残業が多く、労働生産性の低い国として認知されている国が、日本です。
残業を減らすための是正策として浮上したのが、「ノー残業デー」です。ただ、ノー残業デーは本当に労働者にとって嬉しいものなのでしょうか。
本記事では、ノー残業デーのメリットやデメリット、効果的な活用方法をご紹介します。
- そもそも「ノー残業デー」はいつから始まったの?目的は?
- ノー残業デーの経営者側にとっての4つのメリット・効果
- ノー残業デーの労働者側にとってのメリット・効果
そもそも「ノー残業デー」はいつから始まったの?目的は?
「ノー残業デー」とは、残業をせずに定時(所定労働時間)で退社する日のことです。元来の導入意義は、ワークライフバランス(仕事と生活の調和)を推進するものでした。
また、定時で仕事を終わらせるために、ビジネスパーソンが業務効率化を考える機会になれば……といった企業側の意図も含んでいます。
最近では経費削減につながる活動として導入する企業も増加しており、ノー残業デーを導入している企業は、約7割ほどあるといわれています。
ノー残業デーの経営者側にとっての4つのメリット・効果
「ノー残業デーって本当にいいものなのかな」と不満をいだいている人もいるのではないでしょうか。
ノー残業デーのメリットについて、経営者側と労働者側の2面からご紹介します。
まずは経営者側にとってのメリットをご紹介しましょう。時間外労働時間を減らすことによる経営者側のメリットは、以下の4点です。
メリット1.長時間労働による健康被害を受ける労働者を減らすことができる
経営者側にとってのノー残業デーの1つ目のメリットは、長時間労働による健康被害を受ける労働者を減らせることです。
定時であがることによって睡眠時間を充分に確保でき、体調を整えられるので、健康的に労働者が働けます。また、運動をする時間や趣味の時間に充てればリフレッシュもでき、週後半の仕事にも疲労を持ち越さずに挑むことが可能になります。
実際にノー残業デーを導入し、労働者が満足に休息を取れた結果、生産性が上がった企業もあります。
メリット2.割増賃金の削減
経営者側にとってのノー残業デーの2つ目のメリットは、割増賃金を削減できることです。
割増賃金は、経営者にとって大きな課題となっています。平成22年の労働基準法改正により、残業時間が1ヵ月60時間を超える場合は賃金を50%割増にすることが義務づけられました。
そのため、長時間労働分の人件費は企業にとっては大きな負担に。
ノー残業デーによって残業を減らすことで、人件費を減らせることは、経営者側から見ると大きなメリットでしょう。
メリット3.労働者の時間管理意識の向上
経営者側にとってのノー残業デーの3つ目のメリットは、労働者の時間管理意識の向上ができることです。
ノー残業デーがあることで、「定時」というタイムリミットの中で仕事を終わらせる、という考え方を労働者に習慣づけられる可能性があります。
付き合いで残業をする人や、定時で帰らずにグダグダと仕事をする人を矯正することが期待できるのです。
メリット4.企業イメージの向上
経営者側にとってのノー残業デーの4つ目のメリットは、企業イメージの向上ができることです。
ノー残業デーがある会社に好印象を持つ人も多いのではないでしょうか。企業イメージを上げることは、優秀な人材の獲得にも繋がります。
さらに、ノー残業デーを遵守することで労働者に働きやすい環境を提供できた場合、離職率の低下なども期待できるでしょう。
ノー残業デーの労働者側にとってのメリット・効果
続いて、労働者にとってのメリットについてご紹介します。
時間外労働時間が減ることによって得られる労働者側のメリットは、以下の3点です。
メリット1.効率的な仕事の仕方を考えられるようになる
労働者にとってのノー残業デーの1つ目のメリットは、効率的な仕事の仕方を考えられるようになることです。
「終わらなかったら残業すればいいや」と思っているとダラダラ仕事してしまいがちです。
しかしノー残業デーのときには、どうしても終わらせない仕事があった場合でも、残業なしで切り上げなければいけません。そのため、仕事を効率的に終わらせる必要があります。
仕事への時間意識を持ったり、効率的に仕事をする工夫ができるようになることは、ノー残業デーのメリットだといえるでしょう。
メリット2.趣味やスキルアップのための時間を確保できる
労働者にとってのノー残業デーの2つ目のメリットは、趣味やスキルアップのための時間を確保できることです。
ノー残業デーのおかげで、好きに使える時間が増えた人もいるのではないでしょうか。空いた時間で、自分のための時間を作れるのもノー残業デーの魅力です。
趣味やスキルアップのため、家族との時間など、大切にしたいことのために時間を使ってみてはいかがでしょうか。
メリット3.睡眠時間の確保によって、体調を整えることにつながる
労働者にとってのノー残業デーの3つ目のメリットは、睡眠時間の確保によって、体調を整えることにつながることです。
好きなことに使う時間が少ないために、睡眠時間を削っている人もいるのではないでしょうか。
睡眠時間を削ると、仕事の効率が下がったり、ミスをしてしまったりする可能性があります。集中力がなく、ミスをしてしまうとさらに残業をするはめになります。
ノー残業デーによって睡眠時間をたくさん取ると、集中力が上がり結果的にミスが少なくなるでしょう。
労働者にとって、ノー残業デーの実態は厳しいのが現実
「ノー残業デー」の推進によって享受できるメリットが多くあるように感じた人も、あまり魅力的に感じなかったという人もいるでしょう。
実際に「ノー残業デー」の制度を導入している企業の労働者たちからは、以下のような声が上がっています。
口コミを見ると、ノー残業デーの評判は上々とは言えません。ノー残業デーならぬ、「イエス残業デー!」のように、SNSでは不満の声が続出しています。
ノー残業デーに会社の飲み会を催す例は多く、「飲み会をやるくらいなら、仕事をしていたほうがマシ」という意見が目立ちました。中には、真っ暗なオフィスの中でサービス残業をしている人もいるようです。
こちらの引用文だけではなく、SNSで「ノー残業デー サービス残業デー」と検索すると悲痛な声が多数見受けられます。「ノー残業デー=サービス残業デー」「ノー残業デーだろうとなんだろうとサービス残業なんてのも普通にある」「ノー残業なんてサービス残業を強要されるだけの日」のような声が毎月投稿されているのが、現在の「ノー残業デー」の実態です。
さらに、ノー残業デーで定時通りに帰宅しても、終わらなかった仕事が別の曜日に回ってしまう、といった声も上がっています。残念ながら、制度が形骸化している、と非難されても致し方ない現状です。
ノー残業デーを形骸化させない!効果的に活用する3つの方法とは?
ノー残業デーは、経営者側に大きなメリットがあるにも関わらず、「労働者側にとってはあまりメリットがない」「サービス残業や会社の飲み会が入ってしまう……」と不満に思っている人もいるのではないでしょうか。
以下では、ノー残業デーを効果的に活用する方法をご紹介します。
1.ノー残業デーのメリットを再認識する
ノー残業デーが形骸化している現状を打破するためには、経営者と管理職が「ノー残業デー」のメリットを再認識することが必要です。
残業も会社の飲み会もない、自由な時間を労働者に与えることは1週間のパフォーマンスを上げることに寄与します。
まず、経営者側のメリットの1つである「労働者の健康の維持」は、ノー残業デーに飲み会の予定を入れてしまっては意味がなくなってしまいます。睡眠時間が削られ、胃や肝臓に悪い食事が強いられる飲み会は、決して体に良い影響を及ぼすものとはいえません。
ノー残業デーの本来の目的と、過ごし方について検討することがおすすめです。
2.ノー残業デーに残業・仕事を持ち帰らないルールを制定する
さらに、ノー残業デーにサービス残業をつけることは、「労働者のモチベーション」を低下させてしまう恐れがあります。
5日間ある通常の出勤日の中日である「水曜日」に、定時上がりで休息を摂れれば、残りの木・金曜日へのパワー補充になるのでしょう。
制度自体に問題があるわけではなく、経営者が「ノー残業デー」という制度を生かしきれていないのが問題点です。「ノー残業デー」が会社に利益をもたらすものだということを、経営者や管理職が理解できるように労働者は働きかける必要があります。
制度が形骸化したり、労働者に負担を押し付けることがないよう、ノー残業でには残業禁止・仕事を持ち帰ることを禁止するようにしましょう。
もちろん、残業なしで仕事が終わる程度の業務量にすることも必須です。
3.残業しないことを評価基準とする
企業によっては、残業が断れない状況にいる人もいるのではないでしょうか。
残業をすることが、会社のためになっていると思っている人もいるでしょう。しかし、残業は会社にとっても自分にとってもいいものではありません。
残業をせずに定時で仕事を終わらすことが評価されるものと価値観を変えるように動いていてはいかがでしょうか。
何のために働くのか、を今一度検討してみよう
- 割増賃金の削減や企業のイメージの向上などのメリットがある
- 趣味やスキルアップのための時間を確保できる
- 形骸化させないように当事者が経営者側に働きかける
本記事では、「ノー残業デー」の実態や効果的に活用する方法などをご紹介しました。制度だけでは、「企業がブラックなのか?ホワイトなのか?」ということは測りきれません。
自分の勤めている会社がブラックなのかどうかを不安視する前に、「何のために働いているのか」について再度自問してみましょう。
「ノー残業デー」のような制度にはこだわらず、人生をより豊かにするための働き方について、会社全体で考える風土こそが重要であるということを覚えておきましょう。
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