「将棋=お年寄りの趣味」だと思っている人が多いのではないだろうか。しかし、最近は将棋を題材にしたアニメの放映や映画の公開が相次ぐなど、静かなブームを見せている。2016年のいまだからこそ押さえておきたい最近の将棋界事情を紹介しよう。
2015年には競技人口が過去最低の落ち込みに
公益財団法人日本生産性本部余暇創研の「レジャー白書2016」によると、15歳以上の「将棋参加人口」は、2009年の1,270万人に対し、2015年は530万人へと激減した。この最大の要因は“レジャーの多様化”だ。
リーマンショックの余波を受ける協賛金
さらに、2008年のリーマンショック以降、協賛金が減少していることも将棋人口の減少を加速する理由のひとつ。企業から集められた協賛金はタイトル戦などの賞金として使われており、以前は数千万円を稼ぐ棋士が数多くいたという。
しかし、日本将棋連盟の発表する「2015年獲得賞金・対局料ベスト10」を見ると、1位の羽生善治名人が1億1,900万円、2位の糸谷哲郎八段が5,531万円、10位の広瀬章人八段が2,042万円。よほど勝ち進まないと棋士として食べていけないという現状があり、スター選手の輩出が厳しくなっている。
「週刊将棋」は2016年3月30日号で休刊
将棋人口の激減により、将棋界唯一の週刊新聞「週刊将棋」が2016年3月30日号で休刊した。当時、編集長による「メディアを取り巻く環境の変化にあがらえなかったのが理由」だという旨のコメントがネット上でも話題になった。
現在、将棋に関するメディアとして、「日本将棋連盟モバイル」や「名人戦棋譜速報」などがあり、「ニコニコ生放送」では「将棋名人戦チャンネル」も用意されるなど、インターネットならではの速報性を重視したメディアが多数存在する。
将棋界のIT化に取り組む、遠山雄亮五段
将棋といえばデジタルの対局にあるように思いがちだが、日本将棋連盟におけるデジタル化は著しい。
「モバイル編集長」という役職の遠山雄亮五段は、ネットを使った対局サービス「将棋倶楽部24」と、名人戦などのタイトル戦をスマホなどから観戦できる中継サービス「日本将棋連盟ライブ中継」を担当。2016年5月には、米グーグル社から声がかかり、女流棋士のタイトル戦である「マイナビ女子オープン」をYouTubeで全世界に向けて配信したことでも話題を集めた。
アニメや映画の影響で新たなファン層が拡大
将棋を題材とした羽海野チカによる漫画作品「3月のライオン」(白泉社)は、2011年に第4回マンガ大賞、2014年に第18回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞している。監修を棋士の矢崎学九段が務め、最近では羽生善治名人もこの作品のキャラクターのファンだと、彼の妻がTwitter上に投稿している。
原作ファンも納得のアニメ化と実写化
(c)羽海野チカ・白泉社/「3月のライオン」アニメ製作委員会
「3月のライオン」は、2016年10月8日からNHK総合テレビにてアニメの放送がスタートした。監督は「魔法少女まどか☆マギカ」や「<物語>シリーズ」などアニメ好きの間で人気の高い新房昭之が務める。アニメーション制作はシャフト、主題歌アーティストはBUMP OF CHICKENと、まさに盤石の布陣といえる。
2017年3月18日(土)公開 / 製作:2017年(日本) / 配給:東宝=アスミック・エース
(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会
(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会
さらに、2017年3月18日から実写映画「3月のライオン」の公開も決定。2部作となっており、後半は2017年4月22日からの公開となる。監督は「ハゲタカ」や「るろうに剣心」シリーズの大友啓史で、主演は神木隆之介が務める。
11月には実在の棋士を描いた映画も公開
2016年11月19日(土)公開 / 上映時間:124分 / 製作:2016年(日本) / 配給:KADOKAWA
(C)2016「聖の青春」製作委員会
(C)2016「聖の青春」製作委員会
さらに、2016年11月19日からは「聖の青春」という映画も公開される。大崎善生の同名ノンフィクション小説をもとに、難病を患い名人への夢半ばで急逝した実在の棋士・村山聖の人生を描いたヒューマンドラマだ。「東の羽生、西の村山」と並び称された2人の戦績は村山の6勝8敗。村山聖を松山ケンイチ、羽生善治名人を東出昌大が演じる。
本作品は2016年10月25日~11月3日に開催される「東京国際映画祭」のクロージング作品にも選ばれている。
実際の将棋人口は1,000万人以上
レジャー白書では将棋人口が過去最低になったものの、日本将棋連盟は「そうではない」と言う。あくまでもレジャー白書は”15歳以上”の統計であり、2015年の段階で子供を含めた将棋人口は1,000万人だと公表している。
将棋大会に参加する子どもの数は右肩上がり
「第5回 J:COM杯 3月のライオン子ども将棋大会」は、2016年6月~8月にかけて全国7会場で地区大会を開催。1,350名の募集に対して過去最多の1,948名の応募があるなど、参加希望者は年々増えており、大会への注目度が高まっている。
発売前から増産が決まった「9マス将棋」
8月25日に発売された益社団法人日本将棋連盟による監修・推薦、青野照市九段考案の「9マス将棋」(幻冬舎)。発売前の段階で増産が決まるほどの人気を見せている。「9マス将棋」は、3×3の9マスの盤と8種類の駒を使って対戦するミニ将棋。通常の将棋と違い、初期配置が40通りあり、初心者から中級・上級者まで楽しめる。
最近では「ひふみん」の愛称で人気の加藤一二三九段や、株主優待で生活することで話題の桐谷広人七段など、個性的な棋士も多数登場している。将棋にまつわる作品や、棋士をきっかけに将棋への理解を深めてみよう。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう