近年就活を控える大学生の間で、「インターンシップ」がさかんに行われていることはご存知だろうか。リクナビやマイナビからインターンシップ専用のサイトやアプリが配信されたほか、インターンシップの機会を提供する会社も多く誕生している。
そんな盛り上がりを見せている若者のインターンシップ事情を知るべく、日米のインターンシップ事情を知る現役大学生の生の声を、ぜひ参考にして頂きたい。
筆者プロフィール
1996年札幌生まれ。アメリカ人の父と日本人の母を持ち、パラグアイ、米国ワシントン、東京で育った。
小学生の時に4年間、高校生の時に2年間日本で暮らした経験を持つ。
現在、米国アイビーリーグの一校である、名門ブラウン大学3年生。応用数学専攻。
インターン経験は3回。今年の夏は社員クチコミサイトを運営するVorkersでアナリストのインターンを経験。
小学生の時に4年間、高校生の時に2年間日本で暮らした経験を持つ。
現在、米国アイビーリーグの一校である、名門ブラウン大学3年生。応用数学専攻。
インターン経験は3回。今年の夏は社員クチコミサイトを運営するVorkersでアナリストのインターンを経験。
はじめに
最近、日本の企業や政府はインターンシップに強く力を入れ始めています。一方で、大学生のインターン参加率は欧米が7割と言われる中、日本のでは大学生全体の23%にとどまっています。
日本に比べインターンシップの歴史が長いアメリカでは、インターンシップが社会に浸透しています。日本でのインターンシップとアメリカでのインターンシップは似た考えで成り立っていながらも、企業文化や就職活動の方法の違いから、その構成や定義には違いがあります。
私は現在アメリカ東海岸にあるブラウン大学に通いながら、夏休みの間に日本でインターンとして働いています。18歳のころから行ってきた日米インターンシップの経験からそれぞれの特長をご紹介します。
日本のインターンシップの特徴
日本でインターンシップが始まったのは最近のこと
アメリカでのインターンシップの歴史は100年以上もありますが、日本でインターンシップが初めて認知されたのは1997年と、20年ほど前です。
バブル崩壊後に早期退職者が増加し、それに対して当時の文部省・通商産業省・労働省が共同で「インターンシップの推進に当たっての基本的考え方」を発表しました。インターンシップは「学生が在学中に自らの専攻、将来のキャリアに関連した就業体験を行うこととして幅広くとらえることとしている」と定義づけられたのです。
日本のインターンシップは短期間のイベント型
日本でのインターンシップは会社側がプログラムを用意し、一定数の学生が一緒に参加をするイベント型タイプが主流です。
データを見ても、実務に携われるようなインターンシップを提供しているのは1割強のみにとどまっており、期間も半日~1週間程度の短期間のものがほとんどだと考えられます。
出典:www.disc.co.jp出典:www.disc.co.jp また、インターンシップの経験がその企業への就職に有利に働くかというと、「選考で優遇する」と答えている企業が25%ありつつも、7割が「通常受験者との区別はない」としており、日本のインターンシップは就職活動前の学生に自社をPRする、社会貢献活動としての意味合いが強いように見えます。
アメリカのインターンシップの特徴
就職に直結するアメリカの長期インターンシップ
一方、アメリカ社会ではインターンシップは就職に直結するとても重要なものだと言えます。アメリカの学生の7割が夏休みや放課後にインターンをしており、インターンシップに参加することを卒業条件としている大学も増えています。
アメリカのインターンシップは日本の短期間のものと違い、2、3カ月間の期間で行われます。インターンシップを行うために、夏休みに企業が集まる都市部に滞在する学生もいます。アメリカの企業が提供しているインターンシップの6割は有給、4割は無給というデータもあります。有給のインターンシップは金融・エンジニアリング・IT系の会社が多く、無給のインターンシップはマスメディアや政府系の会社に多く見られます。
インターンシップのプログラムは、フルタイムの社員とほとんど変わらない内容です。学生がインターンシップに参加する動機は、将来やりたい仕事を在学中から体験できることです。中にはインターンシップの参加をきっかけに、卒業後に仕事の依頼や採用案内がくることもあります。
さらに、インターンシップに参加することで、自身のネットワークを増やす機会もつくれます。日本以上にLinkedinが浸透していることからもわかるように、アメリカでは就職にあたってネットワークが非常に重要です。ネットワークを増やすことで、将来仕事につながるコネクションができる可能性もあるのです。
また、それ以上に重要なインターンシップの目的は、インターンシップの経験を履歴書に記載し、就職活動でアピールするためだと考えられます。インターンシップ経験は採用に大きく影響します。そのため、アメリカの大学生は夏休み中に1回か2回インターンシップを行うことが多いです。早い人は高校在学中からインターンシップに参加します。
出典:offers.looksharp.com インターンシップに参加するにはほとんどの場合、面接や筆記テストなどを受ける必要があります。面接の回数などは違う場合もありますが、通常の就活における採用過程とほとんど違いはありません。新入社員に対して教育やトレーニングを行う日本と異なり、即戦力となることを期待されているアメリカにおいては、インターンシップの経験が全くない学生は企業で採用されるのが難しいでしょう。
他国事例
インターンシップの重要性が高い国はアメリカだけではありません。例えば、イギリスでは2年生と3年生の間に1年間ギャップイヤーという休学期間をとってインターンシップに参加することもあります。イギリスのインターンシップはアメリカ同様2から3ヶ月の期間にわたって行われている通常のプログラムから、1年間の長期インターンシップまであります。
アメリカが抱える無給のインターンシップ問題
インターンシップは無給または最低資金を支給する会社が多いですが、業界によっては月50万円などの報酬を用意して優秀な学生を囲い込むところもあります。インターンシップが浸透しているアメリカにおいて、最近問題となっているのが給料の問題です。一つには、無給で働くインターンに対しての最低賃金法違反の訴訟問題です。2014年には、無給を不服だとしたモデル事務所のインターンが未払請求を起こし、45万ドル支払いを命じられるなど、訴訟を恐れインターンシップの提供を廃止する企業も増えています。
また、参加したのが無給のインターンシップなのか、有給のインターンシップなのかで学生の初任給に大きな差があることも問題になっています。2015年卒の統計データによると、民間企業のインターンシップに参加した卒業生の初任給は有給のインターンシップに参加した学生がおおよそ5.3万ドル、無給のインターンシップの場合は3.4万ドルと、大きく開いています。
さらに、内定をもらう割合にも差があります。有給のインターンシップに参加した学生の72%は内定をもらうことができたのに対し、無給のインターンシップに参加した学生で内定がもらえた学生は33%にとどまっています。
深く取り組むアメリカ、数多く参加できる日本
日本のインターンシップは期間が短いのでより多くの企業や業種を体験できることが学生にとっての大きなメリットだと思います。
即戦力を求めるアメリカの場合、学生は一つの仕事である程度経験を積む必要があるので、多くの企業や業種でインターンシップをすることは難しいです。
出典:www.disc.co.jpおわりに
アメリカと日本のインターンシップ制度は違っても、インターンシップに参加することで実際に働くイメージを描くことができ、就職をする前に実際の社会人が行う業務に挑戦できることは学生にとってとても重要な経験だと思います。また、そういった経験をすることで、就職における学生と企業とのミスマッチは減らすことができるのではないでしょうか。
インターンシップを経験することで、学生は採用選考にも慣れ、自信をつけることもできます。これから日本社会でインターンシップの重要性や、グローバル人材の需要が高まるとしたら、アメリカや他の国から見習えることがあるかもしれません。
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