今夏、またしてもサッカー選手の移籍金最高金額が更新された。9,200万ポンド、日本円にして120億5,200万円でユベントス(イタリア/セリエA)からポール・ポグバ選手がマンチェスター・ユナイテッド(イングランド/プレミアリーグ)に移籍したのである。
サッカー選手の移籍金額は年々、高騰の一途を辿っている。欧州主要リーグの放映権料の上昇などによってクラブが裕福になったことも原因に挙げられるが、最も大きな要因はサッカー選手に代わって交渉を担当する「代理人」の存在である。年間で500億円超の金を動かすと言われる人物も存在するという、この代理人とはいったい何者なのだろうか?
相次ぐ移籍金の高騰……ビッグディールに代理人の陰
1984年、当時23歳だったディエゴ・マラドーナ選手が、バルセロナ(スペイン/リーガエスパニョーラ)からナポリ(イタリア/セリエA)に移った時の移籍金は500万ポンド(当時のレートで約16億円)、1996年にロナウド選手がPSV(オランダ/エールディビジ)からバルセロナへ移籍した時の費用は1,320万ポンド(約22億円)。どちらも当時の世界記録である。
20年の月日が経った今夏、前述したように移籍金の最高額は何倍もの9,200万ポンドにまで膨れ上がっている。その背後には代理人の存在がある。選手の移籍金に応じて手数料が入るため、代理人たちは様々な手段を講じて移籍金の釣り上げに奔走するのだ。
年収100億超! 市場をコントロールする大物代理人たち
市場をかき回す大物代理人:ミノ・ライオラ
先ほど述べた通り、史上最高額で取り引きされたサッカー選手となった、ポール・ポグバ選手。彼の代理人がこのミノ・ライオラ氏である。イタリア系オランダ人である彼は、特にイタリアのプロサッカーリーグ、セリエAに大きなコネクションを持つことで知られている。
ライオラ氏のもう一つの大きな特徴は、歯に衣着せないその発言。クラブやその関係者を公然と批判し、抱える選手の価値を高め、移籍金の膨大な釣り上げを図っていく。まさしく“豪腕”代理人だと言えるだろう。
特に今夏の活躍は顕著で、ライオラ氏が今夏にマンチェスター・ユナイテッド(イングランド/プレミアリーグ)に送り込んだ選手の数は3人にも昇り、取引総額561億円、手数料として56億円を受け取った。批判も多いライオラ氏だが、選手にとっては何よりも心強い存在であることは間違いないだろう。
「世界一のビジネスマン」:ジョルジ・メンデス
世界最高のプレーヤーとしても名高いクリスティアーノ・ロナウド選手の代理人を務めることでも知られる、ジョルジ・メンデス氏。「ビッグクラブに移籍したいなら彼と契約しろ」とプロ選手の間で囁かれるほどの敏腕代理人である。
彼が20年間で動かした金額は2,000億、年収は110億とも言われており、サッカー選手トップのC・ロナウド選手の年収90億を超え、「サッカー界で最も稼ぐ男」として君臨している。「世界一のビジネスマン」とも評されるメンデス氏だが、その評される所以は実力だけでなく、関係者全員が絶賛する彼の人柄にもある。
選手と同じ目線に立つことを信条とし、望んだクラブへ必ず移籍させることで知られる人物。仕事術に関する著書も多く出しており、その影響力はサッカー界に留まらない。
親族を代理人にするケースも!:ホルヘ・メッシ
リオネル・メッシ選手のように、専門職の代理人と契約せず親族を代理人にするケースも少なくない。2016年7月に脱税容疑でメッシと供に21カ月の懲役(執行猶予がつき収監は回避)を受けたことからも、サッカー選手の金銭問題において代理人がいかに密接な関係にあるかが分かる。
日本代表選手の代理人は?
香川真司選手の代理人、トーマス・クロート氏
ドイツのプロサッカーリーグ、ブンデスリーガ・ドルトムントで活躍する香川選手にも、もちろん代理人は存在する。香川選手だけでなく、高原直泰選手を始めとした、岡崎慎二選手、内田篤人選手など日本人選手のドイツ移籍のほとんどに関わっている代理人である。
今夏の宇佐美選手のように、例年日本人選手のドイツへの移籍が取りざたされるようになったのは、クロート氏の影響が非常に大きいと言えるだろう。
複数の代理人を抱える本田圭祐選手
本田選手は、実兄である本田裕幸氏を筆頭に複数の代理人に移籍を依頼している。過去には、オランダリーグ時代からの代理人、ケース・プルーフスマ・ジュニア氏との契約を解消したこともあり、海外メディアでは「事実上のクビ」とも噂された。
高騰しすぎた移籍金に、代理人取り締まりの動きも
加熱し続ける代理人ビジネスの動きを受けて、英文化メディアスポーツ省は「多額の報酬を得るために、代理人が選手とクラブの間に意図的に摩擦を生じさせて契約金や移籍金を釣り上げ、不正操作をしている可能性がある」と巨額の報酬を得ている代理人を取り締まる方針を示している。
政府だけでなく、クラブ監督を始めとしたサッカー界からの反発の声も少なくない。リバプール(イングランド/プレミアリーグ)のユルゲン・クロップ監督は移籍金の高騰を「ひとりの選手の獲得のために1億ポンドを費やして、その選手がケガでもしたら、なんのためになるっていうんだ」と痛烈に批判している。
何十億という金額が一人の選手に費やされることが当然となったサッカーの移籍市場。しかし、選手が動くことによって行き来する金と放映権料がなければ、サッカーが現在の巨大なスケールを保ち続けることができないのもまた事実である。
金額と移籍先のクラブが注目されがちな移籍市場だが、裏で活躍する代理人の動きに注目してみるのも面白いかもしれない。
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