エンジンとモーター、2つの動力を組み合わせることで両者の苦手な部分を補い合い、燃費を向上させるのがハイブリッド車の基本的な仕組み。「燃費は良くなるが、面白味には欠ける」そんなイメージを持っている人も多いのではないだろうか?
そんなハイブリッド車のイメージを覆す走りを実現しているのが、フォルクスワーゲンのプラグインハイブリッド(PHV)モデル「GTE」シリーズだ。
ディーゼルエンジンに関する不祥事が発覚して以来、ハイブリッドや電気自動車(EV)などモーターを使ったパワートレインにウェイトを移した同社が、今最も力を入れているシリーズだといえる。
国内には「ゴルフ」と「パサート」の2モデルに「GTE」グレードが導入されているが、今回は「パサート GTE ヴァリアント」に試乗。その衝撃的な加速性能と、国産ハイブリッドとは異なる考え方のシステムを体感することができた。
電動パワートレインに注力するフォルクスワーゲン
日常的な移動は電気だけでOK
「パサート GTE」にはセダンとヴァリアント(ワゴンタイプのボディ)が用意されており、搭載されるのはフォルクスワーゲンが得意とする1.4LのTSIエンジン。いわゆるダウンサイジングターボと呼ばれる低速のトルクと燃費の良さに定評のあるパワートレインだ。
それに組み合わせられるのが、電気モーターと遮断クラッチが一体化された6速のデュアルクラッチトランスミッション。モーターでの走行中などには、エンジンとの間のクラッチを切ることで、抵抗のない走行を可能にしている。
バッテリーは9.9kW/hのリチウムイオン電池で外部からの給電が可能。電気だけで51.7kmの航続距離を実現しているので、日常的な使用であればエンジンをかけることなくEVとして使うことができる。
EV走行で130km/hまで出せる
国産ハイブリッド車との違いは走り始めてすぐに感じられる。走り出しはモーターだけで走行する「EVモード」が選択されるのは国産車と同様だが、国産ハイブリッドの多くが少しアクセルを踏み込むとエンジンがかかり、ハイブリッド走行に移行するのに対して、「パサート GTE」は(「ゴルフ GTE」も)130km/hまでは電気モーターのみで走行できる。
加速感も電気モーター特有の力強いもので、感覚としては完全にEV。1740kgという大きめのボディを物ともせず、音もなく加速していく感覚は非常に気持ちいい。
全面が液晶とされたメーターパネルには、現在何のエネルギーで走行しているのかというエネルギーフローが表示される。
ハイブリッド走行での燃費も良好
「ハイブリッドモード」への切り替えは、シフトレバー横のボタンで行う。もしくは、バッテリーの残量が少なくなってくると、自動的に切り替える機能も搭載されている。
エンジンがかかると、EVモードの時はなかったタコメーターがメーターパネルに表示される。
今回試乗した「Advance」グレードでは、「エコ」「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」「カスタム」という5つの設定が選択可能で、選んだ設定に合わせてエンジンやシフトパターン、ステアリングの特性が変更されるのも面白い。このモードでの燃費は21.4km/L(JC08モード)だ。
カルチャーショックを受けるGTEモードの加速
そして圧巻はエンジンとモーターの出力を全て加速に使用する「GTEモード」。アクセルをキックダウン気味に大きく踏み込むと、体がシートバッグに押し付けられビックリするような加速感を味わうことができる。
このモードでの0-100km/hの加速性能は7.4秒とワゴンタイプの車体に似合わないもの。最高出力115kW(156PS)のエンジンと、85kW(116PS)の電気モーターのパワーをフルに使って加速するので、国産ハイブリッド車の感覚で乗っているとカルチャーショックを受けることになるだろう。
多くの国産ハイブリッド車は燃費のために走りの面白さを犠牲にしているように感じる。とはいえ、同モデルのハイブリッド車とガソリンエンジン車の価格差はまだ大きく、節約できる燃料代でその差額を回収しようとすると10万km以上走らなければ元が取れないという場合も少なくない。
「パサート GTE」の価格はセダンタイプで519万9,000円~、ヴァリアントが539万9,000円~。Advanceグレードになると579万9,000円となる。通常の「パサート」セダンが329万円~という価格差を考えると、燃費で取り返そうという気はなくなるレベル。
経済性を気にする層にはJC08モードで20.4km/Lという良好な燃費を示す1.4LのTSIエンジンモデルを選んでもらい、ハイブリッドの「GTE」ではガソリンエンジンでは味わえない加速感や走行性能という付加価値を提案する。そんなハイブリッドに対する考え方の違いを感じた試乗体験だった。
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