「麻雀」と聞くと、胸が「ざわ……ざわ…」とする人はどれくらいいるだろうか。その魅力に取りつかれ、学生時代熱中した思い出のある人や今なお楽しんでいる人も多いだろう。
今年の就職活動で麻雀が「就職採用試験に麻雀が用いられた」というニュースは大きく取り上げられた。採用試験に用いられるということは、そこにビジネスと結びつく何かがあるのだ。
今回は、そんな麻雀とビジネスの密接な関係性を分析していきたい。
麻雀をこよなく愛する敏腕ビジネスパーソンたち
出典:magnetpress.net ビジネスパーソンの中でも、実は経営者に麻雀を愛する人々が多い。中でも著名な人たち紹介しよう。
藤田晋
サイバーエージェント社長。麻雀を覚えたのは小学生の頃である。大学時代には麻雀に入りびたり、桜井章一(※)率いる雀鬼会にも通っていた。麻雀好きの敏腕ビジネスマンとしては最も有名だと言っても過言では無いだろう。
(※)桜井章一:20年間無敗という伝説的な記録絵を作った雀士。1991年自らの雀風や生き方を教える「雀鬼会」を設立
勝間和代
著述家、評論家であり中央大学大学院戦略経営研究科客員教授。マッキンゼー、JPモルガンなどの在籍を経て独立。そんな華々しい経歴をもつスーパーウーマンはなんとプロ雀士でもある。
麻雀の理論を学習し、徹底的にデジタル麻雀(「運」や「ツキ」といった抽象的な要素を一切持ち込まない打ち方)を叩き込むことで、麻雀にハマってからなんとたったの一年でプロ雀士の資格を獲得した。
奥田碩
トヨタ自動車の社長・会長を務め、「攻めの経営」で同社の急成長の立役者となり、後に、内閣特別顧問、国際協力銀行代表取締役総裁などを歴任した奥田氏も若いころから麻雀に親しんでおり、麻雀は無類の強さだといわれる。
同氏はトヨタ自動車の社員時代、フィリピン駐在を経験しているが、その際には現地の人たちルールを教え込んでまで麻雀を打っていたそうである。
その他にも、楽天の三木谷浩史社長やGMOインターネットの熊谷正寿社長などは麻雀好きを公言しており、さらには、宇佐美進典氏(VOYAGE GROUP社長)や柳澤大輔氏(面白法人カヤック社長)も竹書房主催の「麻雀最強位2014」に参加するほどの麻雀好きである。
麻雀を新卒採用に組み込んだ狙いとは
今年の新卒採用試験には数社が「麻雀」を用い、話題となった。その中でも、今年から新卒採用試験に「麻雀」を取り入れ、大きな話題となった株式会社スターティアの例を紹介しよう。
例:株式会社スターティア
出典:www.facebook.com 株式会社スターティアでは今年、新卒採用として「麻雀採用」が実施された。その内容とは就活生、社員、プロ雀士が入り混じって卓を囲むことで、就活生のコミュニケーション力や就活生の麻雀を打つ姿勢を考慮しつつ、成績上位者にはなんと「内定リーチ」という選考フリーパスを出すというものである。4月22日に行われた麻雀大会では社員5名、プロ雀士5名に対し、就活生29名が集まった(内訳は男子27名、女子2名)。
ともに麻雀卓を囲んだことで就活生たちに社員たちと通して会社の雰囲気が伝わり、その後に設けられた説明会への就活生の出席率は高く、話の盛り上がるテーブルが多かったそうだ。
スターティアの新卒採用フェイスブックを見てみると、
という風に書かれており、同社が麻雀から就活生たちの「思考力」や「勝負強さ」、「決断力」を見ようとしていることが伺える。
また、スターティア社内には麻雀好きが多くいるらしく、サイバーエージェント社やクレディーセゾン社の参加した麻雀企業対抗イベントで活躍した強豪が揃っているようである。そんなスターティアの業績はここ数年、前年比プラス20%~30%と大きな成長を続けている。
藤田氏の語る「麻雀とビジネス論」
出典:www.cyberagent.co.jp これは藤田氏のブログからの引用である。麻雀に必要な「論理的思考力」、そして「勝負強さ」や「決断力」はビジネスにおいてかけがえのない能力だと語っている。
「麻雀最強位2014」の前には麻雀本の読み込みやニコニコ動画でプロの対局の観戦をして最新の麻雀知識を取り入れたり、8日間プロ雀士と合宿を行ったりと技術の向上に余念がなかったそうである。
麻雀から学べることはビジネスに活かせる
ここまで、麻雀とビジネスの共通点や麻雀から得られるビジネス素質について見てきたが、それらを要素ごとにまとめていこう。
①洞察力が身につく
相手の打ち方や表情、仕草に至るまで相手を観察することで相手の考え方を推し量る力がつく。洞察力の有無は会議や商談において「相手が何を考えているか」推し量る力、ひいては「空気を読む力」につながる。
そして、会議・商談を自らのペースに乗せていくにはこの「空気を読む力」が重要なのだ。
②論理的な思考が身につく
麻雀は自らの手牌だけでなく、卓全体をみることで論理的に戦略を立てる必要がある。市場を冷静に分析し、世の中には何がウケるのか論理的に考える力はビジネスの基礎である。
③勝負の機微を学べる
「待ちはそのままか、それとも変えるのか」という決断を下し、「勝負する力」が身につく。例えば経営者にとって自分のビジネススタイルを維持するのかそれとも変えるのかという舵取りは非常に重要なものである。そしてその決断に生きるのが麻雀で培った攻め際・引き際を見極める力なのである。
④「流れ」がわかるようになる
場の流れを読み運をひきよせる自分の「勘」さえも磨くことができる。藤田氏が最も重視するのがこの「運」であり、それを引き寄せる「勝負勘」である。ビジネスは頭の良さと努力だけでは上手くいかない。「運」を味方につけることが成功への最後の一押しとなる。
以上が麻雀から学べるビジネス要素であろう。「実力だけではなく時には運も必要だ」という点がとてもビジネスらしいように思われる。
「麻雀好き」しかり「落語好き」しかり、ビジネスパーソンとして成長している人々は趣味や嗜好が似ているということが最近言われている。「麻雀」にしろ「落語」にしろ、「デキる」人たちにウケるそれ相応の理由がありそうだ。
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