「オレオレ詐欺」「ワンクリック詐欺」「ネット詐欺」……名の知れた詐欺は、廃れることなく今でも横行している。平成24年以降、詐欺の被害額は増加の一途を辿っていたが平成27年では減少に転じている。しかしそれはデータ上の話であって、認知されているものだけに過ぎない。今回は、認知されることなく解決する詐欺や、今だからこそ気をつけたい詐欺の手口や対策について紹介する。
Case1.警察立ち会い詐欺
by tokyoform 1つ目に紹介するのは“警察立ち会い詐欺”。まずは事例から見ていこう。
コンビニに買い物に来たAさん。買い物を終えて、車で帰ろうとすると自転車と接触してしまう。Aさんは自転車に乗っていた男性に「大丈夫ですか?」と声を掛けてみると、男性は頑なに「大丈夫です。ケガもないので、気にしないでください」と言うのでAさんはそのまま車で帰った。
後日、Aさんの元に本物の警察から「あなたにひき逃げの容疑がかけられている」という連絡が来る。警察は「コンビニの防犯カメラにも証拠が残っている」と言っている。自転車に乗っていた男性とのやり取りを実証するものが何もないAさんは、結果的に50万円を被害者の男性に支払った。
Aさんの失敗は、自転車に乗っていた男性が「大丈夫だ」と言い張った際に、警察を呼ばなかったことだ。これは報告義務違反になってしまうので、例えどんなに些細な事故であっても警察を呼ぶことが重要である。
これは、自転車に乗っていた男性が仕掛けた詐欺である。しかし、証拠が残らないことから「示談」として解決して、詐欺として認知されないのだ。本物の警察をも巻き込んだこの悪質な詐欺は、免許取消にもつながってしまう。車を運転する読者には、ドライブレコーダーをつけることを推奨する。
Case2.当たり屋詐欺
by risaikeda 2つ目に紹介するのは“当たり屋詐欺”。こちらも事例を紹介しよう。
大学生のCさん。最近、大学で知り合ったD君に「ドライブに行こう」と誘われる。CさんとD君は2人で仲良くドライブに出かけるが、運転免許を持っているD君が旅先で飲酒してしまう。
D君の飲酒運転で帰路についている途中、人と接触事故を起こしてしまう。ぶつかった人は「飲酒運転じゃないか! 警察に行くぞ。大学も退学だぞ。同乗者も同罪だ」と激昂。被害者は、50万円支払えば誰にも言わないと“示談”を求める。その結果、CさんとD君は25万円ずつ被害者に支払った。
しかし、これは被害者とD君が共同して行った詐欺。Cさんが支払った25万円を、被害者とD君で山分けしていたのだ。
このような飲酒運転による交通事故の示談金目的の詐欺事件は、平成27年9月に奈良県で起きている。奈良県での事件も、大学生が関与していた。この当たり屋詐欺は、入学したての時期に多い。友情につけ入る悪質な詐欺への対策は、“飲酒運転”しない、させないことである。
Case3.キャッシュカード詐欺
by Gerald Lau 3つ目に紹介するのは昨年から被害が増加している“キャッシュカード詐欺”。先に紹介した2つの詐欺とは異なり、加害者になることはない。しかし、非常に巧妙な手口なので事例から説明していきたい。
一人暮らしをしているEさん。ある日、自宅にレターパックが届いた。中に入っていたのはキャッシュカードと案内状。案内状には以下のように書かれていた。
「IC対応の新型キャッシュカードをお送り致します。旧式のカードは○年×月××日よりご使用できなくなります。用紙に暗証番号を記入の上、旧キャッシュカードをご返送ください」
新型キャッシュカードには、Eさんが口座を持っている銀行名が刻印されていた。そのためEさんは、案内状の内容を信用して、指示通りに返信用の封筒にカードを入れて投函。
結果的にEさんは、投函した日に手持ちの現金がないことに気づき、ATMで“新しいキャッシュカード”を使用。機械がカードを受け付けないことから「ニセモノ」ということに気づいた。すぐに警察に通報し、Eさんは被害を免れた。Eさんは危うく全財産を失ってしまうところだったのだ。
聴取をした警察も、「ニセモノにしては精巧なカード」と思わず呟くほどの巧妙な“キャッシュカード詐欺”。対策は、この詐欺について知るということである。勘のいい人や、金融機関・警察関係で勤務している人ならば気づくことができるかもしれない。詐欺の知識のない人の元にレターパックが送られてきたら、恐らく騙されてしまうだろう。
Case4.オリンピック詐欺
by t-mizo 4つ目に紹介するのは、タイムリーな“オリンピック詐欺”。オリンピック詐欺はいくつかの事例があるが、その中でもチケットに関する詐欺について紹介したい。実在する旅行会社の名前を騙った狡猾な詐欺である。
岐阜県在住のFさんの元に、東京五輪開幕式の「特別シート先行限定予約」と書かれたハガキが届いた。ハガキの差出人は大手旅行会社“近畿日本ツーリスト”。
後日、Fさんの自宅に別会社の社員を名乗る男から電話がかかってくる。「ハガキは届いてませんか? チケットを購入していただけると、SS席なら45万円、SA席なら40万円で買い取ります」といった電話の内容だった。支払い方法を尋ねると、“宅配便”と回答され、妙だと感じたFさん。近所の近畿日本ツーリストの営業所を訪れると、職員はチケットの発売は2019年予定と言われる。オレオレ詐欺ならぬ、「買え買え詐欺」だったのだ。
その他にも「五輪関連企業への投資」や「メダル製作企業への協賛」など様々な手口がある。オリンピックによる土地や企業の価値が上がるのは実際あり得ることだが、“簡単にお金を儲けることができる話”には乗らないことが1番の対策方法である。
詐欺大国ニッポンで生き抜くための武器
出典:www.npa.go.jp イギリスのエコノミスト紙が発表した治安のいい国ランキングではTOP10に入る日本。しかし、その裏側では高齢者を狙う詐欺や、巧妙化した詐欺が蔓延っているのが現状である。
警察庁の公表しているデータでは、被害総額は平成26年と平成27年で比較すると約80億円減少している。しかし、認知件数は平成23年からじわじわと増加傾向に。オレオレ詐欺や振り込め詐欺といった“特殊詐欺”は、手口を変えて行われる。そのため、認知されずに騙される市民が増加し、被害者が増えた後にようやく「認知」されるのだ。
認知されてから詐欺を知る……ではなく、認知される前から詐欺について知ることが1番の詐欺対策である。詐欺大国で生き抜くためには、“情報”という武器が必要。自分だけでなく、家族とも情報を共有することが大切だ。
以上、日本の最新の詐欺事情について紹介した。「まさか自分がこんなことで騙されるはずがない」と感じた読者もいるかもしれない。しかし、詐欺は家族が巻き込まれることによって、自分にも火の粉が降りかかるものである。最近仕事が忙しくて、両親と連絡を取り合っていない読者は、両親の体調を気遣う連絡のついでに詐欺に関する情報を提供してほしい。
「必ずもうかる」「値上がり確実」「お金を送れ」「名義を貸してほしい」という話が出たら、詐欺のサイン。認知されていないだけで、蔓延しつつある詐欺に対応出来る武器を手に入れよう。
U-NOTEをフォローしておすすめ記事を購読しよう