みなさんはLGBTという言葉をご存知だろうか。L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、T=トランスジェンダーの頭文字をとったセクシュアルマイノリティの総称だ。近年、急速に認知度を高め、権利獲得に大きく前進している。多様で自由な世界を求めるのならば、彼ら、彼女らの存在を知らないでは済まされない。
LGBT人口は左利きの人口と同じ
by Graham Ó Síodhacháin 日本でもLGBTの認知度が高まっているとはいえ、LGBTという言葉自体の認知度は50%以下とまだまだ低い。
読者の皆さんにはこの記事を通してLGBTとは何か、またLGBT当事者を取り巻く現状を理解していただければ幸いだ。
多様性を肯定する言葉「LGBT」
前述と重複するが、LGBTの定義とは、L=レズビアン、G=ゲイ、B=バイセクシュアル、 T=トランスジェンダーの略称を合わせた、性的マイノリティの限定的総称である。また、性の多様性の文化を強調する用語でもあり、より肯定的な概念だ。
出典:dentsu-ho.com 上に表記されている身体と心の性が一致し、異性愛者であるストレートと呼ばれる人以外がLGBTに該当する。他にも心の性が男女どちらにも規定できない「Xジェンダー」の人も存在しており、LGBTだけで性的少数派を表すことはできない。
LGBT人口は、左利きやAB型と同等
2015年の電通ダイバーシティラボ(DDL)調査によると、日本のLGBT人口は7.6%に上る。この数は左利きの人口やAB型の人口と同程度であり、日本で一番多い苗字である佐藤さんの人口よりも多い。そう考えると、LGBTの人々がどれだけ身近な存在かわかるだろう。
知っておかなければならない「アウティング」の重要性
出典:vccoordinator.wordpress.com LGBT当事者を理解する上で、私たちが知っておかなければならないことがある。それは「アウティング」だ。
アウティングとは本人の了解を得ずに、公にしていない性的指向を暴露することだ。アウティングにより大きな精神的ショックを受け、命を絶つほど追い込まれた例もある。
男子大学生が「ゲイだ」と暴露された末の自殺
自殺した一橋大学のロースクールに所属する男子学生(以降A君とする)は、同性愛者だった。A君は仲の良かったグループの同級生であるB君に恋愛感情を持っており、ゲイであること、付き合ってほしいことをカミングアウトした。これに対してB君は「付き合うことはできないが、友人としてこれからも関係を続けたい」と返答。
その後、A君は以前と変わらず振る舞い、単なる失恋話で終わるはずだった。だが、B君がグループのLINEで「お前がゲイであることを隠しておくのはムリだ。ごめん」と暴露したことから状況は一変する。
A君はB君と顔を合わせると、緊張、動悸、吐き気、パニック発作などの症状を繰り返し引き起こすようになってしまった。
A君は大学の相談室や教授に度々相談したが、2015年8月に大学の施設の6階から身を投げ、命を絶った。事件後、A君の遺族は同級生と大学を相手取って損害賠償を求めている。
言うか言わないかのジレンマ
アウティングによって、LGBT当事者が追い詰められることは想像に難しくない。だが、知られることだけでなく、知られないこともまた「生きづらい」と感じる原因になる。
例えば、自分が同性愛者だと誰も知らない空間では、異性愛者だと見なされるのがほとんどだ。そんな中、友人との世間話で同性愛者を差別するような冗談に触れても、一人で苦しみながらも自己解決するしかない。
言っても言わなくても「生きづらい」と感じるダブルバインドに苦しんでいるLGBT当事者は多い。
LGBT当事者に対する大学の「無理解」
アウティングによってどれだけLGBT当事者を追い込んでしまうか、注目を集めた事件であると同時に、大学のLGBTに対する理解のない対応も波紋を呼んだ。A君は大学に相談を繰り返したが、柔軟な措置は取られなかったのだ。
B君と距離を置くために、クラス替えや留年措置を打診するも認められなかった。また、カウンセラーは「性同一障害」を専門とするクリニックでの診療を提案するなどLGBTに対する無理解が目立つ。性同一障害は自分の性別に違和感を持つ人に使われる言葉で、同性愛とは違う概念だ。
LGBT後進国・日本が東京オリンピックで求められる多様性
出典:www.petersdream.com 2020年の東京オリンピックに向けて、LGBTへの配慮を進めることは一つの課題だ。日本は他の先進国に比べてまだLGBTに対しての理解が進んでいないと言える。
ヨーロッパではオランダやベルギー、アメリカでもいくつかの州が同性結婚を合法化しているのに対し、日本では社会の理解が得られていない。本項では日本のLGBTの現状と取り組みを見ていきたい。
35%の人が職場に同性愛者がいると「抵抗がある」
労働組合の中央組織・連合はLGBTに関する調査結果を今年の8月25日に発表した。
男女別に見ると、女性は23.2%、男性は46.8%と「抵抗がある」と男性は女性の2倍近く感じている。また、年齢別にみると、20代では28.4%なのに対して、50代では39.2%と上の世代ほどLGBTに抵抗を感じていることがわかった。
性にも多様で自由なオリンピックを東京で
近年のオリンンピックでは、開催都市のLGBT対応が注目される要素の一つになってきてきている。2012年に開催されたロンドンオリンピックでは、LGBTへの支援を積極的に打ち出した。開会式ではLGBT当事者のアーティストがパフォーマンスを行い、選手の宿泊施設にも配慮がされた。
こうした取り組みは、もともとLGBT支援に積極的だったロンドンの都市としての評価を上げることにつながった。多様で自由なオリンピック、都市を作っていくにはLGBTへの配慮が急務だ。
国渣色豊かな若者の街、渋谷が始めるLGBTへの配慮
そんな中、新たな取り組みを始めた地域もある。渋谷区では「パートナーシップ証明書」の交付を全国に先駆けて2015年から開始し、日本だけでなく海外からも注目されている。パートナーシップ証明書を取得すると、結婚に相当するパートナーの関係として、区内で最大限配慮される。
例えば、住宅ローンや生命保険などのサービスを提供する企業が認めているならば、同性のパートナーとしてサービスが受けられる。ライフネット生命や日本生命は、生命保険の受取人に指定できるサービスをすでに開始している。
他にも、法律上のカップルでないために、アパートの入居や病院の面会などを断られることが多かったが、パートナーシップ証明書によってそれらも認められるかもしれない。
LGBT当事者たちを配慮する努力は、都市としての魅力を高める上で重要な課題になってくる。すべての人が「生きやすく」感じる社会づくりを東京、そして日本は求められている。
今、世界的にLGBTへの理解が進み、彼らは受け入れ始めている。LGBTの人は13人に1人。自分には関係ない、と思っている人でも知人や友人、もしかすると家族にもいるかもしれない。
社会を変えるために必要なのは、人間として何をされたら傷つくのかと考える想像力だ。差別から寛容、そして受け入れる存在ではなくLGBTの存在が当然なんだと考えを変えていくことが、最も重要ではないだろうか。
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