“クラウドファンディング”という言葉が日本でも浸透してきた。電機大手メーカー東芝が今年5月に学習型アルコールガジェット「TISPY」プロジェクトを開始し目標金額150万円を大きく上回る快挙を果たした。また、お笑い芸人キングコング西野亮廣氏がクラウド目標金額の180万円を10倍以上集めることに成功し、個展『えんとつ町のプペル展』を開催した。
クラウドファンディングサイトをみると、個性あふれるアイディアが並んでいる。その業界に空を器用に操る会社が参入してきた。航空大手会社のANA(全日空)だ。同会社は10月3日、クラウドファウンディングサイト『WonderFLY(ワンダーフライ)』を発表。今回はANAが提案した、他のクラウドファンディングサイトにはない、独自のサービスについて迫る。
コンテスト形式でアイディア勝負『WonderFLY』
出典:wonderfly.jp 審査員には、ANAデジタルデザインラボ・チーフディレクターの津田佳明氏や一橋大学名誉教授の石倉洋子氏などがいる。その審査に勝ち残ったプロジェクトはANAから資金調達の支援など全面的なサポートが受けられる。それでは、特徴を4つ紹介しよう。
出典:wonderfly.jp特徴①:テーマはANAから提案してくれる!?
第一回目の『WonderFLY』では、テーマとして「旅の常識を覆すモノ」を掲げている。空の旅を提供する会社だけあって、テーマも会社の理念に沿ったものになっている。新事業を行いたいがなかなかテーマが思いつかない方にとってANAからテーマを提案してくれるのは取り組みやすい。
特徴②:プロトタイプは優勝金で製作可能に
今回の賞金は優秀賞90万円と特別賞10万円である。また、日本独自の伝統文化や技術を絡められているアイディアに特別賞が授与される。この優勝金額がアイディアをカタチにするプロトタイプの製作費となるのだ。そのプロトタイプがクラウドファウンディングページに掲載される。資金調達の際に、実物に近い商品を閲覧者に見せることができるのはイメージをただ乗せるよりも説得力があるだろう。
出典:wonderfly.jp特徴③:資金調達はANAのサポートでクリアできる!
クラウドファウンディングの何と言っても難しい点は、資金調達と広報である。手軽に始められる一方で、寄付金を支援してくれる人がみつかるまで様々な工夫を行う必要がある。しかし、このANAの『WonderFLY』はANAがもつ専用ホームページやその他サービスはもちろん広報の補助を請け負ってくれる。また、パートナー企業とのマッチングを行ってくれる点で資金調達に対するハードルは低くなるだろう。
特徴④:製品化や事業化がしやすい
資金調達ができれば、製品化や事業化が見込まれる。それも、ANAのネットワークやショップを通じて流通を実現できるのだ。他サイトのクラウドファンディングであれば、資金調達が行えて初めて一から事業を展開していく流れだ。コンテストをくぐりぬけ、資金調達が成功しさえすれば現実に自分たちのアイディアがカタチとなって利用される。
他サイトとの比較
他のクラウドファンディングサイトと比較してみると、ANAの独自性が際立つ。今回は国内最大級の規模を誇るCAMPFIRE(キャンプファイヤー)とモノづくりのプロジェクトが多く掲載されるMakuake(マクアケ)を例に挙げて比較する。
CAMPFIRE(キャンプファイヤー)
特徴①:プロジェクトページの承認が即日最短
このサイトでは誰でもクラウドファンディングページを作成することができる。作成し、そのページをサイトに掲載するまでに審査が入る。その審査期間が即日という他サイトよりも最短であり、すぐに資金を調達する必要がある場合、最適である。
特徴②:手数料が安い
サイト側の電話対応などのサービスが入って、手数料5%である。プロジェクトが成立しない場合、寄付者に寄付金を返す場合は手数料が発生しない。他サイトであると、20%などもあり資金に余裕がない場合は、とても嬉しい金額となる。
Makuake(マクアケ)
特徴①:プロジェクトの成功のため、キュレーターが補助
プロジェクトを始める前に、悩ましいのがクラウドファンディングページの作成や広報戦略の設計である。
初心者であると、まず何をしてよいかわからない。そのようなときに役立つのがこのサービスである。実績のあるキュレーターが効率よくまた効果的に資金を集めるため、企画段階でサポートしてくれる。キュレーターとの相談を含め、最短で3週間でプロジェクトをスタートすることができる。
特徴②:多くのメディアとつながりを持つ
Makuakeのサービスを運営するのは、Amebaブログをはじめとする株式会社サイバーエージェントのグループ会社である。プロモーションが強いことで知られており、Webメディアだけではなく、テレビや雑誌、新聞などから過去に何度も取り上げられいる。クラウドファンディングで難しいとされるプロジェクト広報の強い味方である。
今回は、ANAのクラウドファンディングサービス『WonderFLY』を紹介した。実際私自身も、他サイトでクラウドファンディングを行ったことがある。誰でも始めることができて敷居が低い分、資金調達や広報に苦戦した。
一方、ANAはテーマが決まっていて、コンテストを突破すれば手厚いサポートや実現化に向けたレールが敷かれている。ANAが提案する独自のクラウドファンディングの形式が、今後どのような効果をもたらすのか楽しみだ。
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