金融(Financial)と技術(Technology)が合わさった新しい金融サービスを指す言葉、「フィンテック(Fintech)」。ビットコインやクラウドファウンディング、スマホでのカード決済などがフィンテックの例だ。日本でこの用語が初めて使われたのは2014年と、フィンテックはまだ過渡期にある。そんなフィンテックの分野で、より革新的なサービスが始動した。
ビッグデータとAIによる「異次元のレンディングサービス」
2016年9月15日、みずほ銀行とソフトバンクは、AI技術を活用した個人向け融資を手がける合併会社「FinTech JV」の設立を発表した。今までのフィンテックにはなかった、レンディングとITを融合させた「スコアレンディング」によってサービスは運営される。現状、国内でスコアレンディングに着手する金融機関はなく、日本初の試みとなる。
みずほとソフトバンクの相乗効果
スコアレンディングでは、顧客のデータをAIで分析し、融資限度額や金利を設定する。このサービスでまず必要とされるのは、膨大な情報量を持ったビッグデータ。2,400万人の個人顧客を持つみずほと、累計契約数が4,300万件に上るソフトバンクのビッグデータが最大限に活かされる。
また、メガバンクであるみずほと日本有数のIT企業であるソフトバンクの互いの強みも重要な要素だ。顧客審査、サービスの運営にはみずほが長年培ってきた金融のノウハウ。PepperなどのAI開発の分野で実績を残しているソフトバンクは、スコアレンディングに必須なAI技術を補完する。
すべてスマホでOKのレンディングサービス
FInTech JVのサービスのさらなる魅力として、審査やスコアの確認などをスマホでできることだ。専門のアプリを使うことで、審査時間は30分以内で終わるという。いつでもスマホで新たな情報を入力して、スコアアップすることができる。また、店舗を設けずアプリのみで運営するため、運営コストも低く抑えられる。
目指すのは、誰もがチャンスを得られる時代
個人融資とAI、という従来にはないビジネスモデルを提示したみずほとソフトバンク。異次元のサービスのもと、両社が見据えるのはどのような未来なのだろうか。
スコアレンディングで融資を受けられなかった人にも
従来の個人融資では、勤務先、年収、クレジットヒストリーなどでしか顧客を判断できなかった。判断材料が少ないがために、高い金利を提示されることも珍しくなかった。だが、スコアレンディングでは通信、金融、SNSなどの情報からも融資条件を判断する。より多くの情報を判断材料に取り入れることで、借用主の範囲が広がる。
また、AIに判断を任せることで、人よりも正確で迅速な審査が期待できる。スコアレンディングにより、従来の審査方法では融資の対象にならなかった人も借用できる可能性が上がるのだ。
東大の子は東大、といった学歴格差の循環や若者の貧困による少子化が問題視される現代の日本で、若い世代が留学、結婚、子育てをサポートできるサービスを目指す。
ソーファイですでに実績も
ソフトバンクは、2015年にオンライン融資仲介サービス「ソーファイ(Social Finance)」に10億ドルを投資している。ソーファイは、アメリカで最大級の学資ローンのリファイナンスを提供している。顧客の能力、学歴や職歴など独自の基準を設けているため、従来の銀行融資のサービスでは対象にならなかった能力のある若い世代も、低金利でローンが組めることが特徴だ。
2011年に設立された若い企業だが、これまでのローン貸付額は40億ドル以上と大規模な融資仲介サービスに成長している。また、2014年以降からは経営黒字に転じており、ビジネスモデルが成立していることも証明している。
みずほとソフトバンクが手がけるスコアレンディングによるサービスも、類似した顧客層をターゲットにしているため、ビジネスが破綻せずに成長する可能性がある。
今回発足したサービスは、単に利便性の向上が見込めるだけでなく、顧客拡大による格差の是正という新たな性格を持っている。環境のせいでチャンスが与えられなかった能力ある人々が、恩恵を与えられる可能性を秘めたサービスなのだ。みずほとソフトバンクは日本の金融業界だけでなく、社会をも変えるサービスを生み出すのかもしれない。
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