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“ロボットスマホ”や“CG女子高生”で返り咲きを図る:役員報酬ゼロを決めたシャープの今

Mayuko Ono

2016/10/09(最終更新日:2016/10/09)


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“ロボットスマホ”や“CG女子高生”で返り咲きを図る:役員報酬ゼロを決めたシャープの今 1番目の画像
出典:blog.sharp.co.jp
 液晶テレビで一世風靡したシャープ株式会社。2010年まで使用されていた「目の付け所がシャープでしょ。」というキャッチ―なスローガンと「世界の亀山モデル」は誰もが耳にしたことがあるだろう。

 そんなシャープだが、2011年頃から経営不振に陥ってからなかなか立て直すことができず、2016年8月、台湾の鴻海精密工業に買収された。そして同年9月、社長である戴正呉氏は、経営再建のために役員報酬をゼロにすると発表。シャープの再建に向けた取り組みを追ってみたいと思う。

世界に誇る家電メーカーから一転:外資の傘下になったシャープ

サムスン、LGの台頭で絶頂からの転落:大赤字から買収へ

 液晶テレビをいち早く発売したシャープは液晶事業である自身のブランド「世界の亀山モデル」に莫大な資金を投資した。しかし、リーマンショック以降、最新の液晶テレビの売れ行きは落ち、さらに中国や韓国のメーカーの台頭により価格競争に破れ、一気にシェアを落としていった。

 そして、みずほ銀行と三菱東京UFJ銀行から総額2,000億円の金融支援を受けるなどの金融政策や、人員削減を実施したが、経営状況の立て直しには至らなかった。

 最終的には、2016年8月に台湾の鴻海精密工業に買収され、鴻海は3,888億円の出資金を払って、シャープの議決権の約66%を握る親会社となった。日本の大手電機メーカーが外資の傘下に入るのは史上初の出来事であった。

「赤字なのに報酬を受け取るのはおかしい」:役員報酬ゼロの決断

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出典:www.chinatimes.com
 社長の戴正呉氏は赤字にも関わらず報酬を受け取るのはおかしいという発言をし、9月に役員報酬をゼロにすると決断した。

 業績こそ振るわないシャープだが、その立て直しのために懸命に働きかける社長の報酬をゼロにするという大きな決断は、戴正呉氏の業績立て直しに対する本気と、シャープに対する、そして、従業員や消費者に対しての誠意が伝わってくるように思える。

 シャープが鴻海に買収されてからは、10月下旬までに再建策をつくる言及しており、液晶事業の立て直しが予想される。また、シャープは鴻海からの資金のうち2,000億円を、有機ELディスプレイ開発にまわすとしている。
 
 業績改善の戦略としては、コストカットを重視し、国内では約2,000人、海外では約5,000人前後の人員削減をする可能性があると見られている。また、本社を大阪市から、堺市の工場に移したり、中国での生産の一部を鴻海グループに移すなどし、工場の統廃合も視野に入れているという。シャープは現在、全社を挙げて積極的に合理化を進めている状態だと見て取れる。

モバイル型ロボット電話に女子高生CGキャラ:挑戦し続ける新生シャープ

 鴻海のもとで返り咲きを狙うシャープだが、10月7日まで幕張メッセで開催されていたイベント「CEATEC JAPAN 2016」のシャープブースから話題の最新技術を見てみようと思う。

世界初モバイル型ロボット電話:「RoBoHoN」

 RoBoHoNはシャープから発売されたモバイル型ロボット電話である。従来のスマートフォンの機能に付け加え、歌ったり、踊ったり、会話をすることさえできる機能が搭載されている。

 また、スマートフォンとアプリを通して連動可能で、撮影した写真や動画をプロジェクターで映し出したり、電話やメールの通知をしてくれる。

 見た目も可愛らしく、全長19.5㎝でスーツのポケットに入るサイズで、さらに約2.0インチのディスプレーが搭載、カメラも約800万画素というスペックを持っている。

8Kで映し出される女子高生CGキャラ:「Saya」

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出典:www.telyuka.com
 シャープの持つ最先端の8K/HDR映像フォーマットで制作されたCGには、従来のカメラでは撮影できない幅広い輝度情報を持つことができるなど、CGならではの可能性を秘めているとされている。

 このCGで創造された女子高生「Saya」はCGアーティストTELYUKA(テルユカ)氏によるCGアート作品である。シャープ曰く「Saya」は、8Kが持つ様々な可能性を引き出すための挑戦でもあると言及している。


 日本のサブカルチャーといえばアニメが有名だが、CGアニメをシャープの最新技術である8Kの液晶で映し出し世界に日本の文化と技術をアピールできる可能性もシャープは秘めていると言えるだろう。

 また、これまで様々なメーカーからロボットが開発されてきたが、スマートフォンという私たちの身近なツールで商品化することは、ロボットをより手の届く存在に近づけたのではないだろうか。さらにRoBoHoNは2016年度のグッドデザイン賞を受賞している。技術だけに留まらず、スタイリッシュな外観までも極める独自の視点で、日本で生まれたメーカーとして、日本を誇る技術の保持者として躍進していくことに期待したい。

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