今、「格安SIM」「格安スマホ」などと呼ばれる「MVNO(仮想移動体通信事業者)」が、急速に伸びている。データ通信の相場が毎月900円前後と、通信料が安いのがその理由だ。背景には、携帯電話事業を管轄する総務省の後押しがあり、4月に始まった「実質0円禁止」のガイドラインを受け、その勢いはさらに加速している。
MVNOの安さの秘密は、大手通信会社よりコストを抑えているところにある。MVNOは大手キャリアからネットワークを借りているため、基地局などを建設する莫大な投資の必要がない。大手通信会社とは違い、全国津々浦々にショップを展開しておらず、CM展開も控えめ。こうした点が、料金の安さにつながっているのだ。
格安スマホブームを受け、大手家電量販店も大々的に取り扱うようになった。
さまざまな企業が積極的に参入している今のMVNO市場
MVNOは、元々通信を専門にしていなかったさまざまな企業が、比較的容易に参入できるのが魅力になっている。シェアを見ると、NTTコミュニケーションズやIIJなど、プロバイダーなどをやっている通信企業の存在感が高い。
しかし、元々の持つ流通販路やブランド力を生かし、伸びているMVNOも増えている。ここでは、今注目のMVNO3社を紹介していく。
独占販売の端末を用意し、差別化を図る楽天モバイル
楽天の運営する楽天モバイルも、その1社だ。同社は2014年にMVNOに本格的に参入。その知名度の高さや、楽天スーパーポイントと連携するお得さを生かし、シェアを急上昇させている。
現在はMVNOで第3位。スマホのラインナップに力を入れているのも大きな特徴で、同社が独占販売するスマホもある。9月には、その新モデルとしてファーウェイのデュアルカメラ搭載機「honor 8」を発表した。
楽天モバイルは端末にも力を入れる。高機能な「honor 8」だが、価格はキャンペーンで35,800円(税別)。
全国のイオンで販売・サポートを行うイオンモバイル
流通大手のイオンが展開するイオンモバイルも、注目を集めているMVNOの1社だ。イオンはもともと、さまざまなMVNOとタッグを組み、イオン内で端末と通信サービスのセット販売を行っている。そのノウハウを生かし、3月に直接MVNOとして事業をスタート。全国213店舗と取り扱いが多く、対面でサポートを受けられる分かりやすさを武器にしている。
店舗数の多さを武器に、ユーザーに安心を提供するイオンモバイル。
満を持してMVNO市場に参入したLINEモバイル
また、9月には新たにメッセージアプリ国内最大手のLINEが、LINEモバイルとしてMVNOに参入した。9月中は「ソフトローンチ」と位置づけており、契約者は2万に限定されるが、10月には本サービスを開始する予定。
楽天と同様、知名度の高さがLINEの強み。これに加えて、LINEモバイルにはLINEやTwitter、FacebookのSNS通信がカウントされない「カウントフリー」と呼ばれるサービスが導入されている。契約しているプランの通信量を使い切ったあとも、これらのサービスは速度が制限されないのが、ユーザーにとっての大きな魅力だ。
LINEモバイルでは、LINEの通信量がカウントされない。プランによってはTwitterやFacebookも対象になる。
楽天やイオン、LINEといったユーザーにとっておなじみの企業が参入することで、MVNO自体の知名度も上がっている。
一方で、MVNO事業者数はすでに200を超えて(総務省発表)、供給が過剰になっている側面もあり、今後は合従連衡が進むことになるかもしれない。現にMVNOの老舗と言われた日本通信がU-NEXT(U-mobile)に個人ユーザー向けの事業を譲渡するなど、すでに業界再編も起こりつつあるのが現状なのだ。
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