「ツイードラン」をご存知だろうか? その名の通り“ツイード素材”のアイテム着用が義務づけられたサイクリングイベント。冗談のようにも聞こえるイベントだが、世界中で開催されており、日本でも参加が抽選になるほどの勢いで急拡大しているのだ。
今回は、注目を集める「ツイードラン」と本イベントが提示するファッション×スポーツの新たな可能性を紹介していこう。
ドレスコードは“ツイード”:「ツイードラン」とは?
出典:tweedruntokyo.com ツイード発祥の国として知られる、イギリス・ロンドンで2009年に始まった「ツイードラン」。現在はロンドンを始め、ニューヨーク(アメリカ)、フィレンツェ(イタリア)、ビクトリア(カナダ)、シドニー(オーストラリア)など、世界各都市で開催されている。
日本でも、“ツイード”をドレスコードに自転車で街を走ることによって、安全走行の重要性や自転車の楽しさを発信。自転車に乗ることをファッションのひとつのシーンとして打ち出すことで、ファッション産業の活性化につなげることも目標として2010年から始まった。
2016年も、東京での開催は終了してしまったものの、愛知県半田市での開催が予定されている。
国内外から洒落者が集結! “オシャレすぎる”サイクリングイベント
出典:tweedruntokyo.com 特筆すべきは外国人参加者の多さ。日本での開催ながら、国籍を問わず多くの外国人参加者が、自慢のツイードとバイクを持ち寄っている。ロンドンやニューヨークなど世界の主要都市で開催されていただけに、注目度の高さが伺える光景だ。
参加者のファッション感度の高さも見逃せない。見渡す限りのランナーがツイードを華やかに着こなしており、サイクリングだけでなく、ファッションや自転車を見るだけでも楽しいイベントと言えるだろう。
こだわり抜かれた自転車にも注目
出典:tweedruntokyo.com ファッションだけでなく、参加者の自転車も大きな注目ポイント。一般に想像されるサイクリングイベントというと、余分なパーツが削ぎ落とされたスポーツ用にカスタムされた自転車が思い浮かぶが、ツイードランを走るバイクは、それとは一線を画す。
使い込まれたレザーバッグがセットされた自転車や、英国ヴィクトリア調にカスタムされたモデルなど、ツイードに合わせクラシックな装いとなっている自転車が多く見受けられる。
違法な改造がなされていなければどんな自転車でもエントリーできるので、ファッショナブルにカスタムされた自慢の自転車を持っている人はもちろん、スポーツライクなロードバイクはちょっと……という人でも気軽に参加できるイベントとなっているのだ。
交通マナーだけでなく、ファッション産業の活性化という狙いも
出典:tweedruntokyo.com 日本版ツイードランの実行委員長を務めるのはユナイテッド・アローズ上級顧問兼クリエイティブディレクター、栗野宏文氏(写真上左端)。
栗野氏は「交通マナーの向上という目的だけでなく、服を着る機会を提供したい」と語っており、長年日本のファッションシーンを牽引してきた栗野氏ならではの試みだと言えるだろう。
「ツイードラン」を通した“街づくり”
出典:tweedruntokyo.com ツイードランが掲げたこれらのテーマには、イベントを通して東京を始めとした開催地を「ファッションとスポーツ文化が融合した街」として世界に発信していく、という目的に集約される。
「人間の数より自転車の数が多い」と言われるアムステルダムや、政策で自動車の数が減り自転車の数が3倍に増えたロンドンのように、開催地を街と自転車とファッション、すべてが馴染んだ都市になっていくことが期待されているのである。
ツイードランが掲げる5つのこと
- 1.自転車の正しい乗り方、マナーをPR
- 2.自転車ユーザーに交通ルール遵守を訴求
- 3.東京を、楽しく自転車で走ることができる街として国内外に発信
- 4.自転車をもっと楽しむために、おしゃれをして走ることを提案
- 5.ファッションのひとつのジャンルとして確立させ、ファッション産業を活性化
次はデニムラン! 拡大していくファッション×スポーツイベント
出典:tweedruntokyo.com また、尾道市が位置する広島県・備後地方は繊維産業が盛んで世界的な有名ブランドに生地を供給するなど品質の高いデニムの産地としても知られており、サイクリングを通した国産デニムの内外へのアピールも期待されている。
ファッションの役割には、「自己表現」以外にも「地理的条件」や「ライフスタイル」に適応させるという役割がある。自転車やツイードなど、条件を含ませる場が増えれば、ファッションが役を演じられる時間も増えるはず。
ファッションが注目される場を設ける「ツイードラン」は「ファッションのライフスタイル化」が叫ばれるファッションシーンが、今後どのような取り組みをしていくべきかを指し示すような取り組みではないだろうか。
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