最近、NHKや多くの経済誌などで特集されている「落語」。『ビジネスエリートは、なぜ落語を聴くのか?』という本がベストセラーとなっていたりなど、ビジネスシーンでも取り上げられる機会は多くなっている。
落語好きを公言する大企業の経営者が多くいることからも、落語ブームの存在はご存知かもしれない。しかし、落語のような伝統芸能はよくわからない、馴染みがないという方がほとんどなのではないだろうか。
そこで、今回はそんな落語ブームの実態、そして落語はいかにして成立したのかという点に迫りたい。
拡大化する落語の市場規模
落語の催される公演会の回数はここ2年ほどで増えており、その観客も増加傾向にある。また、落語の聞けるカフェやバーである「落語カフェ・バー」などというものも増えており、落語はその裾野を広げている。
若者の街・渋谷から落語を気軽に楽しめる
まず最初に紹介するのは、「渋谷らくご(シブラク)」という落語の公演会である。サンキュータツオ(※)が「気軽に落語を楽しめる」ことを目標に、渋谷にあるユーロスペースで定期的に行っている。
※サンキュータツオ……お笑い芸人。漫才コンビ「米粒写経」のツッコミ担当。また、日本語学者の一面も。
下のグラフは、シブラク推定入場客数推移を示したものである(2016年8月終了時。なお、大入は160人、札止は180人として集計)。
出典:twitter.com このグラフより、シブラクの集客は2年前の2倍以上になっていることが分かる。鈴本や池袋演芸場のような「寄席」と違い、「一見様お断り」感がなく入りやすい点が若者にもウケている。若者の街であり、そして文化の最先端である渋谷において、現在の落語ブームをけん引する一因となっている。
落語×カフェ? 異色の組み合わせがウケている
次に取り上げるのは、神保町にある「らくごカフェ(rakugocafe)」である(住所:東京都千代田区神田神保町2丁目3 神田古書センター5F)。
こうした落語カフェ・バーは増加傾向にあり、その手軽さ、敷居の低さから落語ファンの裾野を広げることに一役買っている。
渋谷で落語を聞きに来る人の数が増加していること、落語を取り扱うカフェやバーが増えているということが、落語ブームを裏付けるものになっているのではないだろうか。
そもそも「落語」の成り立ちとは?
関東と関西では、落語の成立は全く異なる。そして面白いことにその二つは、異なる成立の仕方で江戸時代中期ごろにほぼ同時に成立した。関東・関西で落語がどのように成立したのか一つずつ見ていきたい。
関東での成り立ち
塗師の鹿野武左衛門が本職の傍ら、芝居小屋や風呂屋、酒宴など様々な座敷に人を集めて噺を聞かせたのが始まりとされている(「座敷ばなし」という)。それゆえ、客の反応を気にするというよりも噺家のペースで進んでいく噺が多く、「人情噺」というジャンルが特徴である。
また、今の「寄席」のスタイルは江戸時代後期、寛政に入って浄瑠璃や講談、説教の流行と相まって成立した。落語の寄席を最初に成立させたのは初代三笑亭可楽(さんしょうていからく)という人物である。
関西での成り立ち
関西の落語の成り立ちは、大阪と京都に分かれている。京都では米沢彦八が発端とされており、京都では日蓮宗の談義僧であった露の五郎兵衛が、多くの人を前に道端で舞台を用意し、自作の噺を披露して銭を稼いだ「辻ばなし」が起源である。ゆえに「鳴り物」を使ったり、小ボケを多く挟んだりと、客の気を引こうとする演出が多くみられる。
また、江戸落語では扇子と手ぬぐいしか使わないのに比べ、上方落語では見台(けんだい)・小拍子(こびょうし)・膝隠し(ひざかくし)という、江戸落語にはない小道具を用いる。小拍子で見台を叩き、音を鳴らすことで場面転換を行うことができるのだ。
落語を見に行く前にチェックしたい関連コミック&映画
①落語心中
雲田はるこ作、アニメ化もされたコミック。落語は伝統芸能なのか、エンターテイメントなのかという問いに苦悩する主人公たちが描かれる。「死神」など有名な噺も多く登場し、落語に馴染みがない方ならまずは読んでみることをお勧めしたい。また、作者の雲田氏はBL漫画出身の漫画家である。
②超入門!落語 THE MOVIE
NHK・Eテレで放送中の短編ドラマ。落語の世界観をドラマで再現したもの。ナビゲーターの濱田岳に加え、毎回豪華ゲストが落語の世界観を上手く表現している。
落語に親しむ方法は「寄席」以外にもいくらでもある。『ビジネスエリートは、なぜ落語を聴くのか?』などで興味が湧いたビジネスパーソンの読者、まずは敷居の低いところから始めてみてはいかがだろうか。
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