日本では好調なソニーのスマートフォンXperiaだが、グローバルで見ると、苦戦が続いている。販売台数も、年々減っているのが現状だ。そのソニーが独・ベルリンで開催された世界最大の家電見本市「IFA2016」で発表したのが、最上位モデルのXperia XZとXperia X Compact。この2機種からは、今のソニーの戦略が見えてきた。
ソニーの中核ビジネスとなる「Xperia」ブランド
ソニーの社長兼CEOである平井一夫氏によると、Xperiaについては「付加価値の取れるところでビジネスしようというのが、基本的な戦略」。あえて安いモデルに手を出さないというのが、ソニーの方針になっている。
安価なスマートフォンは、中国勢などの新興企業が優勢で、利益率も低い。いたずらにシェアを取りにいくと台数ばかりが増え、まったく儲からないということになる。一時期のXperiaは、まさにそうなりかけていたが、一方で赤字も拡大していた。平井体制の下で、こうした体制を一新したというわけだ。
とはいえ、高機能なスマートフォンにも当然ライバルは多い。先日最新機種が発表されたばかりのiPhoneはもちろん、サムスン電子も、グローバルではソニーにとっての強敵だ。また、中国企業のファーウェイなども、最近ではめきめきと力をつけ、高機能端末の開発に乗り出している。安い機種をやらなければ勝てる市場でもないのだ。
そのためには、差別化が必要になる。平井氏によると、Xperia XZやXperia X Comapctでは、「ソニーの撮影、撮像技術を徹底的に盛り込んでいく」方針が取られた。この2機種は、従来より色味を正確に再現する「RGBC-IRセンサー」を搭載。暗所での撮影は、レーザーオートフォーカスで高速化した。また、動画撮影は、世界で初の5軸手振れ補正に対応している。イメージセンサーを開発し、デジカメを商品として持つソニーならではの強化点と言えるだろう。
また、2月からは、Xperiaのブランドを再定義し、スマートフォン以外の分野にも拡大した。その第一弾となるが、耳につけ、音声でスマホをコントロールする「Xperia Ear」だ。スマホでは着実に利益を取りつつ、周辺分野には果敢にチャレンジしている。
耳につけ、スマホをボイスでコントロールする「Xperia Ear」。
こうした戦略が功を奏し、ソニーのスマホビジネスは「黒字化への道が見えてきた」(平井氏)。一時は撤退もウワサされたが、「モバイルビジネスに対するコミットメントを紹介するいい機会だった」(同氏)とIFAでは大々的にXperiaをプッシュ。ソニーの中核商品であることをアピールした。
プレミアムモデルに注力する方針は、他の分野にも共通している。テレビやオーディオなども、ハイエンドからミドルレンジまでの商品が中心で、極端な“安売り”はしないようになった。台数ベースで見ると以前より存在感は落ちてしまったかもしれないが、インパクトのある製品は増えつつある。“記録”ではなく、“記憶”に残るモノづくりに舵を切ったと言ってもいいのかもしれない。
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