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決戦間近! 共和党トランプvs民主党ヒラリー:米二大政党の“違い”を再確認して大統領選を検証する

石渡稜

2016/11/05(最終更新日:2016/11/05)


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 11月8日の米大統領選がいよいよ間近に迫っている。共和党ドナルド・トランプ氏と民主党ヒラリー・クリントン氏の間で激戦が繰り広げられているが、互いの欠点やスキャンダルをけなし合うような“罵倒合戦”ばかりに注目が集まり、肝心の政策があまり取り上げられていない印象だ。
 
 本記事では、両候補の所属政党がそれぞれ掲げる理念や政策の違いに今一度着目し、今回の大統領選における争点を再確認する。

共和党と民主党:それぞれの歴史

 アメリカに置ける二大政党である両党の理念・政策の違いを再確認するにあたって、まずはそれぞれの政党の歴史を紹介する。

共和党:元々はリベラル派だったが、世界恐慌から保守派に

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 共和党は1854年、民主党の奴隷制度に反対し、経済の近代化をより強力に推進するというリベラルな理念のもとにアメリカ北部の人々を中心として結成された。その後南北戦争において北軍を勝利に導き、民主党に対する優位を盤石なものにする。

 しかし、1929年からの世界恐慌により、経済規制や社会福祉政策を推進する民主党に優位を奪われその状態が1960年代まで続く。この間民主党のリベラルな政策に反対し続け、保守政党としてみなされるようになる。その後ベトナム戦争の泥沼化を機に共和党優位の時代に戻り、自由主義的経済政策や徹底的な反ソ連政策を実施した。

 1990年代以降の勢力は民主党と拮抗している。現在はオバマ大統領率いる民主党が政権を握っているが、下院では共和党議員が多数派を占めるなど、オバマ政権に対して存在感は増している。

民主党:元々は保守派だがリベラル派へ、現在政権を握る

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 結党は1828年。南部の農業の権益を保護するスタンスで、奴隷制にも肯定的な保守政党であった。圧倒的な優位を誇ったが南北戦争を機に弱体化し、優位の座を共和党に明け渡す。

 世界恐慌の際に、ニューディール政策をはじめとする当時としてはリベラルな政策を打ち出し、共和党に対して優位な地位に返り咲く。これ以後は共和党に対抗するリベラル派の政党としての立場を確立する。1960年代以降は共和党優位の時代になるも、対抗政党として自由貿易や社会保障強化を主張。

 1990年代より中道化の道を進み、以後勢力は共和党と拮抗。米国史上初の黒人大統領となったバラク・オバマのもとで現在政権を握っているが、絶対的な優位を誇っているわけではなく、今回の大統領選においても共和党と接戦を繰り広げている。

共和党と民主党:政策や理念の違い

理念と支持層の違い

 具体的な政策の違いを説明する前に、まずは両党の理念と支持層の違いを紹介する。

共和党の理念

  • “自由”を重視
  • 強いアメリカを追求
  • 伝統的価値観を重視
  • 主な支持層:中産階級以上、白人、南部・中西部の人々

民主党の理念

  • “平等”を重視
  • 他国との協調
  • 多様な価値観を受け入れる
  • 主な支持層:中産階級以下、移民、有色人種、東部・西部の人々
 上記の両党の基本理念を把握していただければ、各々の政党の政策がよりわかりやすくなるだろう。それでは以下に具体的な政策の違いについて紹介する。

小さな政府と大きな政府

 両党の経済政策の違いを簡潔に表現すると、“小さな政府か大きな政府か”ということがいえる。
 
 共和党は元来、小さな政府を標榜している政党だ。民間で供給可能な財やサービスについて政府の関与をなくし、政府・行政の権限と規模を限りなく小さくしようというのが、小さな政府の考え方である。事実共和党は市場に置ける自由な競争を重視し、市場への介入をしないスタンスだ。また、社会福祉・社会保障の拡大にも民主党に比べ否定的な立場である。
 
 一方、民主党が標榜するのは、財やサービスの流れに関与することで政府・行政の規模と権限を拡大し、国民の生活を支えようという大きな政府だ。それゆえに市場への介入や社会福祉・社会保障の拡大にも積極的である。自由な競争を重んじ、その結果生じた不平等な状態を個人の自己責任と割り切る共和党に対し、不平等な状態には政府が介入して是正を目指そうというスタンスである。

外交政策の違い

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 共和党は「アメリカは民主主義のリーダーである」という矜持を持ち、世界規模で強いリーダーシップを発揮しようという外交政策をとる。ロナルド・レーガン元大統領のソ連に対する強硬な対応にもこの考え方が顕著に表れているといえる。ジョージ・W・ブッシュ元大統領が主導したイラク戦争も同様である。また、国際協調を軽視し、圧力による外交によって自国の独占的利益を追求する傾向も見られる。

 その一方で民主党国際主義を重視しているため、共和党が掲げるような力による覇権的な外交には消極的だ。力ではなく対話による協調的な外交を標榜しているといえる。バラク・オバマ現大統領による「アメリカは世界の警察をやめる」旨の発言にもそのような考え方が表れている。また、軍事的な同盟国よりも、貿易相手として利益のある国との外交を重要視するビジネスライクな傾向がある。

人権政策の違い

 共和党は同性婚や妊娠中絶といったものに対し、比較的抑制なスタンスをとっている。これらが伝統的な価値観・宗教観に反するからであるとされる。

 一方民主党は、同性婚や妊娠中絶にたいして比較的寛容なスタンスだ。多様な価値観を受け入れようという考え方の表れである。

今回の大統領選における争点

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 共和党・民主党のそれぞれの理念と政策の違いを説明したうえで、間近に迫った今回の大統領選における争点を紹介する。

移民政策

 アメリカにはおよそ1,100万人の不法移民が生活しており、現在もその数は増え続けている。彼らは経済の停滞期である現在、「米国民から雇用を奪っている」「治安の悪化を招いている」として非難の対象となることが多い。また、ISISによるテロ行為が活発化している中で、移民の存在が米国の安全を脅かすという指摘もあがっている。

 この問題に対して共和党ドナルド・トランプ大統領候補が示した政策は、「メキシコからの不法移民を防ぐために国境に壁を建設する」「イスラム教徒の入国を禁止する」「国内の不法移民を一掃する」などといった強硬な移民排斥政策だった。移民たちの苦境に同情し寛容になるよりも、自国民の経済と安全の方がよほど重要だというスタンスである。

 一方で民主党ヒラリー・クリントン大統領候補は、不法移民の大規模な強制送還には否定的で、逆に「強制送還するよりも市民権への優先権を与えるべき」との寛容な政策を示した。不法移民たちを受け入れ、労働力となってもらうことで経済が活性化するとの見解も述べている。価値観や人種の多様性に寛容な民主党らしい政策といえるだろう。

経済政策

 共和党トランプは、法人税の大幅な減税を経済政策の目玉として掲げている。法人税が高いために米国の大企業が資金を海外に留保し、税収が損なわれているとの考えからだ。また、経済の活性化を狙って、所得税率の段階の簡素化や相続税の廃止といった政策も提言した。

 一方の民主党クリントンは真逆の経済政策を掲げている。トランプの減税案を「富裕層へのプレゼント」と一蹴し、超富裕層や企業への課税強化を提言した。高所得層からの税収を増加させ、社会保障などの財源にまわすことで経済格差を是正する狙いだ。

日本への影響は?

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 安全保障上の同盟国としてだけでなく、ビジネスパートナーとしても我が国にとって最も重要な国であるアメリカ。そのトップが誰になるかということは、当然日本にも影響を与える。

 米国第一主義を掲げる共和党トランプは、日本との安全保障条約における米国の負担の大きさを非難し、在日米軍の撤退まで示唆している。これが現実となれば安全保障における負担は大幅に増し、東南アジアのパワーバランスも変容するだろう。また、トランプは日本からの輸入品に高関税をかけるというような提言もしており、貿易面でも大きな影響が生じる可能性がある。

 民主党クリントンに関しても、かつて彼の夫のビル・クリントン元大統領がそうであったように、中国寄りの外交戦略を立てるだろうという憶測があり、そうなれば日本への影響は必須だ。

 ちなみに環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関してはトランプもクリントンも反対の立場をとっている。


 本記事では、アメリカの二大政党である共和党と民主党の理念や政策を比較したうえで、間近にせまった米大統領選の争点についても紹介した。共和党トランプ・民主党クリントン両候補の醜聞合戦ばかりが取り沙汰されているが、選挙である以上、やはり理念や政策を比較する戦いになってほしいものだ。

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