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5年連続で規模拡大! “フレーバーウォーター”が牽引するミネラルウォーター市場:各社の思惑を精査

Rikaco Miyazaki

2016/10/13(最終更新日:2016/10/13)


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 2011年~2015年の間、市場拡大し続けている「ミネラルウォーター」市場。日本人の多くは安全性が確立されているのにも関わらず水道水を飲まずに、「おいしい」「健康に良い」「安全」などの理由からわざわざ「水」を購入して飲んでいる。その背景にある飲料メーカーのブランド戦略を暴いていきたい。

 また、「水」という一見“無味”なものにも微妙な違いがある。その違いや成分についても詳しく紹介していきたい。

ミネラルウォーター市場の動向

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 2011年以降、5年連続で拡大するミネラルウォーター市場。市場が拡大し続けている要因は2つ考えられる。1つ目は、“健康志向の高まり”である。ミネラルウォーターは水道水と比較して、カルシウム・マグネシウム・カリウムなどのミネラル成分が高い。ナチュラルで健康的なイメージが消費者に支持されている。

 2つ目は、“フレーバーウォーターの登場”だ。実は、ノンフレーバーのミネラルウォーターの市場はほぼ横ばいの状態。市場に寄与しているのは“フレーバーウォーター”なのだ。ミネラルウォーター市場の上位を寡占する国産ブランドは、年に数回ペースでフレーバーウォーターを発売している。フレーバーウォーターの種類は年々豊富になり、定番となったみかん味やレモン味をはじめ、現在では「カルピス味」「ヨーグルト味」などが販売されている。

続々と新フレーバーが登場する“フレーバーウォーター”

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by TED_KANAKUBO
 ミネラルウォーター市場の拡大に一役買っているフレーバーウォーター。見た目は無色透明で、飲むとほのかにフルーツの味や香りがするのが特徴だ。男女ともに幅広い層で飲まれており、飲用する理由は「飲みやすい」「口がさっぱりする」など「飲みやすいおいしさ」が評価されている。

 フレーバーウォーターの中でも人気なのが「い・ろ・は・す もも」(日本コカ・コーラ㈱)。インテージSRIの調査によると、フルーツフレーバーウォーターの種類の中で販売数が第1位。日本で採れた天然水の中に、山梨県産のももエキスを加え、すっきりとした甘みに仕上げている。今後も、フレーバーウォーターの市場拡大が期待できることから、大手飲料メーカーが新フレーバーを出し続けることが予想される。

普及率を伸ばすウォーターサーバー

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 ミネラルウォーター市場は、ペットボトル販売の商品だけではない。家庭に毎月水が宅配されるウォーターサーバーもその1つだ。2008年から市場規模を伸ばし続けているウォーターサーバーの人気の理由は、「安心」「おいしさ」「利便性」。冷えた水だけでなく、お湯も出る利便性の高さや、水道水とは比べ物にならない美味しさ……家庭だけでなくオフィスや商業施設に採用されるのも頷ける便利さだ。ウォーターサーバーのランニングコストは、ひと月で電気代が約1,000円、水代が約2,000円(12ℓ/1人)。なお、筆者の家(3人暮らし)では毎月12ℓ×2で約3,499円(税込)。夏場は2本では足りないので1本買い足している。

 現在、ウォーターサーバー市場に参入している企業は国内外800社以上。その中でも「アクアクララ」「クリクラ」「コスモウォーター」がTOP3で、アクアクララとクリクラだけで市場の40%以上ものシェアを占めている。アメリカでは2家庭に1台はあると言われているウォーターサーバー。日本での普及率はまだ10%にも満たないので、今後も堅調に伸びていくことが予想できる。

国内大手飲料メーカーのミネラルウォーター比較

 堅調に伸び続けているミネラルウォーター市場の中で、日本の大手飲料メーカーはどのように他社との差別化を図っているのだろうか? 現在発売しているミネラルウォーターの特徴や栄養成分の違いに着目して、各社のブランド戦略を見ていきたい。

コカ・コーラ

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by SimonQ錫濛譙
 2014年国内の清涼飲料販売シェアトップのコカ・コーラ。同社のミネラルウォーターといえば、「い・ろ・は・す(以下いろはす)」である。いろはすの特徴は、水を採取している場所が1つではないところだ。北海道、富山、山梨、静岡、鳥取、愛媛、宮崎の全国7か所で採取している。販売エリアによって採取場所が異なり、水に含まれる成分の違いによって味も異なってくる。

 さらに、いろはすのブランド戦略として大きなものが2つある。1つ目は先述した「フレーバーウォーター」。元々、フレーバーウォーターというカテゴリーは日本に存在した。しかし、ミネラルウォーターとして確立したブランドから“味付きの水”を発売したのは初めてである。そこから話題沸騰し、現在ではコンビニ限定発売の「マンゴー味」を含めて7種類ものラインナップが揃っている。

 2つ目は、「環境にやさしいボトル」だ。いろはすと言えば、グシャグシャとボトルを絞れるイメージを持っている読者もいるだろう。絞れるボトルの秘密は、従来のペットボトル製品の樹脂使用量を約40%削減したことだ。また、植物由来の素材を使用することによって、ボトルを12gという驚異的な軽量化につなげることだけでなく、非再生資源である石油への依存を減らすことも可能になる。いろはすはエコユニークさで、他社との差別化を図っているのだ。

サントリー

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by Majiscup - 紙杯帶你看世界
 「ザ・プレミアムモルツ」や「伊右衛門」を製造販売するサントリー。同社のミネラルウォーターは、「天然水シリーズ」。天然水シリーズは、山梨県の白州市南アルプス、熊本県の阿蘇、鳥取県の大奥山の3か所が採水地となっていて、採水地ごとに商品名が異なる。その中でもCMでお馴染みなのが「南アルプスの天然水」である。

 南アルプスの天然水は、ウォーターサーバー市場にも参入している。参入することによって、サーバー利用者に「馴染みの水」として脳にインプットさせることが可能になる。外出先で水を飲みたくなった際、何種類か水が置いてあれば無意識に普段飲んでいる「南アルプスの天然水」を手に取る確率が上がるのだ。

 また、サントリー天然水は“公益社団法人 母子保健推進会議推奨”の赤子にやさしい天然水である。ミルクや飲み水に適した軟水で、口当たりの良い飲みやすさが味の特徴。カルシウムが9.7gと、やや高めの割合で入っている。ヨーグルトのフレーバーでSNSで話題になった「贅沢ヨーグリーナ」の他4種類のフレーバーウォーターを摂り揃ている。

アサヒ

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出典:www.asahiinryo.co.jp
 ビールでお馴染みのアサヒ。同社のミネラルウォーターは、「おいしい水」ブランド。同社は2012年に、製造拠点の複数化、供給能力の向上と安定化を図り、ミネラルウォーターのブランドを全国で統一。統一前は「アサヒ 六甲のおいしい水」ブランドを提供していた。

 おいしい水ブランドは、富士山、六甲、富士山のバナジウム天然水の3種類。富士山と六甲は、地下深層に染み込んだ天然水を外気に触れさせないように汲み上げ、“熱を使わない ろ過製法”で自然のままボトルに詰め込んでいる。バナジウム天然水は、玄武岩を多く含む地層から溶け出した天然ミネラル「バナジウム」を豊富に含んでいる。

 フレーバーウォーターは、アサヒの人気清涼飲料“カルピス”の乳酸菌が入った「おいしい水プラス カルピスの乳酸菌」が販売されている。

キリン

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出典:www.kirin.co.jp
 午後の紅茶シリーズが人気のキリン。同社のミネラルウォーターは「アルカリイオンの水」。採水地は静岡県御殿場市、岐阜県岐阜市。メインのボトル容量は2ℓ。アルカリイオン水市場の中でも、1ℓあたりの値段がとても安い。

 アルカリイオン水の特徴は、厳選した天然水をアルカリイオン化しているところだ。アルカリ性の水は、健康に良い影響を与えるメリットがある。胃酸過多・便秘など、胃腸に問題を抱えている人に有効。さらに、新陳代謝の向上による脂肪燃焼効果も期待できることから、スポーツマンを中心に人気を集めている。キリンのミネラルウォーターは「アルカリ性の水」という点で、他社と差別化しているのだ。

軟水と硬水の違い

 先に紹介した国内大手飲料メーカーのミネラルウォーターは、いずれも“軟水”と呼ばれる水である。ミネラルウォーターを頻繁に飲む読者なら知っているかもしれないが、水には「軟水」と「硬水」という分類がある。分類を決める基準は、水1ℓ中に含まれている「カルシウムイオン」と「マグネシウムイオン」の量を表す“硬度”だ。日本では、硬度が100㎎/ℓ未満は軟水、以上が硬水、と分類される。

 軟水と硬水は、水に含まれる成分が異なるため、味などの特徴も異なる。軟水と硬水の特徴については以下の通りだ。

軟水の特徴

  • 口当たりが柔らかく、さっぱりしている
  • 緑茶や紅茶を入れる時に、色や風味が出やすいい
  • うま味成分を引き出す(煮炊きの多い日本食に最適)
  • 石鹸や洗剤が泡立ちやすい

硬水の特徴

  • のどごしが硬いが、しっかりした飲みごたえがある
  • 便秘改善に効果がある
  • 肉の臭みを消す効果がある(洋風の煮込み料理に最適)
  • 動脈硬化の予防
 特徴からわかるように、軟水は日本人に適した水である。軟水の口当たりのまろやかさに慣れている日本人からすると、硬水は独特の味わいがする。しかし、便秘気味の読者には硬水をオススメしたい。硬水に多く含まれるマグネシウムが胃腸を刺激し、便秘を改善させる。その他にも代謝促進や、脂肪の吸収の抑制などのダイエット効果もある。しかし、飲みすぎると下痢などの体調不良になる恐れがあるので注意が必要だ。


 以上、ミネラルウォーター市場の成長と国内大手飲料メーカーのミネラルウォーターの特徴について紹介した。「無味無臭」で特徴がなさそうに見えるミネラルウォーター。

 しかし、「無」であるからこそ新たな付加価値をつけることができる。市場規模が拡大していく中で販売数を伸ばすために、ボトルにこだわる企業、好調なウォーターサーバー市場に参入する企業、ブランドを統一化する企業、その他の企業にはない特徴で勝負する企業……勝負の仕方は十人十色である。

 水の種類によって、味や成分、特徴が異なるミネラルウォーター。消費者の健康志向、ニーズによって左右されることが予想されるが、今後のミネラルウォーター市場の動向を見守るのが楽しみだ。

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