているためです」(大隅氏)
得た知見は形にしてアウトプットする
「Bot開発に着手した目的はあくまでもサーバレスアーキテクチャの検証でした。しかし、数多くのBotを作り開発ノウハウが蓄積していった結果、せっかくだから社員の課題解決になるものを作ろうという声が挙がり、『会議室予約Bot』の開発を行うことになりました。社内ではGoogle Appsを使って会議室予約をしているのですが、パソコンで管理していたため利便性に欠けていた。そこで、リアルタイムな使用感を目的とし、スマホで操作できることを前提に開発を行いました」(大隅氏)
この「会議室予約Bot」は、チャット形式でリアルタイムに会議室の直前の利用状況の確認や予約が行えるPSソリューションズの社内ツールである。現在空いている会議室がひと目でわかり、スマホをタップするだけで会議室の予約を行うことが可能だ。「会議を延長したいんだけど、後に予定は入っていないか?」「既に使われているけど、何時に終わるんだろう?」といった場面で、簡単に確認をすることもできる。
直前の“確認”と“予約”に特化することで、シンプルなインターフェイスを実現できたのだ。
「現場レベルの意思決定」でスピード感を生み出す
「開発をする上で気を付けたのは、現場で手を動かす人間にさまざまな意思決定・取捨選択を任せるという点です。上からやり方を押し付けるのではなく、メンバーの裁量に任せることで、より主体的にアクションが行えます。また、マニュアル通りに進めることも大事かもしれませんが、試行錯誤を繰り返すことでより広く、より密度の濃い知見を得ることができると考えています」(大隅氏)
組織が持つ色を理解し、適材適所で使い分ける
「共通の理念を持つ企業ではあるが、PSソリューションズはソフトバンクとは違った強みを持っている」と大隅氏は語ります。
「考え方や姿勢はソフトバンクもPSソリューションズも変わりません。ですが、組織が持つ強みは異なります。ソフトバンクほど組織が大きくない分、自分の力で変えられる領域が広くなります。ごまかしがきかないとも言えますが、自分の能力をより一層発揮できると言えます」(大隅氏)
自分が身を置く環境、またその「強み」を理解することが、新しい挑戦の揺るがない基盤になるのだろう。
未来の「当たり前」を創造する
Bot開発プロジェクトのメンバーは、一様に「アイディアを形にするまでの速さをさらに磨いていきたい」と口にする。
「今後、『会議室予約Bot』のようなインターフェイスで使えるサービスは世の中に増えていくはず。特に、業務支援の分野はその可能性が高いと思います。そのニーズが本当に高まったときにどのような技術が必要になっているのか現時点ではわかりませんが、『何かアイディアが浮かんでから形にするまでの速さ』はどんなものに対しても発揮できるよう、さまざまな技術を探っていきたいです」(大隅氏)
「昔は携帯電話がなかったのに、今では誰しもが持っています。それどころか、インターネットまでできるようになりました。携帯電話が生活に与えた影響はとても大きなものでしたが、今では必需品です。私たちは、人々の生活の中に根付くようなITソリューションを生み出すのが仕事です。今後もさまざまなことに挑戦し、『なくなると困る!』と思われるような、日々の生活に溶け込むソリューションを生み出していきます」(大隅氏)
全力スピードで走りながらも、目は常に未来を見据えている。その目線の先にこそ、未来の「当たり前」があるのだ。
情報進化のスピードが加速し続けている現代において、次々に生まれそして生活に根付くITソリューションは「必要不可欠」という感覚にまで浸透している。私たちが手にする「当たり前」を生み出す企業から、今後も目が離せない。
Interview/Text:西本 龍太郎
記事提供:WRITERS.TOKYO
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