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訪日外国人も虜に! 便利過ぎる日本の自動販売機:各社個性を強めるビジネス戦略まとめ

Mariko Idehara

2016/12/04(最終更新日:2016/12/04)


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by Lordcolus
 日本が治安の良い国と表わされる代名詞に自動販売機(以下、自販機)が使われる。盗難の恐れが高い自販機がここまで至るところに見られるのは、訪日外国人が驚く典型例だ。

 そんな自販機もコンビニの台頭により、減少傾向にあった。その流れをせき止めた自販機ビジネスに今回迫ってみる。

日本のインフラ自販機数の動向

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出典:www.jvma.or.jp
 日本全国各地、網羅的に存在するコンビニの48倍の規模を自販機は誇る。しかし、たばこ税の値上げや震災の影響を受け、設置場所が失われるなどで減少傾向にある。自販機の中で約半数を占める飲料自販機も、設置場所が飽和状態であることで減少傾向にある。

 しかし、飲料メーカーにとって飲料自販機は主要な供給先の1つとなっているので、飲料メーカーはこぞって新たな改革を行っている。

JR東日本ウォータービジネス

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出典:www.acure-fun.net
  自販機業界が苦しい状況の中、売上を伸ばしている会社がある。それは、JR東日本子会社の「JR東日本ウォータービジネス」である。同社は、エキナカを中心とする飲料自販機事業やJR東日本向け清涼飲料の仕入や地産飲料の企画などを手がける。

 なぜ、売上向上に成功したのか。成功の裏側には、小売業としての視点で自販機を追求した自販機イノベーションの成果が隠されている。

複数飲料メーカー「ブランドミックス機」の導入

 これまでの自販機は、1台で単一飲料メーカーの製品のみを販売する「単一メーカーブランド機」が主流であったが、売れ筋商品を1台に揃えられる「ブランドミックス機」に変えた。エキナカにある自販機をみてみると、たしかに様々なメーカー飲料水がいっぺんに見られるようになった。まるで、幅広い飲料メーカーから仕入れた小売店を営んでいるようだ。

 この「ブランドミックス機」のメリットは、売れ筋商品が一覧のように見ることができるのでインパクトのある自販機として顧客に認識してもらえることだ。 

電車に乗る直前でも買えちゃう電子マネー自販機

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出典:www.jre-water.com
 最近は定番になってきた「Suica自販機」。これは乗車前に自販機を利用する人が多いことからヒントを得て生まれた。JR東日本ウォータービジネスの調査によると、首都圏では、5人に3人(60.3%)がSuicaまたはPASMOを携帯しているそうだ。ツーステップで購入できることで購入ステップの最小化を図り、売上増加に貢献した。

 この自販機の導入により生み出した効果は、女性利用者の増加である。鞄から財布を取り出す手間を省き、定期券と併用して使われるSuicaを利用可能にすることが要因であった。

購買シーンを想定したブランド開発

 acure自販機の主力商品ともいえるミネラルウォーター「From AQUA(フロムアキュア)」は駅のホームでよく見かける。かつては異なる名前で販売していたが、競合商品が続々と登場し、売上が伸び悩んでいた。

 そこで目をつけたのが、フロムアキュアのPOS分析データに基づく顧客の特徴である。朝に購買率が高いことと女性の購入者が多いというデータが、分析によって分かった。また、エキナカの主要顧客ともいえる郊外に住む典型的なビジネスマン・OLの購買高行動を分析したところ、乗車前に購入するということが調査により分かったのだ。
 乗車前に購入し、移動中に飲むビジネスマン・OL向けに開発されたのが、「フタが落ちないペットボトル」である。

 消費者調査によると、ペットボトルのキャップを落としてしまう時やキャップを持つことで両手が塞がる時に不便を感じることが分かった。

 データ分析により、購買シーンを捉え商品開発や商品の補充をピーク時に合わせて行う。また、自販機ビジネスの中では珍しい顧客ニーズに合わせたブランドを打ち出したことが売上増加につながった。

acure自販機の特徴

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出典:www.acure-fun.net
  acure自販機は商品のラインナップ以外にも使いやすさを重視した形状にも注目されている。最新機種は“おもてなし”の自販機として紹介され、顧客のリピート率を増加させる効果もあるようだ。

特徴①:「選びやすさ」を意識したデザイン
 「選ぶ」「支払う」「手に取る」という3つのプロセスを視覚した機体デザインになっており、選びやすく陳列間隔が取られ、見やすさ・押しやすさにこだわったオリジナルボタンにしてある。たしかに、従来の自販機に比べ1つ1つの商品が見やすくなっていると感じる。

特徴②:「取り出しやすい」取り出し口
 40mm程度全面に出したデザインで、手荷物が多い時でも使いやすい。前面に出てると、無理にかがまなくていいので、取り出しがとても楽である。

特徴③:購入ポイントがたまる!
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出典:www.acure-fun.net
 通勤でよく使うSuica等の交通系電子マネーを公式サイトで登録すると購入ポイントがたまり、そのポイントで景品を獲得することができる。アニメとのコラボ商品や日用品が景品にあるので、お得である。

 会社は会員とコミュニティを作っており、顧客の意見を直接吸い上げることができる
体制を敷いている。顧客との継続的な関係構築やリピート率の向上により、自販機ビジネスで売上を上げているのだ。

ワクワクさせるユニーク自販機の登場

 顧客との接点を考え、機体デザインや商品開発を行うJR東日本ウォータービジネスとはまた違った形で顧客の心をつかむ自販機の登場が近年見られる。電子マネーの発展による、IT技術を利用したエンターテイメント性にあふれた自販機である。今回は2つ紹介する。

アプリと連動で楽しく購入!:「Coke ON」(コカ・コーラ)

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出典:c.cocacola.co.jp
 日本コカ・コーラ株式会社が提供する自販機と連動するアプリ「Coke ON(コーク オン)」を起動すると、対応の自販機がある場所がマップ上で表示される。金額表示画面に近づけると、ドリンクチケットを取得することができ、そのチケットに表示された製品を購入できる。または製品を購入すると、スタンプがアプリに貯まり、15個貯まると好きなドリンクを購入することができる。

 このアプリは、音楽ストリーミング「Spontify」とも提携されており、Coke ONが厳選したプレイリストが届く。時間帯ごとに毎回変わる、コカ・コーラ製品のイメージに合ったプレイリストを聞くことができる。飲むだけでなく、ドリンクチケットがゲットできたり、ゲーム感覚を匂わせる楽しめるのが特徴だ。

アイスを食べる前に一踊り?:セブンティーンアイス「サイバーベンダー」(江崎グリコ)

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出典:cp.glico.jp
 アイスの自販機と言えば、江崎グリコのセブンティーンアイス。エキナカでもよく見る自販機である。この「サイバーベンダー」は、“セブンティーンアイスを遊びつくせ!”を合言葉に始動したプロジェクトで、「TRF」「AAA」「Da-iCE」といった、人気グループメンバーと一緒に踊れる自販機だ。

 商品を選択すると、一緒に踊るメンバーの選択画面が表示される。オリジナルソングでメンバーと一緒にダンスを踊ることができ、踊った映像はQRコードでアクセスするとスマートフォンでも見ることができる。商品を購入する以外に、付加価値をつけることで購入数を増やしている。


 町中にあるだけで便利だった自販機も今や、顧客のニーズに応えながら新たな価値を提供するサービスで進化を狙っている。スマートフォンの増加や電子マネーの利用により、自販機の購入方法もバリエーション豊かになって来ている。新世代の自販機の登場は今後も楽しみだ。

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