プロ野球、Jリーグ、最近では錦織選手が活躍するテニスなど、いつの時代も多くの人々の娯楽であり続けているスポーツ。現在はスカパーやWOWOWなど、スポーツ中継を視聴するためだけに有料チャンネルを契約する人も少なくない。
そのような進化を続けるスポーツ中継の世界で、新たな旋風を巻き起こそうとしているサービス「DAZN(ダ・ゾーン)」をご存知だろうか。本記事では、最強のスポーツ配信サービスと呼び声高い“黒船”DAZNの魅力と、動画配信サービス事情に迫っていきたい。
新スポーツ配信サービス「DAZN」の魅力とは
出典:stadt-bremerhaven.de ネットを使った動画配信サービスといえば「Hulu(フールー)」や「Netflix(ネットフリックス)」がある。これらのサービスは映画やドラマのバラエティの豊富さでは定評があるが、スポーツに特化した動画配信サービスは日本にはまだ少ない。DAZNはそのような背景から日本に進出した、イギリスを拠点とするスポーツ専門の動画配信サービスだ。
メジャースポーツもマイナースポーツもこれ一つで補完
DAZNで視聴可能なスポーツは野球、F1、サッカーからダーツまでと多岐にわたっている。メジャースポーツもマイナースポーツも楽しめるのがDAZNの第一の魅力だ。現在はMLBやNFLをはじめとした海外スポーツが中心だが、来年からJリーグやプロ野球の中継の配信も予定されており、今後の動向に注目だ。
コンテンツからは信じられない価格設定
DAZNの第二の魅力は価格設定の低さだ。年間約6,000もの試合を視聴できるにもかかわらず、月額料金は1,750円。同じスポーツに特化した動画配信サービス「スポナビライブ」が3,000円、スカパーのチャンネルでスポーツに特化した「Jスポーツ」が2,469円(加えてスカパーの基本料金410円)に比べるとコストパフォーマンスに優れる。
スマホ、PC、TV……とあらゆるデバイスに対応
出典:stadt-bremerhaven.de 第三の魅力はネット配信の強みゆえに、多くのデバイスで視聴可能なことだ。スマートフォンはもちろん視聴可能。また、ソニーやパナソニックなどのテレビメーカーとも提携を結んでおり、PS4のようなゲーム機にも対応する予定だ。今までと同じように家のテレビでスポーツを楽しむこともでき、通勤中にスマホでハイライトを視聴することも可能だ。
日本での勝利を確信するDAZNと日本の展望
出典:www.giga.de 2017年から始動するJリーグ中継の配信に向けて、10年間のJリーグ放映権を2,100億円で獲得したDAZN。この巨大な額を回収できるのか懐疑的な視線が多い中、DAZNのCEO、ジェームズ・ラシュトン氏は日本市場での勝利に自信を見せる。
CEOが見据える日本のスポーツ事情
今年の8月10日にスイス、ドイツ、オーストリアの参加国で配信が開始されており、同23日から配信が始まった日本は4か国目である。DAZNが早い段階での日本での配信に踏み切ったのには理由がある。
ラシュトン氏があげた理由の一つは、日本のスポーツファンの性格だ。複数のスポーツに関心を持つ日本人のニーズが、多様な競技を配信するDAZNに合うと予想している。
確かに、複数のスポーツを視聴しようと思えば、複数の有料チャンネルと契約しなくてはならないケースも少なくない。複数のスポーツ中継を視聴したいユーザーにとっては、DAZNは理想的かもしれない。
また、日本政府が2025年までにスポーツ市場を15兆円(2012年の3倍)に成長させる目標を掲げている。日本でスポーツ中継の新しい形を確立する、という試みは、日本のスポーツ産業事情に合った姿勢だ。
DAZNの独壇場とはならない可能性も?
出典:npb-news.blog.jp 日本のスポーツ中継の動画配信サービスが遅れていることは事実だが、DAZNがユーザーに受け入れられ、市場を独占すると決まったわけではない。
当初、DAZNはNFL(ナショナルフットボールリーグ)の全試合の中継を予定するとしていた。しかし全体の3割程度の放送に変更されるなど、ユーザーの混乱を招いている。サービスが開始されて間もないゆえ、多少の調整も必要かもしれないが、今のところ運用が円滑だとは言えない。
そんな中、ソフトバンクが運営する「スポナビライブ」がDAZNの参入を受けて、ユーザー獲得に奮闘している。
ソフトバンクが運営する「スポナビライブ」
スポナビライブは、2016年3月からサービスを開始したスポーツ特化型の動画配信サイトだ。現在、配信しているスポーツは「プロ野球」「大相撲」「なでしこリーグ」「男子テニス」「MLB」「海外サッカー」「B.LEAGUE」。DAZNと比べると数で見劣りはするもの、日本で最も人気の高いプロスポーツ、プロ野球では10球団の全試合を配信しており、DAZNは現時点で2球団なのでアドバンテージがある。
また、プレミアリーグとリーガ・エスパニョーラを全試合配信するという、強力なサービスでユーザーの獲得も順調だ。コンテンツの質では現在のDAZNとは負けず劣らず、といったところだ。スポナビライブはソフトバンクが運営している、という利点も活用できる。月額料金は3,000円とDAZNに比べて割高だが、スマートフォンをソフトバンクと契約しているユーザーは月額500円という低価格で利用可能だ。
日本のスポーツの動画配信サービスは、まだ始まったばかりなので、これらに追随するサービスが出てくる可能性が高い。そのような中でDAZNが市場を独占するのは一筋縄でいない。
インターネットが様々なモノと交わる世界である現在、スポーツもその例外でない。インターネットでの動画配信という、新たなビジネスはこれまでのスポーツ中継の常識を変えつつある。しかし、スポーツがテクノロジーにどんな方向へ動かされようと、世界中のスポーツファンが望んでいるのはただ一つ。これまで以上にスポーツを楽しむ。その願望を実現することが、何よりも大事なことだろう。
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