18カ月間かけて行ってきたアメリカの大統領選が幕を閉じた。
新大統領に共和党ドナルド・トランプ氏が就任したことに多くの人が驚いたことだろう。本記事では、今回のアメリカ大統領選の全貌を追っていく。
選挙戦序盤はミレニアル世代の支持でヒラリー優勢
出典:www.theodysseyonline.com 大統領選の投票が始まる直前まで民主党ヒラリー・クリントン氏が有利だと言われていた。彼女が当選確実と言われていた大きな理由にミレニアル世代からの圧倒的な支持があった。
トランプ氏に1ポイント差を付けさせた“ミレニアル世代”
10月30日にワシントンポスト紙で発表された、民主党クリントン候補と共和党トランプ候補の支持率は46%対45%と1ポイント差をつけてヒラリー氏が優勢と報道。そして、この様な接戦状態で勝敗を分けるのが、「ミレニアル世代」だと言われていた。
ミレニアル世代とは、Facebookの創始者、マーク・ザッカーバーグ氏や“世界の歌姫”と称される、レディー・ガガ氏などがその世代である。一般的には1980年代から2000年代前半生まれで現在10代後半から30代前半までの人を指す。
このミレニアル世代の特徴は子供時代からインターネットに親しいということだ。「どうやって政治のニュースを知るか」という調査をしたところ、米国大手テレビ局のABCやCNNなどを抑え、Facebookから情報収集する人がトップを占めるという結果になった。ミレニアル世代はまさに「デジタル世代」なのだ。
米国の大統領選において、なぜこの世代が重要視されていたかというと、日本の場合、有権者のうちミレニアル世代(19歳~34歳)は5人に1人なのに対して、米国の場合3人に1人となる。「若者の1票」がいかに大きいかということが伺えるだろう。さらにその半数が支持する政党がない「無党派」と見られていた。
両候補共インターネットでの呼びかけや、若者をターゲットにした公約を掲げ、ミレニアル世代の心を掴むのに力を注いだ。投票直前の世論調査では40歳以上ではトランプ氏が優勢なのに対し、ミレニアル世代を含む18歳から39歳では54%対33%とクリントン氏の支持率がトランプ氏を大きく上回った。このことからアメリカ国内でもヒラリー氏の当選がほぼ確実だと多くの人が確信したのだ。
予想しなかったトランプ氏当選の裏
出典:newyork.cbslocal.com 事前の世論調査や、各社が報道した事前予想などからオバマ大統領に続き、民主党ヒラリー候補の当選がほぼ確実と考えていた人は多かったのではないだろうか。しかし、現実は共和党トランプ氏の勝利である。
世界中の人々が予想だにしなかった今回の当選結果の裏にはどのような動きがあったのか、完結に見ていきたい。
“隠れトランプ支持”の実態
「THE SILENT MAJORITY STANDS WITH TRUMP」。この言葉が今回の選挙の結果を大きく変えることとなった。「物言わぬ多数派が、トランプを支持する」という意味である。これは米国では「隠れたトランプ支持者」と呼ばれる人たちを指している。
隠れたトランプ支持者とは、自分がトランプ氏を支持していることを公にしない人々のことをいう。なぜ公表しないのか、実際の隠れたトランプ支持者からは「他人に何かを言われるか、どう思われるかを恐れるあまりトランプ支持を主張できない人が多すぎる」「Facebookにもトランプ支持とは書かないし、仕事のことを考えて、まだ決めていない。とか、考え中。とか言う」という声が上がっていた。
トランプを支持していることを公にしてしまうと「人種差別主義者」や「ひどい奴だ」と言われることがあるという。実際に、家の外に置いたトランプ氏の看板などが盗まれたり焼かれたりする被害が報告されている。
さらに隠れたトランプ支持者の存在を顕著に表しているデータも存在。今回の選挙の世論調査を見ると、電話調査よりもネット調査の方がトランプ氏の支持率が高いという結果が出た。彼らにとって、電話調査よりも顔の見えないネット調査の方が支持を表明しやすいからである。
また、ある調査では大学を卒業した人々のトランプ候補支持率が電話調査では39%、ネット調査では46%。さらに、年収5万ドル(520万円)以上の人々は電話では44%、ネットでは50%と、高学歴・高収入の人が支持していたという結果が出たのである。これまで低所得労働者から多くの支持を得ていたと思われていたため意外な結果であった。
妥協のトランプ支持者
また、今回の選挙で見られた現象は、「妥協のトランプ支持」である。トランプ氏を熱烈に支持するというよりは、ヒラリー氏嫌う人々がトランプ氏に投票。「トランプ氏は好きではないが、ヒラリー氏を支持しない」という意見の人がネット上でも多く見受けられた。
“田舎者”からの圧倒的な支持率
なんといっても今回の選挙結果を地域で見てみると、“田舎”からのトランプ氏に対する圧倒的な支持が否めない。都市部はクリントン支持、地方はトランプ支持、ときれいに分かれたのである。
移民の移住に対して寛容であった米国だか「移民反対」を掲げるトランプ氏には、移民によって雇用機会の減少を恐れる白人層から圧倒的支持を得た。従来のアメリカの国益を守ろうという意識が見受けられる。
この様な、静かなる田舎者の大きな支持によって、我々が予想しなかった結果を生み出すこととなったのだ。
移民の移住に対して寛容であった米国だか「移民反対」を掲げるトランプ氏には、移民によって雇用機会の減少を恐れる白人層から圧倒的支持を得た。従来のアメリカの国益を守ろうという意識が見受けられる。
この様な、静かなる田舎者の大きな支持によって、我々が予想しなかった結果を生み出すこととなったのだ。
ヒラリー氏の敗北から見えてくること
出典:www.cbc.ca 現地時間11月9日に、トランプ氏に敗れたヒラリー氏は支持者たちに向けて語った。ここでは、ヒラリー氏が語ったものを一部抜粋して紹介したい。
冒頭で彼女は、トランプ氏について「彼がアメリカ大統領として成功することを望む」と勝利を祝福した。そして、選挙戦中に、移民排除やイスラム教徒や女性に対する差別発言が目立ったトランプ氏に対し、「アメリカン・ドリームは大きい。誰もが夢見て良いほど大きい。全ての人種、全ての宗教、全ての男性と女性、移民、LGBT、障害者。全ての人たちのものです」最後に、「あなたたちも、勝つこともあれば、負けることもあるでしょう。負けることは辛い。でも、決して、信じることをやめないでください。正しいことのために戦うことは、価値のあることです。やるべき価値のあることなんです」という内容でまとめ上げた。
ヒラリー氏の強い言葉に多くの人が胸を打たれたという。新大統領としてトランプ氏を迎え用としているアメリカではすでに多くの人々がデモを起こしたり、著名人からも悲しみの声が上がっているのが事実である。
しかし、「民主主義だからこそ」今回の選挙結果を素直に受け入れ、民主党から共和党への平和的な政権の受け渡しをしなければならない。
出典:www.cbc.ca 我々日本人は、自国の選挙に対して若者を中心に無関心な人が多い。選挙の結果に一喜一憂している米国の人々を見ると、日本の政治と国民とのあり方に少し考えさせられた選挙戦であったようにも思える。
勝利宣言のスピーチにてトランプ氏は、「私たちには、素晴らしい経済の計画があります。経済成長を2倍にして、世界で最強の経済をつくっていきたい。と同時に、すべての国と、仲良く付き合っていきたいと思います。素晴らしい国と国との関係を、他国と築いていきたいと思います」と語った。トランプ氏の就任には賛否両論の意見があるが、新体制のアメリカの今後の動向に着目していきたいところだ。
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